監督・原作・脚本 石井隆
撮影 佐々木原保志、山本圭昭
美術 鈴木隆之
音楽 安川午朗
出演 柄本佑、佐々木心音、風間ルミ、桜木梨奈、間宮夕輝、檀蜜
2013年 日本
石井隆の映画を始めて観ました。
エロ劇画出身で、「天使のはらわた」や「花と蛇」などの映画タイトルから、
陰湿で淫靡な性的倒錯の世界を想像していましたが、
アニメの美少女フィギュア人形だけが心の拠り所の駄目男が、リストラを宣告されて
絶望の淵に沈んでいる時に、心を持った等身大のフィギュア女子高生人形に
出会って救済されると言う、意外にもファンタジー色の強い感傷的な作品で、
挿入曲のアメリカ民謡「Aura ree」※の旋律が、得も言えぬ哀愁を誘います。
ただ、男性の女性に対する性的願望を視覚化しているので、
SEX場面はAV並みに入念に描かれ、フィギュア人形に対するサディスティックな
扱い方や、主人公の根暗でオタクっぽい自虐的な描写もしつこく、
同じ生きたラブドールを主人公に、人間の空虚感を詩的な映像で描いた
是枝裕和監督の「空気人形」に比べて、ラブロマンスの面では、
女性受けしないだろうと思います。
（ネタバレあり）
現実か妄想か曖昧な本作のファンタジー部分は、ラストシーンで自動車事故に
遭った 主人公の青年が、今わの際に見た夢だったことが分かります。
賭け麻雀に負け続けていた青年が、「あなたは運が良いんだから、自分を信じて
やればいい。」と励ましの言葉をくれた、フィギュア人形の思いを心に抱いて、
最後に33万回に1回の確立だと言われる大役「九蓮宝燈」を上がって大金を
手にするのですが、この「九蓮宝燈」は、上がれば死ぬと迷信されている役手で、
麻雀を知っている人（フィギュア人形は麻雀を知らなかった）なら、この後に起こる、
青年の運命を予想できたのです。
「ごめんね。幸せにしてあげられなくて…」
青年のいなくなった部屋で、身動きせずに横たわるフィギャア人形の哀しげな表情が、
いつまでも目に焼き付いて離れず、なぜか愛する人を抱きしめたいと言う思いに
させてくれる作品でした。
出典：ameblo.jp
※ エルビス・プレスリーが歌ってヒットした「Love Me Tender」の原曲。
本作では、フィギュア役の佐々木心音が、石井隆の作詞したバージョンを
歌っています。
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