ル・アーヴルの靴みがき | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督・脚本 アキ・カウリスマキ

撮影 ティモ・サルミネン

編集 ティモ・リンナサロ

出演 アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン

2011年 フィンランド/フランス/ドイツ


何かに追われるように生き急いでいる現代人を嘲笑うかのように、

世捨て人のように人生を達観した、寡黙で無表情な下層民たちが織り成す

悲喜交々を、感情を排した独特な語り口で描くアキ・カウリスマキの最新作は、

見つかれば強制送還されてしまう難民の黒人少年を助けるために奔走する

貧しい靴磨きの老人が、隣組の人々の助けを借りながら、その清き心によって

奇跡を起こすまでを描いた人間賛歌で、難病で入院している妻への献身的な愛の

サブ・ストーリーも感動的な、「最高のハッピーエンド映画」の謳い文句通りに、

観終わったあとに得も言われぬ至福感に満たされる作品です。


本作に登場する主人公の飼い犬ライカが、監督が実際に飼っている愛犬で、

老人が移民の少年をかくまっていると密告する、数秒間だけしか映らない小さな役を、

監督の敬愛する「大人は判ってくれない」のジャン・ピエール・レオに演じさせる等

監督の遊び心から生まれる、ほのぼのとしたユーモアが登場人物たちから漂って、

疲れた心を癒してくれた佳作でした。


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