こんにちは、フロントエンドエンジニアの宗定洋平(@yoheiMune)です。業務では「読書のお時間です」というスマホでマンガが手軽に読める電子書籍サービスの開発や分析を行っています。
先日、社内でプレゼンテーションワークショップを開催しました。五藤さん(@ygoto3_)、佐藤さん(@ahomu)、谷さん(@hiloki)、原さん(@heralog)に講師として立っていただき、2時間 × 4日でみっちりとプレゼンテーション制作を実技中心に学ぶワークショップです。今日はその中から、デザイナーさんやエンジニアさんが魅力的なプレゼンテーションを作る方法についてご紹介したいと思います。
社内外の勉強会やセミナーやLT(ライトニング・トーク)に登壇したいけど、どうやってプレゼンテーションを作れば良いのか分からないというそこのあなた!この記事を読むことで、きっと良いヒントを見つけることができますよ!少し長いですが最後までお楽しみください。
プレゼンテーションはこんなに凄い
3つのステップに入る前に少しだけプレゼンテーションスキルについて考えてみましょう。プレゼンテーションとはどのようなスキルでしょうか。「自分の主張や新技術などの情報を伝えるスキル」という答えがすぐに思い浮かぶと思います。
しかしプレゼンテーションの力はそれだけではありません。それは「人を動かす力がある」ということです。社内外の講義やセミナーに参加して1度や2度は「すごく納得した。明日から学んだことを実践しよう」と思ったことがあるのではないでしょうか。
プレゼンテーションはそれがたったの5分間だったとしても、人の心を動かし、人の考えを変え、人の行動を変える力があります。
さあ、こんな魅力的なスキルを身につけずにはいられませんよね?それでは3つのステップについて紹介します。
プレゼンを上手く準備する3つのステップ
プレゼンテーションの準備は、次の3つのステップに分解することができます。
1. 話の構成を考える
2. 資料を作る
3. 極める
プレゼンテーションを作るのは難しいな(難しそうだな)と思っている方、もしかして最初からパワーポイントやキーノートを開いてウンウンと悩んでいませんか?実はそれらのツールを開いて作業するのは、プレゼンテーション準備の中でかなり後半です。
上記3ステップを順番にこなしていくことで、誰でも簡単に素晴らしいプレゼンテーションを作り上げることができます。それではそれぞれのステップを詳しくみていきましょう。
話の構成を考える
この章では1つ目のステップである「話の構成を考える」について考えたいと思います。このステップはプレゼンテーションを作る上で最も基礎的な部分であり、また最も重要なステップです。プレゼンテーション資料をいきなり作り始めるのではなく、まずは話の構成作りから始めます。
とは言うものの、何もない白紙の状態からどのように話の構成を作り上げれば良いのでしょうか。ここでは「5つの決めで話の構成を考える」手法を紹介します。次の5つの決めを作ることで、プレゼンテーションの構成を作ることができます。
1. 対象者を決める
どんな相手に話すのかを具体的にイメージします。例えばHTML5についてプレゼンを行う場合に「HTML5をあまり知らないけど、面白そうだからどんなものか知ってみたいと考えている人」といった具合に具体的に定義します。対象者を定義することで、残りの4つの決めを作る時にどんなレベル感(基礎を話すのか、尖ったネタを話すのかなど)を決めることができます。
2. コアメッセージを決める
次に「何を伝えたいのか」を定義します。例えばHTML5を扱う場合に、HTML5全般について話したいのか、何か特化して話したいのか、業務での利用例を話したいのか、など何を話したいのかを決めます。決めた結果「HTML5の今すぐに使える機能はこれだ!」といったメッセージを決めます。
3. ゴールを決める
次にゴールを定義します。ゴールとは「プレゼン後に聴衆にどう動いてほしいのか」を定義することです。例えば「自社サービスを使ってほしい」「自分のファンになってほしい」「紹介した内容を仕事に生かして、仕事の効率化を図ってほしい」といったゴールを定義します。その定義したゴールを聴衆が行ってくれるように、プレゼンテーションの構成を作成します。
