監督・脚本 ミヒャエル・ハネケ
撮影 ダリウス・コンジ
編集 モニカ・ヴィッリ、ナディン・ミュズ
出演 ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ
イザベル・ユペール
2012年 オーストリア/フランス/ドイツ
日本福祉大学の調査によると、介護疲れなどを理由に、60歳以上の高齢者が
家族に殺害されたり心中したりする事件が、1998年から14年間に全国で
少なくとも550件発生して、558人が命を落としているそうですが、
高齢化社会に伴う医療と介護の問題は、ヨーロッパでも深刻なようで、
このリアルな問題を、毒気満載の「ファニーゲーム」や「ピアニスト」を監督した
ミヒャエル・ ハネケが題材にして、奇を衒う事なくストレートに描いたことに
驚きを隠せません。(アンチ・ハリウッドのハネケ作品がアカデミー賞作品賞に
ノミネートされたのも頷けます。)
年老いた音楽家夫婦が主人公で、痴呆症の妻を献身的に介護する夫の日常が
客観的な視点で淡々と描かれるので、最後に夫が選んだ究極の選択に対する是非を、
覗き見していた観客は、自分自身の問題として突きつけられる作品です。
年配の映画好きの人にとっては、嘗て一世を風靡した美男美女の「男と女」「Z」の
ジャン=ルイ・トランティニャンと「24時間の情事」のエマニュエル・リヴァの
老人になった姿を見るだけでも、人生の残酷さを感じずにはいられないでしょう。