化粧品の成分、気にする? 気にしない? | 鉄の処女 ~愛すべきコスメ達の宴~

化粧品の成分、気にする? 気にしない?

化粧品やヘアケア剤の成分をどの程度気にするかということは、

コスメにこだわる人にとって一種の尽きない議論の種であり、

特定の成分を徹底的に排除するという人から、

成分表など見たこともないという人まで、

いろいろなスタンスがあると思います。


私自身は、

基本的には使用感や効果を重視し、

自覚症状と根拠のある苦手な成分は参考程度に考慮するという、

非常にゆるいスタンスで化粧品やヘアケア剤を選んでいます。


これまでも幾つかの記事の中で、

私がそういう意見の持ち主であるということはちらっと書いたりはしましたが、

「成分にもっと目を向けるべき」というコメントを頂いて、

私なりに考えることがありましたので、記事として残したいと思います。


ただし、この記事は特定のメーカーを支持したり、あるいは批判したり、

私の意見を押しつけるものではありません。

そうしたことをご理解の上、ご興味があれば読んでいただければ嬉しいです。

でも、私がこういうことを書くと、大抵長いだけで全くおもしろくはありません。


今回、記事を書くきっかけとなったコメントはヘアケア剤に関するもの、

すなわちヘアケア剤に含まれるシリコンの悪影響を指摘するものでしたので、

この「シリコン」を例にとって考えてみることにしました。


ヘアケア剤に含まれるシリコン類

ヘアケア剤に含まれるシリコン類は「ジメチコン」と付くものがほとんどで、

成分表にも記載がされていますが、

ヘアケア剤の良否を問うとき、こうしたシリコン類が配合されているか否かが、

しばしば俎上に載せられます。


ノンシリコンを推奨する人々が根拠としている主な理由は、

■カラー剤やトリートメントの浸透を妨げる

■シリコンが頭皮に吸着し、抜け毛の原因になる

■シリコンが頭皮から吸収され、人体に悪影響を及ぼす

■シリコンは髪を補修するどころか余計に傷める

といったものが大勢を占めているようです。


まず、これらがすべて真実であると仮定すると、

そのような危険なものを何故メーカーは製造・販売し続けるのでしょうか。


メーカーの陰謀などといった荒唐無稽の話は脇に置くとして、

多くの市販品ヘアケア剤にシリコン類が使われる理由は簡単で、

髪のダメージ部分をコーティングすることで、手触りをよくしてくれるからです。

私は、それ以上でも以下でもないと思っています。


シリコンは本当に髪・頭皮に悪影響を及ぼすか

ノンシリコン推奨派の人々からはとかく悪影響が強調されるシリコンですが、

シリコンは本当に髪や頭皮に悪影響を与えるのでしょうか。

個人的には、ノンシリコン推奨派が言うほどの悪影響はないと考えています。


例えば、シリコンが頭皮に吸着し、抜け毛の原因になるという説。

これは要するに、髪に強固に固着する成分であるシリコンが頭皮に付くと、

毛穴をふさいでしまい、シャンプーしても取れないので、

毛穴が詰まって頭皮の健康を損ない、抜け毛が起こるという意見のようです。


一方、ジメチコンは疎水性であるキューティクルには吸着するが、

親水性である頭皮には吸着しないという説もあります。

まったく吸着しないというわけではありませんが、

それはシャンプーで落ちる程度の吸着力しかないそうです。

そもそも、毛髪と頭皮は違うのです。

毛髪というのは既に死んだ細胞でできていますが、

頭皮はほかの皮膚と同様に、ターンオーバーを繰り返しています。

髪を染めても地肌は染まらないように、

髪には吸着しても頭皮には吸着しない成分は、当然あるでしょう。


ただし、ダメージのある毛髪は「親水性」の状態にあるので、

疎水性であるジメチコンとは結びつきが弱い。

逆に言うと、シリコン系の補修成分は髪の健康なところにばかり付いてしまいます。

それを避けるためには、ダメージのあるところにだけ付ければいいわけです。

毛先などの傷んでいるところにはしっかり付けて、

頭皮に近い部分にはあまり付けないようにするというのは、

どんなトリートメントでも同じですし、誰もが気をつけていることだと思います。


ただし、シャンプーについては基本的に地肌を洗うものなので、

なるべくシリコンの入っていないものを選ぶのがいいとは私も思います。

シャンプーにシリコンを入れる意味は、

髪の補修というよりは、洗っている最中のきしみを軽減するためです。

塗れている状態の髪はダメージを受けやすいので、

あまりギシギシすれば摩擦で余計に傷んでしまいます。

それを避けるために、市販品ではシリコンが入れられていることが多いのです。


洗髪中のきしみはシリコンでなくても軽減できるのですが、

その分高価になるので、数百円程度で市販されているものでは採算が合わないので、

価格帯がある程度高めのラインから選ぶと、

トリートメントはシリコン系でも、シャンプーはノンシリコンというのはよくあります。

私が使ったことのあるものでいうと、ラ・カスタやコタなどはそうです。


頭皮についたシリコンが吸収されて人体に悪影響を及ぼすという説については、

個人的にはもはやオカルトと同じレベルだとしか思えないのですが、

調べてみても科学的根拠のありそうな発言は見つけられませんでした。

正直に言うと、ノンシリコンシャンプーを売って利益のある人以外が、

このことを述べている文章は見つかりませんでした。

(いや、もっと正直に言うと「根拠ゎなぃけどゃばぃって友ダチがゅってた」

 「羊水からシャンプーのニオイがするらしぃ」といった

 耳をふさぎたくなるようなどうしようもない情報発信は大量にひっかかった)


