女性をリーダーにするための16の提言(リクルートワークス研究所)。

提言1~11は企業側がする努力。12は大学、13~16は政府とともに取り組むこと。

とてもよくまとまっていましたし、言葉の端々にぐっとくるものがありました。

長いですが、ざっと要約します。



『女性のキャリアは、年齢との競争。』

提言1
将来のリーダーへの期待を会社や上司が表明する。「管理職になろうという気持ちはあるか」と問うことがナンセンス。覚悟や腹をくくるというのは、自分が期待されているという確信がなければ、生まれるものではない。女性の場合は、口に出して明確に期待していることを表明しないかぎり伝わらない。


提言2
20代後半から多くのライフイベントが待ち構えている女性には、成長と経験を「先取り」することが重要。入社5年で3部署を経験させる。中身の異なる職務を経験させる。「じっくり育てる」よりは意図的な「早い異動」。


提言3
27歳でリーダー職級に。5年間での成果を出せたかどうかだけで判断する。「つい最近結婚してもうすぐ子供を産みそうだから」「キャリアの方向性に悩んでいる様子だから」といった要素を昇格の判断基準に持ち込まない。


提言4
リーダー職務以降は、プロジェクトリーダーで経験値を増やす。「コツコツ」「着実に」ではなく「他者の力を借りてチームの目的を達成する力」をつける。


提言5
リーダー職級昇格の直後に、キャリア研修を実施して、自身のキャリアに対する長期的展望を持つことを人事がサポートする。

多くの女性は、結婚・出産というライフイベントがいつ到来するかわからないために、働き方や仕事へのコミットメントの程度を決めないままで働いている。長期的なキャリア計画をたてることを放棄し、コトが起こったら柔軟に対処するという、状況適応的なキャリア形成をしている(腹をくくれていないともいえる)。

「当たり前のように管理職になる」と決めてしまえば、それを前提にライフイベントの発生時の準備を整えるというキャリア形成の仕方もできる。

研修では、例えば、子供がいない場合、1人の場合、2人の場合では仕事の内容がどのように変わり、子育てにかかる費用はいくらなのか、出産後を時短勤務かフルタイムかで得られる給与や仕事機会はどのように変わるかといったシミュレートさせる。


提言6
リーダー職級の人事管理は、約2年を1単位として異動と明確なミッションを設定する。

2年はプロジェクトのスタートから完結、新しい部署への異動ののち仕事を覚え成果をだすまで、というように仕事の区切りとして適当な長さ。

また、妊娠してから出産、子供が1歳になるまでも約2年の長さ。2年毎に新しい仕事、ミッションをかせられることになると、よく知ってた居心地のよいポジションで手馴れれた仕事をこますといった「余裕」はなく「息つく暇もない」ほど目まぐるしくなるが、リーダーを育てるにはこのスピード感が必要。


提言7
標準5モジュールで管理職に。1モジュールを出産と育児に充当した女性の場合は、その他に仕事で5モジュールを経験し、6モジュールで昇進するが、経験と成果によっては4モジュールでも良い。モジュールという考え方を導入することによって、出産などによる一時的なキャリアの中断をただちに戦線離脱とみなす必要がなくなる。


提言8
育休MBAの奨励。Eラーニングなどを利用し、会計やファイナンス、法務、マーケティング、リーダーシップなど、実務の経験不足を補うような講座を受ける。


提言9
いかにして、柔軟性と生産性を高めるか。時間と場所に縛られない働き方を。育児と仕事を両立させる立場の女性は、時間がいかに希少資源であるかに気づき、生産性を高める努力をするもの。その変化をとらえて時間の使いかたに裁量権を持たせてあげることができれば、時間外労働なしでも重要な仕事を任せられます。


提言10
入社直後の5年の計画的ジョブローテーションと標準5モジュールのリーダーシップ職務経験を経て、管理職になった後は、経営者が後継者として育てていく。専門性とリーダーシップ、その時々の経営課題に合わせて個別状況適応的に配置や任用をする。


提言11
やむを得ず辞めてしまった優秀人材には、期限付き再就職オプションなどパイプラインを持つ。


提言12
大学からリーダーシップ教育を学ぶ。


提言13
育休は1年でいい。世界でも類を見ないほど充実している日本の育児休暇制度。アメリカなどでは3か月以内に職場に戻ってくるもの。フランスの研究所では、育児休暇が2年を超えると負の影響が出ると発表している。


提言14
家事・保育サービスに産業革命を。シッターの料金は都内で1h2000~2500円。家事代行は3500~5000円。たとえば、これが1500円になるだけでもサービスを受けられる家庭の数は急増する。女性の家事・育児負担が減り、仕事に集中できる時間と精神的余裕が増えれば、昇進とともにより高い給与を得られる人も増えるのでコスト負担感もさらに減殺される。安くなればスーパーウーマンでなくても仕事を続けていけるようになる。


提言15
ホワイトカラーの労働時間を2000時間/年に。1日8時間という限られた時間の中で成果をあげる人こそが優秀な人材であるいう認識にそろそろ変わっていなないとならない。


提言16
共働きを前提とした社会に。学校行事やPTAがほとんど平日の日中に実施される。母親が平日昼に家にいることを前提としてる。


特に、この6つの提言は印象的で、個人的にはagreeです。

・まず、期待を伝える
・リーダー昇格時にキャリア研修
・育休は1年まで
・時間の使い方に裁量権を
・家事育児サービスに産業革命を
・産休を含めた2年単位のモジュール化



その他の要点。

・経験値や判断力の不足は、経験させてないから

・安易に専門職やスペシャリストを選ばせない

・20代後半は、子供を持たない女性も「いつ産むのか」「キャリアをどうするのか」と悩む日々を迎え、結果として仕事へのコミットメントが下がることがある。この混迷期は中堅として活躍する時期とほぼ重なる。


・日本政府は2020年までに女性管理職比率を30%にする目標を立てた。2003年当時はあと17年あれば社会人になる女性たちが十分育つと見立てたが、2013年時点で成果がでてない。


以上。




局所的な提言ではなく、入社から30代後半まで見通して、ライフイベントの変化を前提に逆算するキャリア形成は利にかなってるなぁと思いました。

また、現場の社員は事業の成果に集中してくれてるので、人事が設計・サポートしていかないとなぁと思いました。