キャプテン・フィリップス | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう



監督 ポール・グリーングラス

脚本 ビリー・レイ

原作 リチャード・フィリップス、ステファン・タルティ

撮影 バリー・アクロイド

音楽 ヘンリー・ジャックマン

編集 クリストファー・ラウズ

出演 トム・ハンクス、バーカッド・アブディ、キャサリン・キーナー

2013年 アメリカ


本作は、2009年4月、ソマリア沖を航行中の貨物船が4名の海賊に襲撃され、

身代金目的で人質にされた船長の4日間に亘るサバイバルを描いた実話で、

船長自らが書き綴った体験本を基に、社会派アクション映画を得意とする、

「ブラディ・サンデー」「ユナイテッド93」のポール・グリーングラスが監督した作品です。



ソマリア沖で海賊が多発する理由は、内戦で無政府状態が続くソマリア近海に、

大量の外国船団が侵入して魚を乱獲したり、産業廃棄物を投棄するなどして、

現地の漁師の生活が困窮したため、武装して漁場を守ろうとした漁民の一部が

海賊化したことと、海賊ビジネスで潤う組織が、彼らの背後で暗躍している事などを

映画の冒頭で簡潔に見せて、被害者と加害者の境目を曖昧にすることで、

単純な勧善懲悪物の構図にしていないところがリアリティーを深めています。

20名の乗組員の命を救うために、海賊の人質になったと称賛されている船長も、

家族との再会を願って、死の恐怖に慄く等身大のお父さんとして描かれているので、

アメリカ軍に追い詰められた若い海賊たちと、救命艇の中で恐怖を共有している様が痛々しく、

この作品の映画的妙味は、船長救出作戦の任に当たった、ウサーマ・ビン・ラーディン

殺害作戦で名を馳せた、アメリカ海軍特殊精鋭部隊ネイビーシールズに、

すべて持って行かれてしまいました。

この事件以降、アメリカ国籍の貨物船の襲撃事件が報告されていないことでも、

ネイビーシールズの恐ろしさを、海賊側に植え付けたことが分かります。




本編終了後のエンドロールで、船長と海賊のリーダーのその後が紹介されますが、

海賊に襲われて命の危険にさらされたとして、乗組員たちが船長を訴えた件も

紹介していれば、観客に対して、新たなインパクトを与えられたはずです。



映画(全般) ブログランキングへ