監督・脚本 レオス・カラックス
撮影 カロリーヌ・シャンプティエ、イヴ・カペ
編集 ネリー・ケティエ
出演 ドニ・ラヴァン、エヴァ・メンデス、カイリー・ミノーグ
2012年 フランス/ドイツ
秘書を兼ねた中年女が運転する白いリムジンで、アポのスケジュールに
沿ってパリの街を一日かけて移動する主人公の目的は、
指示された人物に特殊メイクで姿を変えて、それぞれの人生を演じることだった…
本作は、自分の撮りたい映画を自由に撮れないジレンマから、
「映画を作る度に自分に失望してしまう」と嘆くレオス・カラックス監督が、
人生の一部と捉える映画の中で、映画を作り始めた頃の原点に帰って、
もう一度人生(映画)をやり直し(作り直し)たいという思いを、
分身である主人公に託した私映画で、主人公が演じるエピソードは、
SF、ミュージカル、コメディー、サスペンス、ホラーなどジャンルは多岐にわたり、
前作の短編「メルド(糞)」(オムニバス映画『TOKYO!』の第2話)の、
ゴジラのテーマ曲に乗って現れる緑色の怪物が再び登場したり、
ゴダールやコクトーなど影響を受けた監督作品のオマージュだったりと、
カラックスの人生(映画)に対する思いが集約した作品になっています。
カラックス監督のデビュー作から主役を演じてきた盟友のドニ・ラヴァンが、
本作でも主人公を演じていますが、モーションキャプチャの衣装を着て、
蛇のように身体をくねらせながら美女と絡み合う場面に代表されるように、
その“魔術的な身体”によって表現される、型破りな演技の数々は、
肉体に支配されて思い通りに精神をコントロールできずにもがき苦しんでいる、
俳優の心の痛みまでもが見えてくる凄みを感じさせます。
ただ、エピソード内容の殆どが、監督のマスターベーションから脱しきれずに、
発想のユニークさだけで終わってしまっているのが惜しまれます。
カラックス監督の作品を初めて観る観客には理解し辛い内容だったのか、
終演後、売店でパンフレットを買い求める姿が目につきました。
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