原作 ジョナサン・サフラン・フォア
脚本 エリック・ロス
撮影 クリス・メンゲス
編集 クレア・シンプソン
出演 トーマス・ホーン、トム・ハンクス、サンドラ・ブロック
マックス・フォン・シドー、ヴィオラ・デイヴィス
2011年 アメリカ
2001年9月11日に、テロリストによりハイジャックされた4機の航空機が、
ワールドトレードセンターやペンタゴンに突入するという、世界を震撼させた
「アメリカ同時多発テロ事件」を題材にした作品で、父親をテロによって失い、
PD(パニック障害)に陥った自閉症の少年が、父の遺品である花瓶に隠されていた
ブラックと書かれた封筒に収められていた鍵の秘密を探ろうと、ニューヨーク中の
ブラック姓の人物を訪ね歩くという冒険譚で、理不尽な暴力に満ちあふれた社会で、
いかに希望を見出して生きていくかを、様々な悲しみを抱えた人々との出会いによって
成長していく少年の姿を通して描いています。
ジョナサン・サフラン・フォアの原作本では、アメリカが加害者となったドレスデン爆撃
(死者2万5千人)や広島の原爆(死者6万6千人、負傷者6万9千人)にも
言及していて、「アメリカ同時多発テロ事件」だけを取り上げて、アメリカだけの病いに
留まっている映画は、人類全体の問題としての普遍性に欠けており、
原作のメッセージを半分も伝えていません。
「リトルダンサー」「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリー監督と
「フォレスト・ガンプ/一期一会」「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」の脚本を書いた
エリック・ロスを以てしても、ハリウッドで映画化するには、ここまで描くのが
限界なのでしょう。
因みに、真珠湾攻撃の報復として、日本をターゲットに原爆の開発を推し進めた
人種差別主義者フランクリン・ルーズベルト(アメリカ合衆国第32代大統領)は、
「犬の飼い主が悪ければ犬も罰しなければならない。日本の指導者の残虐で
不法な行為の責任を、日本国民が受けるのは当たり前だ」(テッド・モーガンの
伝記による)という言葉を残しており、ダウンして立ち上がれないのに、
尚も執拗にパンチを浴びせ続けるボクサーのように、戦意を失っている日本の
ほとんどの都市を、B29による無差別爆撃によって焼け野原にした上に、
止めに原爆を広島と長崎に投下(命令したのは、ルーズベルト急死の後を受けて、
第33代のアメリカ合衆国大統領になったトルーマン)してしまいました。
ナチスによるユダヤ人大量虐殺をホロコーストと表現されますが、ホロコーストは、
ユダヤ人の宗教儀式で、獣を丸焼きにして神前に供える犠牲というギリシャ語が
語源なので、原爆投下や日本全土への空襲(東京の空襲では、死者8万4千人、
負傷者5万人、26万7千の建物が破壊された)、ドレスデン爆撃こそ、
真のホロコースと言えるのでははないでしょうか。
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