セブンアイホールディングス鈴木会長「朝令暮改の思想」の経営哲学に学ぶ

dailys cafe magazine/228

37-つじつま合わせの「伝言ゲーム」を回避する

組織階層ごとに順に情報を上げていくなかで、悪い情報は上げたくない心理と悪い情報は聞きたくない心理が重なり合うと、最悪の伝言ゲームに陥り、情報伝言はほとんど機能しなくなります。
こうした悪しき伝言ゲームを排除し、迅速かつ正確に真実を把握するために最もよい方法は、できるだけダイレクトに情報が上がる仕組みをつくり、バットニュース・ファーストの意識を徹底させることです。


セブンイレブンが「店舗-OFC-ディストリクトマネジャーやその上のゾーンマネジャー-本部」というラインとは別に、加盟店のオーナーから直接、声を吸い上げる「オーナー相談部」を設けているのはそのためです。
人の手を経て上がると、ややもすると、悪い情報は伝わらず隠ぺいされてしまいいい情報だけしか残らなくなります。それを避けるため、本部の運営方法に対するオーナーの厳しい意見は直接、オーナー相談部が受け、トップにダイレクトに伝えられるのです。
火事が起きたとき、なぜ出火したが、責任はどこにあるのか等など、つじつま合わせのいい訳を探しているうちにすべてが焼失してしまいます。火の手が上がったら、すぐに消防署へ通報する。ものごとの考え方は企業においても同じです。


外食企業の組織も類似したところが多く、組織が大きくなければなるほど、現場の情報が本部に正しい情報として伝わらないことがあることだ。
特に外食企業の場合には、現場と本部を繋ぐスーパーバイザーの存在がディストリクトマネジャーに匹敵する役割であるが、スーパーバイザーに本部の権限移譲がどこまでされているか否かで正しい情報やよい情報も上部に伝わらないことが多いことがある。


企業の組織そのものが現場と本部の仕組みをスムーズに伝えるシステムが確立している場合には、一番現場の活性化につながるが、その逆の場合には、現場そのものが孤立してしまい現場と本部との間に溝ができてしまうことだ。
良し悪しに関わらず情報を共有することは、企業としての目標を達成させるための重要なポイントでもあり、常に情報は正しく現場から本部へストレートに伝言できる仕組みが理想的な組織体系であろう。
組織人として自分に与えられた業務や仕事を全うすれば、なんの問題も発生しないはずが、立場的な感情や意見で情報が歪曲したものになってしまってはいつまでたっても正しい情報は伝わらないことを理解しておくことだ。


本部が大きくなければなるほど、むしろ組織の仕組みは簡素化していかなければならない。複雑化すればするほど社会的ニーズや変化にも対応していけない硬直化した組織になってしまい、本部が進むべき方向性を見失うことがあることを忘れてはならない。
つまり生活者が求めるニーズやライフスタイルと外食本部の戦略や戦術がマッチしないという現状を引き起こすことを理解しておくことだ。