営業マンが、昼食を取ろうとウロウロしていた。
田舎町でそう安易には見つからず。駅のほうに向かうと食堂の看板が見えてきた。
「おふくろ食堂」
北風にヒラリと、のれんが揺れている。
安堵の笑みを浮かべ男は、この店に決めた。
「いらっしゃい」
年配の女が、一人で切り盛りしているようだ。
客は男ひとりだった。閑散としている。
壁のメニューに目をやり注文する。
「おばちゃん。おふくろ定食ちょーだい」
「あいよっ」
数分後・・・・・・
「はい。おまたせ」
盆にのせられたものを見て、男は眉をしかめた。
「え、なにコレ?ご飯とめざし・・・だけかよ」
「しょーがないだろ。父ちゃん出てって帰ってこないんだから。今日はこれでがまんしとくれタカシ」
「はあ?なに言ってんの?おれタカシじゃねーし」
「もうっ!そんな文句あんなら食べなくていい!!よその子になりなっ!」
「・・・・・・ごめん母ちゃん。おれ、あしたから働くよ」
「いいよ。あんたはしっかり勉強をして、大人になったらうーんと母ちゃん楽さしておくれ」
「うん!母ちゃん。おれがんばるから!・・・・・・なにコレ?そんなドラマティックな演出いらんねん!!」
の後。かといって他に店も見つからず、男はおふくろ定食をペロリ、五分で完食した。
がしかし、営業がうまくいかないとき、ここへやって来るようになった。
「ただいま母ちゃん!」
「おかえり。いつものでいいね」
「うん!」
お腹より心が満たされるようだ。
----Fin----
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