拾遺愚想 - 越境する妄想団 delirants sans frontiere -18ページ目
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皇代記

 神道大系版「皇代記付年代記」に目をとおす。随所に「誤りにつき、これを省く」「誤写につき、これを改む」などの記述がある。岩波版「風土記」と同じだ。何が本文なのか判らなくなる。原作者の考えがわからなくなる。まずは原文を掲げ、疑問の箇所に注釈をつけるのがすじだろう。
 ところで藤原定家は書写のさい、気ままに原文を書き換えたということになっている。注釈はむろんないので、原文探索は難航を極めるだろう。『松浦宮物語』は定家の偽作とされているが、原作があって気ままに書き加えたのかも知れない。冷泉家時雨亭文庫の櫃の底に手がかりが残っていると良いのだが。
 「皇代記」神亀の項に、「二年乙丑人丸薨」とあり、その横に「三十八」とある。後から書き込まれたもののようである。万葉集では「死」となっているはずだが、「古今集序文」では正三位だから「薨」にしたのだろうか。「三十八」が死亡時の年齢ならば、人麿ではない別人だろう。しかしなぜかここには注釈がない。「丸」を「麿」にも訂正していない。それはともかく、この頃まで人麿が生きていたという伝承があったのだろうか。
樋口 芳麻呂, 久保木 哲夫
新編日本古典文学全集 (40) 松浦宮物語・無名草子
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