ただ、シリコン系トリートメントが髪を「補修する」というのは、

ダメージを受けて剥がれ落ちたキューティクルの代わりに、

髪全体をコーティングしているわけなので、

そのコーティング力が強ければ強いほどカラー剤やパーマ剤が入りにくくなり、

結果的にカラーがムラになったりパーマが入りにくくなるというのは

もしかしたら現実としてある問題なのかもしれません。


ただ、先にも述べたように、毛髪は既に死んでいる細胞なので、

肌に傷ができたのが自然治癒力で治っていくのとは違い、

ダメージを受けて傷んだ部分は、いくら栄養を与えても治ることはありません。

髪の毛は、傷んだら切るかコーティングするかしかないのです。


そうなると、ノンシリコンのヘアケア剤であっても、

使った後に傷んでバサバサになっていた部分がツルツルになるとすれば、

シリコンの代わりに髪をコーティングする何らかの成分が入っているはずです。

そうした成分は、カラーリングの妨げにはならないのでしょうか。

もしそうでないとしたら、

その「補修力」はシリコン系よりも弱いということを意味しています。

あるいは、シリコンでの補修が一時的なものであると批判するなら、

それはノンシリコンでも同じでしょう。


このように調べてみると、

シリコンに関して一部で「恐ろしい!」「悪影響!」「余計にダメージ!」

などとセンセーショナルに書き連ねられていることのほとんどが、

あまり根拠のない言い分であるようにも思えてきます。


加工された情報とバイアス

私がこうしたことをあまり記事に書かないのは、

コスメブログなのにこんなことをだらだらと書いても、

おもしろがって読んでくれる人はそういないであろうということが一つ。

そしてもう一つは、

すべての情報にはバイアスがかかっていると私が思っているからです。


生の情報、すなわち誰かに分析されたり整理されたりする前の、

欠落のない一連のデータをすべて手に入れない限り、

そこには様々な主観や意図が入り込んでいます。

すべての実験や理論は、

ある意図した結果を導くために揃えられたデータセットではないでしょうか。

それが、どんな著名な論文や書籍であったとしても。


例えば数年前、ある著名なベストセラーを筆頭に、

男と女の脳は根本的に違っていて、

その差異が行動の差異を生み出すという説が大流行しました。

もちろんその本はエンタメとしては大変におもしろく、

さまざまな根拠を示しながら読者を導いていく、

非常に良質な書籍であったと思います。


確かに、男女の脳の構造には一定程度の差異が認められます。

しかし、その構造の差異が進化に基づく生物学的なものなのか、

それとも社会化の過程による変化なのかは、誰にも分からないのです。

もし前者であれば、男女の行動の差異は決定的で、不変のものでしょう。

しかし後者であれば、訓練によって男女の差異は埋められるということです。


私たちはみんな、生まれた瞬間から「男」もしくは「女」として社会的に認知され、

それに基づいた行動規範に則って行動することを強いられます。

簡単に言えば、男は男らしく、女は女らしく生きることを求められるのです。

それを社会学的にはジェンダーと呼ぶわけですが、

そうした社会的なダブルスタンダードの存在を超越して、

人間の行動を規定するものが脳の差異だという説は、

ある程度の納得性をもって人々に訴えかけるでしょう。


しかし、それが真実かどうかは誰にも分からないのです。

なぜなら、生まれたての赤ん坊の脳を見て、

同じ人が女性として認知されて育てられた結果と、

男性として認知されて育てられた結果を見比べて、

脳の発達に差異が出るかどうか比べることはできないからです。


脳科学が脳について解明していることは、まだごくわずかです。

そこには大きな可能性もあるし、それと同じだけ、未知の領域が存在します。

それだけ不確実性のある情報の中から、

「男女の脳の構造差が行動を規範する」という結論に導くための情報を取捨選択し、

「ほらね」と言ってみせれば人々は「なるほど」と納得するのです。


