原油国のオイルマネーや新興国の外貨準備を原資とする「政府系
ファンド」の存在感が増している。一説によるとその総額は2.5兆ドル
にもなるといわれている。これは「ヘッジファンド」の総資産額である約
2兆ドルを上回っている。近年、世界経済に与える「ヘッジファンド」の
影響が問題視されているが、政府系ファンドの存在感は少なくともその
規模の面では「ヘッジファンド」を超えている。さらに、これら「政府系フ
ァンド」は今後10年で約5倍の規模にまで拡大すると言われている。ま
た、1万本近く存在するといわれる「ヘッジファンド」の個々の規模はせ
いぜい数百億ドルであるが、「政府系ファンド」の場合、数が少ない分、
一つ一つの規模は半端ではない。最大といわれるアラブ首長国連邦
(UAE)の政府系ファンドは1兆ドル規模であると言われているので、そ
の影響力は計り知れない。もしも、UAEがその気になれば、政府系フ
ァンドを使って日本の大手企業を根こそぎ買収することも可能となるの
である。国の産業がまるごと他国に乗っ取られてしまうというのだから
とんでもない話である。先のG7では、そういった、国の戦略的に使われ
るかも知れない政府系ファンドの動きを警戒し、規制を設けるという話も
出たが、逆に政府系ファンドの投資が経済を押し上げる原動力になって
いる側面もあり、難しい判断を迫れれている。いずれにせよ、今後「政府
系ファンド」の存在感がさらに大きくなっていくことだけは確かである。