監督・脚本 トマス・ヴィンターベア
脚本 トビアス・リンホルム
撮影 シャルロッテ・ブルース・クリステンセン
出演 マッツ・ミケルセン、アレクサンドラ・ラパポート
2012年 デンマーク
親友の幼い娘の嘘が切っ掛けで、児童性虐待者のレッテルを貼られてしまった主人公が、
住民から村八分にされて孤立していく姿を、残酷なまでの冷徹な視点で描いた作品で、
冤罪や風評被害、そしてマスコミの魔女狩りなどにも共通する、私たち自身が被害者にも
加害者にもなりえる身近な問題を通して、社会における人間関係の脆弱さが暴き出されます。
主人公が人間の尊厳を無視され、追い詰められていく過程で、多くの観客は、
TVドラマ「半沢直樹」の様に、倍返しのクライマックスを期待しますが、
作り手たちは、映画の世界で問題を完結させるのではなく、観賞後も怒りや不条理の尾を
引くように、後味の悪いエンディングを用意していました。
終わりなきラストによって、虚構と現実の境界を取り払われてしまった観客は、
主人公の心の痛みを、いつまでも共有し続けることになるからです。
難点を言えば、誰もが顔見知りの小さな町に住む住人が、根暗の幼い娘の作り話を
真に受けて、聖人君子のように善人な主人公に対して、いきなり掌を返すような行動に
でるだろうかと、疑問に残ったことでしょうか。
物語の中で原因は明かされませんが、主人公は、過去に離婚と失業を経験している設定に
なっているので、その汚点となる部分を、主人公の欠陥として事件と関連付けておけば、
住人たちの理不尽な行為も、思い込みや偏見と言った、目に見える人間の弱さとして、
伝わってきたと思います。
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