とはいえ、私はこの本の著者を批判するつもりは毛頭ないし、

この本自体は大変に興味深い書籍だということは言うまでもありません。

それでも、そこに一定のバイアスがかかっているということは否定できない。


いわんや、ものを売ろうとする人の言うことにおいてをや、ということです。


「検索」行動と宣伝文句による誘導性の連関

「シリコンは髪に深刻なダメージをもたらす。抜け毛の危険性も」


などという文言は、大変にセンセーショナルです。

こうした文章に出会ったとき、

現代社会において多くの人の取る行動は、「検索」でしょう。

恐らく大部分の人が、「ヘアケア シリコン」といった単語に、

「危険性」「悪影響」「健康被害」といった言葉を組み合わせて

Googleなどを使って検索するのではないでしょうか。


そこには、ヘアケア剤に含まれるシリコンの危険性をとうとうと述べた文章が

それこそ一日では読み切れないほどヒットするはずです。

読んでいるうちに、

「ああ、こんな危険なものを何も知らずに使ってきてしまった」

「シリコンって怖いな。ノンシリコンのトリートメントを買わなくちゃ」

そんな気持ちになってくるでしょう。


さらに読み進めていくと、

「こんなに危険のあるヘアケア剤を大手メーカーが売り続けるのは、

 シリコンは安価で製造が容易だから」

「メーカーは無知な消費者を騙し、トリートメントを買い続けさせようとしている」

「シリコンで頭皮の健康を害させ、次は育毛剤を売りつける」

「成分表示にシリコンと書かずに○○メチコンなどとわかりにくい名称を使うのは、

 シリコンが入っているということを隠蔽するため」

といった陰謀説まで登場します。


名の通った大手メーカーが恐ろしくなってきましたか。

もうドラッグストアで安価なシャンプーは買えない気分になってきましたね。

使えば使うほどハゲるような気すらしてきました。


でも、立ち止まって考えて欲しいのです。

十数年、あるいは数十年シリコン入りのシャンプーを使ってきたあなたの頭皮は、

真っ赤にただれたり毎日大量のフケが出たりしていますか。

あなたの髪が傷んでいるのは、毎日のシャンプーのせいだけですか。


個人的な経験から言うと、

せっけんでシャンプーする生活を数十年続けていた祖父はハゲていたが、

数十年、パーマとシリコン系シャンプーの使用を継続している父はフサフサ。


深呼吸して、きちんと読んでみてほしいのです。

その記事を書いたのは、誰ですか。


上で紹介したような「シリコン 悪影響」といったキーワードで検索すれば、

そのことについて書きたい人が書いた記事や文章が出てくるのは当たり前です。

私たちはそのキーワードを選び取った瞬間から、

もう誰かによって加工された情報しか目に入らなくなっているのです。


それは、致し方ないことでしょう。

化粧品に使われるシリコンの組成や成分についての査読付き論文を読む時間も、

それをきちんと理解するだけの基礎知識も一般人にはありませんし、

もちろんそうした論文をただで手に入れることはできないでしょう。

さらに人間の毛髪に関する知識を仕入れ、

それとシリコンを組み合わせることで何が起こるか研究しようとすれば、

膨大な時間と資金が必要です。


だから私たちは、誰かの手によって編集された情報にアクセスする。

でも、そこには必ずバイアスがかかっていることを忘れてはならないのです。


シリコン剤配合に関する「大手メーカー陰謀説」

シリコンを配合したシャンプーの危険性を蕩々と述べている記事の多くは、

ノンシリコンのヘアケア剤を売っている店や美容室です。

金銭が絡まずとも、そうした言葉に影響されている人は、

聞きかじりの情報を論拠としてその危険性を説くでしょう。

ある商品を売るとき、「これがこんなに良い」ということをただ述べるよりも、

比較材料を出して、

「○○はこんなに悪い。そして恐ろしい。それを使っていないうちの××は安全!」

という論調は人々の興味を大いに引くし、昔から常套手段として使われてきました。


政治家だってそうです。

街頭演説を立ち止まって聞いてみれば、

対抗馬の悪口8割、「よろしくお願いします」の連呼1.5割、

