地方の挑戦・・・2012年アジア・オープン特集④ | 柔術新聞

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柔術の事について書いていきますね。


いよいよ黒帯の特集です!!

アダルト黒帯フェザー級は、イザッキ・パイヴァという未知の強豪に日本柔術界の3精鋭が挑むというファン垂涎の展開となり、そこから得られた結果も大変興味深いものでした。

イザッキ・パイヴァ(PSLPBシセロ・コスタ)vs中村大輔(GRABAKA柔術クラブ)



日本最強の中村大輔選手がイザッキを迎え撃つという大注目の一戦!!

冒頭中村選手が上手くTDを合わせて先制しましたが、イザッキはとにかく手足が長いですね。
そして引き手の猛烈な強さにご注目・・・。
全く切れない上に、中村選手の袖がモチのように伸びてしまっています。
この引き手の強さと足の長さでもって下から揺さぶり続け、あの中村選手に強いポスチャーを取らせません。

苦心してクローズドを割り、アタックに向かう中村選手ですが、イザッキの引き手があまりにも強い為、上半身が常に下がっている状態を強いられます。
そこを超長い足が逃さず三角に捉えるという展開。
ハーフ下から足を抜いて、三角絞めで1本勝ちを収めます。

ベーシックと言ってしまえばそれまでですが、体格的に劣る日本人では出来無い勝ち方だと思います。
基本技術のディティールは奥が深いという話とはまた別の次元で、現在のトップクラスの競技潮流としては、ベーシックの強さとは体の強さに他ならないと個人的には思っています。

イザッキ・パイヴァ(PSLPBシセロ・コスタ)vs中塚靖人(グレイシー・バッハ)



中塚選手は1回戦で2012年ムンジアル2日目に残った強豪小山選手を見事破り堂々臨むイザッキ戦。

ベリンボロをはじめとする現代ガード技術も駆使する中塚選手は勇躍して引き込み合いに持ち込みます。

しかしブラジル国内で有象無象の有力選手と多数連戦しているイザッキ、現代ガード戦にも当然のように精通してスキを見せません。
足の組み換え合いから腰切りパスの形を上手くセットアップします。

中塚選手も粘り、そこから上手くゴロンとスイープ!
しかしイザッキは逆さのまま長い足でフックを作り、スイープを途中で止めてしまいます。
そのフックに中塚選手を乗せて、そのまま逆のベリンボロのような形でスイープ仕返してしまいます。

これは色々手に負えない感じですね・・・。
そのまま攻め切ってイザッキ1本勝ちです。

イザッキ・パイヴァ(PSLPBシセロ・コスタ)vs加古拓渡(グラップリング・シュートボクサーズ)



激戦を勝ち抜いて見事決勝に進出したGSB加古選手、優勝を目指してイザッキに挑みます。


しかしイザッキはまたもや引き込み合いからの足の組み換え戦を制して、腰切りパス→クロスニーの体勢をゲット。


現代ガード戦への対応も手馴れたものですね。
しかしこれも良く見ると、片襟グリップと、長い手を活かしてガード下から作ったナイス袖グリップを基点に、物凄い引き寄せからセットアップを成功させています。

イザッキはここからマウントまで持って行き、前の試合同様マウント三角から十字の連携を作りますが、そこはド根性柔術加古選手、十字のキワで引き抜き、強力な三角の圧力をかいくぐってエスケープに成功します。


そこから再度Modern Jiu-jitsu ガード攻防!
今度は50/50戦へ突入。
加古選手が大得意とする展開ですが、イザッキも負けずに応酬。
足が長いので、50/50ロックも強力そのものですね。
加古選手も一歩も譲らず、50/50戦は引き分け。

しかし足の組み換え戦になったところで、またもやイザッキが強力な袖グリップからグイッ!と引き寄せ、加古選手の体を横に向けた所で腰切りパスのセットアップに成功。
そこからマウントまで行き三角を決めます。
加古選手も大粘りに粘りますが、そのまま極まってイザッキの1本勝ちです。

イザッキのように手足がめちゃくちゃ長いうえに、現代ガード戦でも自分の形を持っている強豪というのは日本にはなかなか居らず、経験値が無いので対策が立てにくかったと思います。


この経験は、別に対イザッキのみという訳でなく、来年のムンジアルその他の国際大会できっと役立つ事でしょう。

特に加古選手は、最新の試合を見ると、相手からかなり離れた場所でセットアップして、相手のヒザ目がけて進むようなベリンボロを完成させているようなので、非常に楽しみです。
この方法ですと、相手からの圧力が少ない場所でセットアップするので逆さになるスピードも速くでき、しかも自分だけが届きやすい位置から相手の足や腰をつたって引きずり込めるので、より成功度が高くなると思います。

常に自分の中の新機軸を掲示できる選手というのは強いと思いますし、見ている側としても本当に楽しいですね。

そしてライトフェザー級は優勝候補筆頭!七色のシュラプネル・ガードの使い手、超絶技巧派金古選手が、九州の地で柔術革命を成功させんとする現柔術界のキーマン!名軍師江端講平選手とアジアの決勝で激突!
これは注目の一戦ですねー!!!!

