「名乗るほどの者ではない」

 

 

 

 

 

ゲームセンターで恐喝があった

 

それを止めて

 

丸く収めた高校生がいたということだ

 

 

 

店主に名前を聞かれると

 

「名乗るほどの者ではない」とだけ言って

 

そそくさと立ち去ったそうだ

 

 

 

しかし 感激した店主によって

 

すぐに彼の身元は判明し

 

本校の2年生の生徒 小山君だと分かった

 

 

 

 

 

言うまでもないことだが

(言う必要があって言えば)

 

本県では高校生のゲームセンター出入りは

禁止されている

 

「名乗るほどの者ではない」だなんて

 

実は 名乗れなかったんだ

 

 

 

 

 

本校の生徒指導である僕は

 

この話が大いに好きだ

 

店主のお礼の言葉を背に受けながら

 

ドアの向こうに消えてゆく少年の名前を

 

僕も知らない

 

 

 

 

(伊藤芳博) 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

 

 

 

先日の中学生向けのおはなし会では

採用?されませんでしたが、

 

こういう高校生と、

「僕も知らない」って平然と言ってのける

高校教師である作者。

 

 

 

 

 

なんかええなあ~、と心底思います^^

 

 

 

 

『いま中学生とよみたい101の詩』

(木坂涼・水内喜久雄/編  民衆社)

 

 

より抜粋した、大好きな詩をご紹介しました^^