自分のマニフェストが残りちょろっとなんていうのは、ざらにあります。


でも、私はいつも思うのです。

「あんたが戦っている相手が悪いヤツなのは分かったよ。

 でも、それがあんたが良いってことに、どうやったらつながるっていうの?」


もちろん、シリコンの安全性について探そうと思えば、

そうした論調の記事や文章を見つけることができます。

だけどそれも、同じように加工された情報であり、

「シリコンが安全だと言いたい人が、安全だということを示すために編集した文章」

であることに違いはありません。


だからこそ、言いたいのです。

大手メーカーがシリコンは髪や頭皮に悪いと知りながら、

利益のために手触りがどうのとか、

髪を補修するといった言葉を使って巧みに消費者を欺いていると言うならば、

なぜノンシリコンを推奨する店やメーカーの言うことは信じられるのか。

ベースは同じです。どちらも私企業なのですから、営利が目的です。


「世の中には、利益よりも人のためになることを追求する人もいる」


それは、そうでしょう。

だけどそれが真実なら、そういう人は大手メーカーにもいるでしょう。

私はどちらかというと性悪説を信じるタイプの底意地の悪い人間ですが、

それでも、「悪(大手企業)に立ち向かう最後の良心(名もない零細企業)」

という図式をすべてに当てはめようとする

ハリウッド映画的なゴシップには賛同できません。

良い大手企業もあれば、悪い零細企業もあるし、その逆もまた真なのです。


商品開発のコストと商品価格

昔、知人に紹介されてとあるエステへ行ったとき、

そこで売っている基礎化粧品と美顔器を買うように勧められ、

こんなことを言われました。


女子<資生堂やロレアルみたいな大きなメーカーの化粧品って、

その値段のほとんどが、宣伝費用なんですよ。

有名なモデルさんとか芸能人とか、使ってますよね。

でも、うちのはそういう広告は一切してないんです。

だから、値段のほとんどが成分にかけてるコストなんですよ。

だから、デパートで売ってる製品よりよっぽど効果が高いんです。


もっともらしい言い方だとは思いますが、

大手の化粧品メーカーは、大きな研究所と優秀な研究者を抱え、

日夜たゆまぬ商品開発の努力を続けています。

化粧品の発展をになってきたのは、そうした企業努力なのです。


もちろん、化粧品のコストに宣伝費用が含まれることは百も承知ですが、

そもそも売っている規模が違います。

化粧品のコストには材料費だけでなく、

研究費はもちろん、販売員や事務員の給与も含まれるでしょう。

そうでなければ、企業は成り立たないからです。


でも、先に述べたように、ヘアケア剤一つとっても、

その成分や人体へ与える効果や影響、あるいは副作用を研究するには、

膨大な時間と費用がかかるのです。

それをしているのが、大きな研究所を持つ大手メーカーです。

最近ではフィルムという既存のコア技術を利用して

化粧品業界へ富士フイルムが参入して話題になりましたが、

そうした企業の投資による技術革新で成り立っているのが、

化粧品業界なのではないでしょうか。


例えば、化粧品業界では最大手と言っても良いロレアルですが、

その研究所が何人の研究者を抱え、

優秀な研究者を育成するために年間どれだけのコストをかけているか、

皆さんご存じでしょうか。

あるいは、同社がCSR活動を通じてどれだけ社会に貢献しているか、

ご存じでしょうか。

興味のある方は調べていただいたらいいと思いますが、

そうしたことを鑑みても、

私は「大手メーカーの陰謀説」は、噴飯ものの戯れ言だと言わざるを得ません。


企業利益の追求と消費者利益は相反するか

「お金をかければ髪と頭皮に良い製品がいくらでも作れるのに、

 それでは売れないから大手メーカーは粗悪品を売り続ける」


前半部分が真実かどうか、私には分かりません。

ただ、売れないものは作れないというのは、ある意味で企業の宿命です。

作ったからには売らなくてはいけない。

その中で、製品の取捨選択が起こるのは当然のことです。


