監督・原作・脚本 ジョセフ・コシンスキー
原作 アルヴィッド・ネルソン
脚本 マイケル・アーント、カール・ガイダシェク
撮影 クラウディオ・ミランダ
編集 リチャード・フランシス=ブルース
音楽 M83
出演 トム・クルーズ、オルガ・キュリレンコ、アンドレア・ライズボロー
モーガン・フリーマン、メリッサ・レオ
2013年 アメリカ/ロシア
本作は、監督のジョセフ・コシンスキーとコミック作家のアルヴィッド・ネルソンが
共同執筆して、ラディカル・コミック(2007年に設立された新鋭のアメコミ出版社)から
出版する予定の原作を映画化した作品なので、「スーパーマン」や「バットマン」などの
人気アメコミの映画化と違い、映画用に書き下ろされたオリジナルSF映画と言えるのですが、
ストーリーの造形や展開、美術、小道具のデザインを観ていると、映画のタイトル通り、
オブリビオン(忘却の彼方)から呼び起こされたSF映画の名作から影響を受けた場面が
随所にあって、ゼロから新しい世界を創出するのではなく、既出の表現方法を集積して、
新たな世界を再構築したような作品なので、エポックメイキングな驚きはありませんでした。
ただSFXに関しては、最近のCGを駆使した薄っぺらいデジタル画像ではなく、
「2001年宇宙の旅」「未知との遭遇」のダグラス・トランブルや「スター・ウォーズ」の
ジョン・ダイクストラが活躍した時代の、写実的なアナログ映像を再現してくれていたので、
久々にSF映画の醍醐味を味わうことが出来ました。
映画が描く近未来は常に暗い。それは、人が大事なものを日々失くしながら、
死へと近づいているからではないのか。
絶望の未来を通して、今に希望を見出そうとした本作の答えは、
レコードプレーヤーから流れる、プロコルハルムの「青い影」にアンドリュー・ワイエスの
テンペラ画「クリスティーナの世界」、そしてニューヨークヤンキーズの野球帽であった。
今、このカオスな世界の中で、何気なく接している物たちに愛おしさを見せた監督の
センチメンタリズムは、やはりアナログ的で、私は好きです。
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