「俺、よく出会いを求めに行くんだ」
「ああ、ナンパか」
「ナンパ……。まあ、そういう理解でも良いかな」
「なんだよ、引っかかる言い方するなぁ」
「当たらずも遠からずって感じだと思って」
「ふぅ~ん。それで?」
「良い子と出会うんだけど、声をかけても答えてくれないんだ」
「無視か。そういうのって結構堪えるよな」
「最初から無視されているなら声なんてかけないさ。でもさ、最初に目が合うんだよ。そこで運命感じて声をかけるんだ」
「目が合ってからの無視か。それは更に……」
「ウサ子。カメ子。モフリーナにフワリーナ……」
「おいちょっと待て。それ、明らかに人の名前じゃないよな?」
「そうだけど」
「お前、何処で何をナンパしてるんだ?」
「ぬいぐるみショップだよ。俺、可愛いぬいぐるみが好きでな。でも、運命を感じても、相手が返してくれなくて駄目なんだ」
「つまりは店先でぬいぐるみに話しかけているのか?」
「そうだよ。ああ、女の子を口説いていると思ってたのか」
「いや、普通にそう思うだろ」
「相手が人だとは言ってないだろ。でも、最近さ、俺を気にしている人が居るのは確かだな」
「お、何だよ。あるんじゃん、運命の出会い的なのが。どうなんだ?どんな感じなんだ?」
「と言われてもなあ。何て言うか、凄く見られてるね。ジッと見てるんだ」
「熱い視線じゃないか」
「だろ? グサグサって突き刺さる感じでさ。最近だと、俺が店に入った瞬間から見てるね」
「お前それ、不審者か危険人物認定されてるじゃねぇか……」