金古一朗(ポゴナ・クラブジム)vs江端講平(パラエストラ北九州)



この試合は見ていて本当に緊張しましたね・・・。
お互いガード・ガードの攻防から立ち合ってポイントを奪取。
両者あらゆるムーブに精通、アタックもガードも互角の打ち合いを演じます。


しかし5分過ぎからの金古選手の見事な高速ヒザ十字、実はこれがかなり極まっており、江端選手のヒザにダメージを与えます。
江端選手はこれで強固なベースを取れなくなってしまいますが、そこから根性の粘り!!!
強烈な片巻きスパイダーは絶対に外させず、テクニカルなアタックを持つ金古選手に対して、どこまでもドしつこく食い付いていきます!


そして江端選手はガード・ガード戦からの立ち上がりに成功し、ポイントを奪取するまで粘りまくります。
おそろしいスタミナと根性!!!


しかし金古選手が終盤、強烈な
ベリンボロを連発!!
1発目は「一緒にローリング法」で難を逃れた江端選手ですが、ベースが取れないため金古選手の見事な2発目を逃れる事ができず、セミバック・ポジションを奪取されてしまいます。
そこからまさかの1本という所まで金古選手が攻め立てた所で試合終了!
そのままポイント優勢で金古選手が勝利しました。

江端選手の強烈な粘りに苦しむも、金古選手はその優雅なテクニカル・スタイルを最後まで崩す事無く、ラストは最高難易度の技を見事に決めての勝利。
まさにアジアの王にふさわしい、美しい試合ぶりでした。


しかし江端選手も、アジア準優勝は素晴らしい成績ですね。

練習等がどうしても偏りがちになってしまう九州という遠隔の地で、自ら先頭に立ち改革を提唱。
具体案を次々と形にしていきながら、選手としても結果を残すヴァイタリティには本当に頭が下がります。

そして一躍有名となった熊本キャンプですが、これが一層のヤバイ進化を遂げておりとどまる所を知りません・・・。
詳細極まるポイント制がスタートし、参加回数と参加への移動距離を数値化した割引き制度を開始!
遠隔地からの参加の苦労を良く知る江端選手だからこその配慮といえるでしょう。

http://www.facebook.com/photo.php?fbid=363750930382816&set=a.223495581075019.51113.100002437355048&type=1

そしてここからがヤバイ!!!
熊本キャンプ独自のランキング制度を設立し、そのMVPには関東等への大会に遠征&補助金を支出!!!

http://www.facebook.com/ebasi.kouhei/posts/365378240220085

これは凄すぎ・・・。
各地方でやって欲しいくらいです。
しかもそのランキング・ポイント計算法も、九州柔術のレベルアップの為に強烈に精緻なものとなっていますね。
更に江端選手は
自身の豊富なトレーニング知識をさらに磐石のものとすべく、関東方面にセミナー受講ツアーを個人的に敢行!
貪欲なまでの知識欲求は、おそるべきものがあります・・・。

そして江端選手のこれまでのキャンプや、直近に得た知識を集約したセミナーが、明日11月25日に福岡かすやドームで開催されます。

http://blog.livedoor.jp/paraestra_news/archives/51933385.html?fb_action_ids=358827754208467&fb_action_types=og.likes&fb_source=aggregation&fb_aggregation_id=288381481237582

これまでのキャンプと違い今回はセミナーなので、ギリギリまで受付をやっているとの事。
九州の諸葛亮孔明が取り仕切る、試合で勝つための精密極まりない練習方法!
興味ある方は是非下記メアドまで連絡してみてはいかがでしょうか!
kumamotocamp@gmail.com

そしてなんとセミナーに先立って、まだ経験の少ない若い選手や先生が居ない人の為に、ベーシック技術の共有を目的とした無料セミナーもあるとか!

http://www.facebook.com/ebasi.kouhei/posts/370285573062685

これは素晴らし過ぎ・・・!!
興味ある方は是非!!!!

加古選手や高橋健太選手のGSB勢は、アジア・オープンのフェザー級という最激戦階級において黒帯&茶帯2位を独占。
江端選手や高亀選手らの九州革命軍も、ライトフェザー級という重要階級で同じく黒帯&茶帯の2位を独占しました。
これは凄い成績ですよね・・・。

両軍勢とも、東京からは遠く離れた場所を根拠としていますね。
そういう遠隔の地で、練りに練り上げた自身の技術を胸に秘め、大舞台で見事その威力を発揮する・・・
資金面でも時間面でも大変な犠牲を要する行動ですが、そういった障害に負けず、自分の信じる道を突走る柔術開拓者達の時空を超えた執念が結実したアジア・オープンであったと思います。