4. シナリオと時間配分を決める
次にシナリオ制作です。上記で決めた内容をどのように伝え、どのように達成するのかについて具体的なシナリオを作成します。例えば「導入→紹介→行動の感化→クロージング」といった流れを定義します。そして例えば導入部分では「自己紹介→問題意識の共有→解決策の提示」といった具合に、それぞれの具体的な内容を詰めて行きます。少し分かりづらいと思いますので、本記事を書く時に作ったシナリオの一部をこちらに公開します。参考にしてみてください。
ここであれやこれやと定義することでプレゼンテーションの骨子を作ることができます。
シナリオを作ったら、各項目についてどれくらいの時間をかけるのかを決めます。それにより各項目のトークスクリプトの量や資料の量がなんとなく分かります。
5. トークスクリプト(台本)を決める
最後に具体的に話す内容を書きます。少し面倒だなと感じるかもしれませんが、プレゼンテーションに慣れていない人はぜひトークスクリプトを作成しましょう。実際に書き出して音読することで、日本語の不備やしゃべりづらさを発見することができます。こちらも少しイメージしづらいと思いますので、こちらに本記事をプレゼンする場合を想定したトークスクリプトの一部を掲載します。トークスクリプトの長さの目安は300文字/分が標準的な長さです。
以上の5つを決めることで、プレゼンテーションの構成を作ることができます。ここで1~5の順番に捕われる必要はありません。時にはトークスクリプトから作ってコアメッセージやゴールを決めるといった順番でも良いです。時と場合に合わせて自分のやりやすいところから決めていきます。
さていかがでしょうか。5つの決めを作ることで、全くの白紙の状態からプレゼンテーションの構成を作れる気がしませんか?ぜひ話の構成作りで迷ったら「5つの決めで話の構成を作る」を実践してみてください。
それでは次に、資料の制作に話を進めたいと思います。
資料を作る
この章では2つ目のステップである「プレゼンテーション資料の作り方」について考えてみたいと思います。スライドシェアやSpeakerDeckを見ると、様々なプレゼンテーションが公開されていることが分かります。それらすべてをカバーすることはできませんが、ここではまずどのような考えを元に資料を作れば良いのかについて触れたいと思います。
プレゼンテーション資料を作る上で、次の2点に気を付ける必要があります。
・1スライド = 1メッセージ
・話し手とスライドは役割が違う
プレゼンテーション資料では、1スライドにあまり多くのことを詰め込むべきではありません(もちろん好みもあります)。先ほどの話の構成で決めた「シナリオ」を元に、1スライド1メッセージを基準に、スライドの分割単位を決めていきます。
次に注意すべきは「話し手」と「スライド」はそれぞれ役割が違うということです。もしスライドで言いたいことすべてを説明してしまった場合、そのプレゼンテーションでは話し手は要らなくないですか?スライドを見れば事足りるプレゼンテーションは得てしてつまらないものです。スライドを用いて聴衆の注意やモチベーションをコントロールしつつ、自分の口から主張することで、魅力的なプレゼンテーションとなり、相手により響くプレゼンテーションになります。
ここまでで心構えは分かりましたが、具体的にプレゼンテーション資料をどのように作れば良いのでしょうか。ここではセミナー中で人気の高かったポストイットメソッドを紹介します。
ポストイットメソッドは講師の原さんが紹介された方法で、ポストイット1枚にスライド1枚を手書きしてプレゼンテーションの制作を行います。ここで重要なことは「手書きを用いることで発想を自由に表現できる」「ポストイットを用いることでスライドに情報を埋め込みまくることができない」という2つのメリットがあります。例えば以下のように「メッセージ+図やイメージ」といった簡潔な情報をポストイットに記入して、プレゼンテーション資料のベースを作成します。
これがまたなかなか面白いんですよ。気になった方はぜひ試してみてください。
