サイコ・サスペンス映画を続けて観る | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら
『悪魔を見た』

監督 キム・ジウン
撮影 イ・モゲ
美術 チョ・ファソン
出演 イ・ビョンホン、チェ・ミンシク、オ・サナ
2010年 韓国











人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら
「キラー・インサイド・ミー」


監督 マイケル・ウィンターボトム
原作 ジム・トンプソン
脚本 ジョン・カラン
撮影 マルセル・ザイスキンド
出演 ケイシー・アフレック、ケイト・ハドソン、ジェシカ・アルバ
2010年 アメリカ








人間の内に潜む獣性を描いたサイコ・サスペンス映画『悪魔を見た』と
『キラー・インサイド・ミー』を続けて観ました。
『悪魔を見た』は、パラフィリアの殺人鬼に、身籠もの婚約者を、
生きたままバラバラに切り刻まれて殺された主人公の国家情報院の
捜査官が、復讐の鬼と化し、やがて自らも理性を失いモンスターに
変貌していくと言うのが大筋のストーリーで、捜査官役に『JSA』の
人気俳優イ・ビョンホン、殺人鬼に『オールド・ボーイ』の個性派チェ・ミンシクが扮し、
それぞれが持ち味を生かした演技で火花を散らし合い、
韓国映画が得意とするダークで陰惨な、目を背けたくなる残酷描写を
見せ場に、スリリングで緊張感のある作品に仕上がっています。
『キラー・インサイド・ミー』は、スタンリー・キューブリックやスティーブン・キングが
絶賛したジム・トンプソンの原作を映画化した作品で、
突然、暴力の衝動を抑えられなくなり、愛する人までも犠牲にしてしまう主人公の、
ペルソナ(仮面)に隠された不条理を通して、人間の本性の危うさを顕現した作品です。

(ここからネタバレあり)

どちらの映画も、美女が暴力のターゲットになりますが、
『キラー・インサイド・ミー』では、ハリウッドミューズのジェシカ・アルバが顔面を
殴打されて破壊され、ケイト・ハドソンも殴り殺されて失禁する、
ファンにとってはインパクトの大きい掟破りの凄惨な場面が用意されていて、
社会派監督マイケル・ウィンターボトムらしさが発揮されています。

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら
       ジェシカ・アルバ                   ケイト・ハドソン
                               

作品の雰囲気は『キラー・インサイド・ミー』、娯楽性では『悪魔を見た』に
軍配が上がりますが、『悪魔を見た』は、殺人鬼が背負っている社会の病巣を描かずに、
心を持たないホラー映画のモンスターと変わらない設定にしてしまっているので、
復讐する捜査官の空虚感を、観客は共有することが出来ないのが難点で、
ご都合主義のストーリー展開も気になりました。
『キラー・インサイド・ミー』は、可も無く不可も無い作品ですが、
キューブリックが映画化すれば、どのように料理してくれただろうかと、
原作を読んでみたい気分にはさせてくれました。

人気ブログランキングへ