多くの大手メーカーは、ドラッグストアなどで安価で売るための製品ラインと、

デパートなどで販売する高価な製品ライン、

そしてサロンなどで専売する特殊かつ高価な製品ラインを併せ持っています。

それぞれターゲット層が違うので、基本的にパイの食い合いにはならないのですが、

ある製品を売り出したことで、別の製品が死に筋となるのは避けなければなりません。


シリコンは非常に安定した物質なので、既存の技術で大量生産が可能です。

ですから、安価なシャンプーにはシリコンが含まれていることがほとんどです。

髪の内部に栄養を与えたり、髪の状態そのものを改善することはできなくとも、

表面的な手触りの良さやツヤが与えられるものが安価に手に入ればいいというのは、

消費者として自然な要求の一つです。


それを無知と切り捨てるのは簡単ですが、

マーケットの大部分はそうした価格重視の消費者に支えられていて、

そのパイを捨ててしまうことは、企業にとっては難しい選択でしょう。

また、「安価でそこそこ良い物を」という要求に応えることも、

消費者利益の観点から言えば決して間違った行動とは言えないし、

言うに事欠いてそれを「無知な消費者を欺く」などというのは間違っていると思います。


一方、天然の成分を安定的に供給・配合するには多くのコストがかかります。

場合によっては、新しい技術の開発も求められるかもしれません。

その点で、ノンシリコンシャンプーがおのずと高価になるというのは納得性があります。


「では、安価なラインにはシリコン入りシャンプーを、

 高級なラインにはノンシリコンシャンプーを作れば良いではないか」

と言う人もいるかもしれませんが、それもオールマイティの切り札ではないでしょう。


現状、ノンシリコンのヘアケア剤の市場を見てみると、

その大部分を「シリコンは髪に悪い」と信じている人が支えています。

ノンシリコンを売りにする店やメーカーの多くがシリコンの悪影響を説いていますし、

そうした市場に訴えるためには、

シリコンと比較しての天然成分の良さを主張する必要があります。

結果、世間的には「シリコンVSノンシリコン」という対立構造が

既にできあがってしまっているのです。


その中で、「うちの高級ラインのシャンプーはノンシリコンで安全!」と声高に言えば、

それこそ「安いからといって、安全でないものを作っているのか」と、

自社の別製品にケチが付くことは避けられません。

ですから、安価なラインから高級ラインまで取りそろえているメーカーが、

高級ラインでも自然派には手を出さず、

シリコン入りで髪に良いものを開発しているというのは当然のことではないでしょうか。


ただし、それは単なるメーカーの選択です。

低価格を支持する大規模市場を捨てて高価なノンシリコンを小規模に売るか、

大規模市場を重視して小規模・高価の市場を無視するか、

あるいは販売戦略によってはそのどちらにも手を出しているところもありますが、

それは製品の棲み分けという問題でしかないだろうと私は思います。


選択は、すべての人に与えられた平等な権利である

長々と書きましたが、私はシリコンを推奨しているわけでも、

ノンシリコンを批判しているわけでもないのです。

個人的には、シリコン配合もノンシリコンも使用している成分が違うだけで、

たくさんある選択肢の一つに過ぎないと考えています。


要は、リキッドファンデーションを買うか、

パウダリーファンデーションを買うかくらいの違いにしか思わないのです。

すなわち、どちらにも利点と欠点があり、消費者はそれをきちんと認識した上で、

どちらがより自分にとって優先順位が高いかを決める必要があるのです。


例えばシリコン系シャンプーの利点は指通りの良さや価格、

弱点はカラーリングやパーマに影響があるかもしれないこと。

ノンシリコン系シャンプーの利点はカラーリングやパーマへの影響が少ないこと、

欠点は高価であることと、ダメージの補修力が弱いことでしょうか。


私がヘアケア製品に求めることは、

ダメージを補修して手触りとツヤをよくすることが第一目的です。

