皆さま、こんにちは。エリクシルの下平薫です。
ご無沙汰のブログ登場です!
みっちりとウイスキーの話をしに参りました。ふふふ
どうぞお付き合い下さいませ。
今回ご紹介するのはこちら
シグナトリー SIGNATORYの
リトルミル LITTLEMILL1967.36年
ダングラス DUNGLASS1967 37年
の2本です。2本セットで販売数はたったの325セット!
期待が高まります、はい。
どちらも造られたのはスコットランドのリトルミル蒸留所。
創業は1772年でスコットランド最古の蒸留所といわれています。
いいですね~、早くも伝統の香りがします。
ウイスキー造りは社会の影響をモロに受けるので、
「閉鎖」「オーナーが変わる」「再開」、この1セットを何度も繰り返すのは茶飯事です。
リトルミル蒸留所も、やはり何度もオーナーが変わったわけですが、
その中に女性オーナーがいた事をご存知でしょうか?
彼女の名はジェーン・マクレガー。1825~39年の間、リトルミルのオーナーを務めた女性蒸留家です。
当時、女性がウイスキー造りの現場で活躍していたのは大っっ変珍しい事なんです。
すんごい事なんです!拍手!!
ちなみにスコットランド・アイラ島のラフロイグ蒸留所では1950~70年代にかけて
ベッシ―・ウィリアムソンという女性オーナーが手腕を振るっておりました。
「ラフロイグの中興の祖」と呼ばれたほど、その名声の確立に一役買ったお方なのです。
その100年以上も前にウイスキー造りをしていた女性がいたんですね。
素晴らしい。ロマンがある。お会いしたかったなあ。
さ、続いて設備のお話ですよ。はいはい~♪
リトルミル蒸留所にはポットスチル(単式蒸留器)と呼ばれる蒸留器が2基ございました。
その特徴はといえば、原料の風味を最大限に活かした原酒造りができること。
おもしろい事に麦の品種が変わるだけで、ウイスキーの味わいは別物になります。
夏休み明けのティーンエイジャーくらい変わります!
そんなガラスのハートのような、繊細な個性を存分に発揮させられるのが
ポットスチルというわけです。出来る子ですね。
ご存知の方も多いですが、ポットスチルの形は鏡餅のてっぺんにストローを刺した感じです。
このポットスチルを使い、蒸留を3回繰り返してやっと、リトルミルのウイスキー原酒は生まれます。
しかし、それも1930年代までのお話。
何があったかは存じませんが、30年代以降は2回蒸留に切り替えられましたとさ。
こうして生まれたウイスキー達は樽に詰められ、眠りにつくのでした。
(今回はウイスキー造りに重要な発酵は省きますね~。特筆すべき事がない笑)
さて、やっとこさ完成したリトルミルのウイスキーは、そのほとんどがブレンデットウイスキーと
なるべく里子に出されました。ブレンデットウイスキーは何種類ものウイスキーを混ぜ混ぜして、
その魅力を爆発させた贅沢なお酒です。華麗なる変身おめでとう!!
しかし、現状で満足しなかったリトルミル。違うテイストのウイスキーを造れば
ブレンドの幅も広がり、もっとブレンデットウイスキーを爆発させられると考えたのです。
そこで実験的に製造されたのが、
「ダングラス DUNGLASS」と「ダンバック DUMBUCK」
という2種類のウイスキーでした。
リトルミル3兄弟誕生の瞬間です!
さあ、これから爆発するぞ!と思ったのも束の間。
次男、三男の製造はあっ!という間に終わってしまいました…。
1960年代後半~1970年代前半という、10年にも満たない短い命でございました。
もとよりブレンド用という使命を背負った身。
覚悟はしていたでしょう…無念。
その後、三男「ダンバック DUMBUCK」は絶滅したと思われます。
一度も見たことがありません。生き別れです。…誰か隠し持っているんじゃないか?
次男「ダングラス DUNGLASS」は過去にほんっの数回ボトリングされた事が
あります。それでも幻です。
その幻が長男「リトルミル LITTEMILL」と次男「ダングラス DUNGLASS」のセット
販売という衝撃!(販売されたのはちょっと昔のことだよ)
しかもダングラスは「現存する最後の樽をボトリングした」そうで、
まさに絶滅危惧種です。レッドリストの上位に喰い込んでいます。
今のうちだぞ、今しかないぞ。
ちなみにこのリトルミル蒸留所、1994年に閉鎖されてしまい、その後、火事で焼失して
しまったので、今は跡形もありませぬ。追い打ちとはこういう事です。
…酷い話だよ。
それにしても60年代蒸留の樽がよく残っていましたね。
これぞ奇跡。もう会えないと言ってもいいでしょう。
皆さま、この貴重なチャンスをお見逃しなきよう。
次はありません。次はありませんよ。
大事な事は2回言う主義です笑
下平薫でした。
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