最後にスライドデザインをどうするかですが、これは自分の引き出しの数を増やすことが大切です。スライドシェアやSpeakerDeckで他の人のスライドを見て学んだり、KeynoteのAzusaなどのデザインテンプレートを使うと良いと思います(@ahomuさん紹介ありがとうございます)。
さてここまでで話す内容とプレゼン資料を作ることができました。しかしプレゼンテーションを魅力的に行うにはこれだけでは不十分です。次の章では「極める」ことについて考えてみましょう。
極める
この章では3つ目のステップ「極める」について考えていきたいと思います。さてプレゼンテーションを魅力的に行うにはどうしたら良いのでしょうか。
それは「繰り返し練習をする」ことです。「なんだ練習か」と思った方がいらっしゃるかもしれませんが、プレゼンテーションの準備において驚くほど多くの人が準備をなおざりにしています。プレゼンテーションを行ったことがある方であれば、練習を行わずに本番に突入して(特に社内ではありがち)、話がタジタジになって失敗したという経験が、1度や2度はあるのではないでしょうか。
スポーツなどでは練習を行うことが上達の鍵であることは当たり前のことですが、プレゼンテーションにおいても同様です。練習の重要性を強く説明したいので1章を丸々使っています。練習をすることでプレゼンテーションの魅力を飛躍的に伸ばすことができ、また同時にライバルと差をつけることができます。ぜひ練習をしてみましょう。
それではどのように練習をすれば良いのでしょうか?それは簡単なことで「本番を意識して練習を行う」ことです。具体的には以下のようなことを行います。
・声に出して練習を行う
・時間を計って練習を行う
・最初から最後まで通しで練習を行う
・本番を意識した視線配りや立ち振る舞いを行う
・ビデオでプレゼンしている自分を撮影して振り返る
・他人からフィードバックをもらう
多くの人は(そして私もそうですが)、練習初期はたどたどしく話してしまったり時間を大きく超過してしまったりします。またトーク内容の不備や資料の不備を見つけたり、トークと資料がかみ合っていない部分を見つけたりすることができます。練習を繰り返すことで伝わるプレゼンテーションに仕上げることができます。
また練習時間を確保することも重要です。1~2日の練習では足りません。私の場合には本番の1~2週間前には資料制作を終えて、それ以降は練習に時間を割きます。練習をしていると「よしこれならいける」という感覚を掴む時が来るので、そこまでたどり着いてから本番に臨むようにしましょう。
最初にも触れましたが、プレゼンテーションには人を動かす力があります。その力を十二分に発揮するためにも練習を大切にしたいものです。あの驚異的なプレゼンスキルがあると言われているスティーブ・ジョブズでさえ、『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』によると、圧倒的な練習を積み重ねていたようです。
最後に
本記事では魅力的なプレゼンテーションを準備する3つのステップについて紹介しました。参考になる部分がありましたでしょうか。
この記事を読んだだけでは絵に描いた餅でしかないので、ぜひ実践して(何度も実践して)自分のスキルにして頂けたらと思います。ワークショップではここに書いたこと以外にも多くのことを学び、実施とフィードバックを何度も繰り返すことでプレゼンテーションスキル向上を行いました。
社内でのプレゼンテーションワークショップでは五藤さん(@ygoto3_)、佐藤さん(@ahomu)、谷さん(@hiloki)、原さん(@heralog)に講師を努めて頂きました。
この場を借りて感謝申し上げます。また織田さん(@AkiOrita21)には勉強会運営をサポート頂きまして本当に感謝しております。そして参加者の皆様のおかげで素晴らしいワークショップとすることができました。
最後になりますが、長文の記事をご覧頂きましてありがとうございました。私はYoheiM.NETやTwitterでも情報発信していますので、気になった方はチェックして頂けたら幸いです。
最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。皆様のプレゼンテーションスキルアップに少しでも貢献できれば幸いです。