だから、シリコン系のトリートメントが第一選択として上がってくることが多い。

ただ、パーマやカラーリングも楽しみたいので、

もしシリコンがそれを妨げる可能性があるとすれば、

せめてシャンプーはシリコンが配合されていないもので、

トリートメントは手触りやツヤ感が損なわれないことを重視して、

ノンシリコンという要素も考慮には入れるというスタンスになります。


もちろん、求めることが変われば違うものを選択するでしょうし、

例えば敏感肌の方で「肌が荒れないこと」が優先順位1番の目的で、

ジメチコン類にアレルギーがあるといった理由で、

ノンシリコンであることが第一選択になる人がいても、全くおかしいとは思いません。


よく言われる「安全性」について、私は答えを持ち合わせていません。

ただ一つ言えるのは、

合成・科学的な成分は危険である可能性が高く、

自然・天然の成分は安全だという神話は信用するに値しないということです。


自然由来のものでも人体に悪影響を与えるものはたくさんあるし、

口に入れられるものだから安全だなどということはあり得ません。

例えばしょうゆだって一升瓶を一気飲みすれば毒になるでしょうし、

ビタミンCが肌に良いからと言ってレモンを顔に貼り付ければかぶれる人もいるでしょう。

あるいは、人工的に作られているものだからこそ、

成分や濃度が安定していて安全性が高いという見方もあるでしょう。


ヘアケア剤に関する危険性を「科学的に」分析したというデータも、

よくよく見れば信用できないようなものがあふれかえっています。

シャンプーではありえないほど高濃度で実験していたり、

頭皮のターンオーバーを無視して「数年間も蓄積」などと示したり、

きちんと数字を見ればおかしなところがたくさんあります。

「科学」や先述の「脳」という言葉に、人は弱い。

あるいはジャーゴンやグラフも、

「よく分からないけど、正しいのだろう」と思わせる効果的な見せ方の一つです。

でも、それらが無敵の印籠ではないということは、覚えておく必要があるでしょう。


そして、確かな根拠なく一方を貶めるような発言をしたり、

聞きかじりの不確かな情報でメーカーを批判するのは間違いだと思うのです。

センセーショナルな見出しに目が行くのは、致し方ないことです。

でも、その結論を導くべく示された情報には、

必ず何らかの意図があり、一定のバイアスがかかっています。

それは時には金銭的な利益かもしれないし、

知識の啓蒙かもしれないし、

あるいは正しさの強要であるかもしれません。


それは、当然ながら私の書く記事も同じです。

私は、このブログが「客観的なレビュー」だと言うつもりは全くありません。

ここで私が書いていることはどれも主観的な感想であり、

私の趣味・嗜好やバックグラウンドにある乏しい知識によるバイアスが、

これ以上ないというほど強くかかっているに違いないのです。

私は別にそれによって何の金銭的利益も得ていませんが、

それでもやはり、私のレビューが客観的で公平だなどとはとても言えません。


化粧品やヘアケア剤の成分については、

特に穴だらけのエセ科学で語られることが多いように思います。

それは、それだけ分からないことが多いということなのかもしれないし、

肌に付けるものだから安全なものを選びたいという、

消費者の迷いの現れなのかもしれません。


だからこそ、心をぎゅっとつかまれるような言葉に出会ったときほど、

ショッキングな「事実」を書き立てる文章に出会ったときほど、

立ち止まって考えてみて欲しいのです。

その文章が書かれた意図や目的はどこにあるのか。

見せかけの「科学」や「専門用語」が、

「常識」とかけ離れた道を突っ走っていないか。

自分自身が製品に求める目的の優先順位を見失っていないか。


そうすることで、自分に本当に合うコスメが見つかる可能性も広がるし、

情報に振り回されない取捨選択ができるのではないかと私は思っています。


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長い、長すぎる。

次回からは真面目に楽しくコスメの話をします(笑)