強靭な肉体を誇る中西学選手にまさかのアクシデント発生。
京都大会で対戦相手の井上亘選手にジャーマンスープレックスで投げられた中西選手は、頭部より落下し反転、そのまま動けなくなってしまった。
あの太い首と僧帽筋を持ちながらも頚椎を襲うダメージ。
近頃、つなぎ技に地位を落としそうになっているジャーマンスープレックスであるが、やはり危険な技であることを実感させられる。
脊髄損傷は頚椎でもっとも避けなくてはならない損傷である。
現時点の医学では、傷ついた脊髄を再生させることは難しい。
医療的な判断をする場合は常に最悪のケースを考えて対処していかなくてはならない。
最悪の想定から始めて徐々に緩めていく。
意識レベル問題なし。
上肢の運動麻痺、下肢の脱力感。
知覚は正常。
そこまでをリング上で確認し、脊髄損傷を疑う。
コルセットを着用させ、頚椎固定しバックステージへ搬送。
救急車を待つ。
病院にて、レントゲン、CT、MRI検査。
この頃には、運動機能の改善。
頚部の痛みと痺れの痛みに主訴が変わり、回復への方向がみられた。
幸いにも画像上で骨折などの明らかな損傷はなし。
しかし、一時的麻痺がみられたことから、中心性脊髄損傷と診断。
頚椎を固定し安静入院となった。
レスラーの大半は、頚椎に骨棘が形成され変形している。
若いレスラーでもそれはみられるが、キャリアを積んだレスラーにやはり多い。
首に負担のかかる競技で、それを食い止めることは難しい。
可動域の狭くなった頚椎は当然、危険性が増す。
一瞬のタイミングのズレで起こった今回のケガであるが、やはり蓄積の延長線上にあるのは間違いがない。
中西学選手の太い首を持ってしてもこのダメージがあるのだから、首の細いレスラーは更に注意が必要である。
キャリアを積んだレスラーの蓄積による骨棘形成と柔軟性の確保、技の危険度、若手のプロレス開始時の首の鍛え方と試合内容。
頚椎については、根本から一考する必要があるかもしれない。
特に若手の頃からのダメージをいかに減らすか。
首は当然鍛えるのだが、強くなるには時間を必要とする。
しかし若い頃は、多少首が弱くても柔軟性があるので耐えられる。
それが若手の頃から危険な技を成立させる要因となってしまっている感もある。
しかし、内部では骨の変形が知らぬ内に行われているのだ。
やはり行き着く先は、試合内容になってしまうのか。