初めまして。社長室でUI/UXディレクターをしている渡辺(@mw19830720)と申します。現在は主にUI/UX視点でのAmebaスマホののクオリティ管理を担当しています。


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普段ディレクターが本ブログで執筆することはあまりないと思いますので、今回はいつもと少し雰囲気を変えて、「サービス立ち上げ時におけるUI設計やディレクションの質を高めるポイント」というテーマで、あえて盲点になっているかもしれないと感じている点をまとめてみました。




まずは画面設計のフェーズにおいて2点ほど。


仕様書全体を都度見返す


画面仕様書の作成には数日~長くて数週間程度かかると思いますが、その間できるだけ毎日、その日までに作成した仕様書全体を見返す癖をつけた方が良いと思います。


基本的に時間をかけるに従って思考がブラッシュアップされていくので、過去策定した分の仕様に関して、その時の考えと整合性が取れていない部分が見つかったり、より良いUI設計のイメージが湧くことも多いです。(疲れていた時に悩んで考えた仕様などは、別の日に冷静に見てみると「なぜこんな仕様にしたんだ。。」と思うことも。笑)


ただし、回り回って元の案の方がシンプルで良かったかも?と思い直すケースもあるので、途中で大きく仕様を方向転換する場合は、必ず資料のバックアップを取っておくようにしましょう。(ちなみに、SubversionやDropboxにはバージョン管理機能がついており、上書き更新していても過去の状態に戻れるので便利です)


行動フローとセットでユーザー心理をイメージする


上述の画面仕様書を見直す際のポイントなのですが、ある程度設計が進んだら各画面を繋ぎ合わせて、ユーザーはどういう気持ちでこの画面にやってくるかを想像することがとても重要だと思います。画面単体ではなく、そこに至る流れを意識することがポイントです。それに沿う形でコンテンツやアクションの優先順位を決め、UIに反映させていきます。


各画面への到達経路は複数あり、それぞれでユーザー心理が異なるケースもありますが、その場合は最もメジャーな経路を想定し、それに合わせたUIにするのがベストだと思います。




以下からは、デザイナーがジョインするディレクションフェーズにおけるポイントです。


ベースが固まるまでは妥協しない


普通はまずトップ画面などでベースとなるトンマナやUIを模索していく流れになると思いますが、経験上ここで妥協すると良いことがありません。初期段階の検討不足により後々ベースデザインを変更することになれば、プロジェクトが進んでしまっているほど修正範囲が大きくなってしまいます。


しかし、個人的にそれ以上に強く訴えたいのは、メンバーの「心を晴らす」ことの重要性です。プロデューサー(ディレクター)やデザイナーがモヤモヤした気持ちを残したままプロジェクトを進めてしまった場合、モノ作りのベクトルがズレたままの状態が続くため、間違いなくどこかでその歪みが出てきます。また、曇った気持ちを抱えたメンバーにはプロジェクトへの前のめりな関与は期待できなくなります。


このような状況を防ぐために、特にサービスの軸を決める初期段階においては、メンバーが納得できるまで粘り強く試行錯誤や議論を続けるべきだと思います。皆が納得し、すっきりした心理状態でベース部分のコンセンサスが取れれば、その後は良い雰囲気で一気にプロジェクトが進んでいきます。ちなみに、仮に致命的なまでに意見が割れてしまった場合、先々のことを考えれば初期段階でメンバーチェンジをするというのも各者にとってポジティブな決断だと思っています。


イメージしている例を提示する


デザイナーとトンマナを決めていくフローでは、イメージしている色味や質感を細かく言語化して伝えるのはかなり困難です。基本的には、他サービスの例をたくさん持ち出してイメージを伝えたり、それを材料に議論していくことをおすすめします。


自分の場合は、色味はこのサイトのこのバーの感じ、質感はこのサイトのこのボタンの感じなど、参考にできそうな要素を色々なサービスから細かく切り出して伝えています。バランスを取るのは難しくなりますが、切り出す単位が細かくなるほど、最終的なアウトプットはオリジナルなものに近付いていく傾向があると思います。


リアルなコンテンツを入れて確認する


デザインを作ったり実機テストをする際には、できるだけ本番リリース後に想定されるリアルなコンテンツを入れて確認した方が良いです。よく「あああああ」など適当な文字列や、まず投稿されないような画像を当て込んでいるケースを目にしますが、これだと雰囲気を掴めずに適切な評価ができなくなってしまうことがあります。


面倒臭いかもしれませんが、この辺りをきちんと対応しておくことでデザインを確認したりテストをしている時のテンションが上がったりする効果もあるので、意外に大事なことだと思っています。


全ての画面をデザイナーがデザインする


例えば、真っ白な背景に文字だけを配置する画面などはデザインパーツを全く作成する必要がないので、まれにデザイナーを介さず直接コーディング依頼をしてしまうケースが見受けられます。


しかし、こういった画面も文字サイズやマージンを調整してきちんとデザインしないと、目に見えてUIのクオリティにバラつきが出てしまいます。完全に同じレイアウトでコンテンツを入れ替えるだけのようなケースを除いては、基本的に全画面デザイナーを通すことが望ましいです。ただし、完全に管理者任せにするだけではダメで、こういったことはデザイナーが自身の責任範囲と捉え、積極的に介入していく姿勢も必要だと思います。


俯瞰して「伝わるUI」になっているかを確認する


各画面の最終チェック時には、ただキレイなUIだからと言って満足するのではなく、画面全体を俯瞰し、然るべきコンテンツに目線が向かうようにメリハリをつけられているか、これで本当にサービスのコンセプトが伝わるかという視点でレビューをすることが大切だと思います。


一旦コンセプトが決まればディティールを詰める作業に入るのですが、それをまた最後に俯瞰して見る。この詰める→俯瞰→詰める→俯瞰…の繰り返しがUIのクオリティを向上させるループだと思っています。




以上、頭に浮かんだことを思いつくままに羅列したので、うまく整理されておらず、また抜け漏れも多いかもしれませんが、読んでいただいた皆さんに少しでも新たなインプットがあれば嬉しく思います。


※個人ブログでもWeb戦略/サービス設計/UI・UXなどに関する記事を展開しておりますので、もしよろしければご覧ください。


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