エリックを探して | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう



人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督 ケン・ローチ
脚本 ポール・ラバティ
撮影 バリー・アイクロイド
音楽 ジョージ・フェントン
出演 スティーブ・エベッツ エリック・カントナ ジョン・ヘンショウ

2009年 イギリス


マンU(マンチェスター・ユナイテッド)20世紀最高のサッカー選手に
選出されたエリック・カントナが、サポーターの団結力や選手とファンの
繋がり等自身の体験を基にしたアイデアを、社会派監督ケン・ローチが
監督した作品で、“ゴールを生むためには、美しいパスが必要”と、
仲間たちの友情によって、人生の崖っぷちから立ち直る主人公の
奮闘を描いた、心温まるヒューマン・コメディです。

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人生に疲れ果てて生気のない、負け犬根性丸出しの郵便配達員エリック・
ビショップの空想の世界に、彼が人生の師と仰ぐカリスマサッカー選手エリック・
カントナが現れて、進むべき方向をアドバイスしてくれる場面がメインになっていて、
カントナ自身が本人役で出演している事もあって、マンUファンにとっては
見逃せない作品ですが、“チケットが高すぎて買えない”“競技場の駐車場は、
俺たちには縁のない高級車ばかり”“1878年創立当時は鉄道員のチームだった”
と、ファンより金を優先している現在のマンUへの批判を忘れないケン・ローチの
プロレタリアートの視点は、本作の様なファンタジー色の強い作品でも健在でした。

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら
最も美しい思い出が場合によっては最も辛い
それが人生(セ・ラ・ヴィ)だ

愛は自転車の乗り方と同じ
一度覚えれば一生忘れない

イバラを縫えば棘を刺す
自分より足の速い者を追い越そうと思うな
無理に背伸びをするな
左が固ければ右から攻めろ

カントナが、主人公にアドバイスする際の格言は、ケン・ローチが考えたもので
心を打たれますが、実際のカントナもかなりウィットに富んだ人物のようで、

「カモメの群れは、漁船を追いかける。
なぜかというと、イワシが撒かれると思っているからさ。
以上だ。ありがとう」

と、1995年1月のクリスタル・パレスとの試合中に、差別的な野次を飛ばしたファンに
対して暴力事件を起こしたカントナを吊し上げようとに緊急に開催された記者会見場で、
ゴシップに群がる三面記者たちをかもめに喩えるブラック・ジョークを言い放って
立ち去る若かりし頃のカントナの勇姿が、映画のエンドロールに挿入されています。

人気ブログランキングへ