賃貸牧場3 | ブラジル発 セクシー&キュートな洋服屋の生活裏話 (格安ネットショップもオープン ダンスファッション サルサ ナイトクラブに!)

賃貸牧場3

賃貸牧場には、いろいろと文句を言う弟もいないから、前からやりたいと思っていた養豚を始めるべく種豚を探すことにした。メスの豚は既に数匹持っていたのだ。わたし達が養殖しようと思った豚は、普通の豚よりも脂肪が少なく大型のイタリア製の豚の置物によく見られる耳の大きなやつだった。

いろいろな人に尋ねていると、格好の種豚を持っている人がいると聞いたので教えてもらった牧場を訪ねていった。訪問した牧場は、それほど遠くではなかったが、国道からかなり入ったところにあったので雨季ということもあり、舗装していない道を尋ねていくのはなかなか骨が折れた。

牧場主の家に近づくにつれて、サトウキビやとうもろこしが整然と植えてあり、立派なトラクターもあったので、なかなかお金持ちの牧場だと分かる。古くはあるが、しっかりとした牧場主の家の前は広く、きれいに手入れがされてあり、呼び鈴代わりに大きく「パンパンッ」と手を叩くと奥の方から花柄のワンピースを着た牧場には似つかわしくない中年のきれいな女性がゆったりと現れた。一目でここの女主人とわかる。

種豚を探しに来たと説明しているところに、ここの当主らしき50代くらいの恰幅のいい男性がにこやかに現れた。今まで畑に出ていたらしく、多少汚れているが、きちんとした格好をしている。雇い人に口早に指示を出すとわたし達に挨拶してきた。牧場に住んでいると、そうそう他人との接点がないので訪問者は常に大歓迎なのだ。

うちの人が、自己紹介の時に「この近くの牧場をデボラという女性から賃貸した者で。。。」と言った瞬間に、男性の顔が固くなり奥さんが「あっ」と小さな声を発して旦那の脇を突付いて一瞬ではあったが顔をしかめた。そして、ここの主人が「デボラは、わたしの姪でして」と説明したが、この様子を見ただけで、たいていのことが憶測できた。主人は、それ以上のことには言及せずに、豚の話になりわたし達の探している豚は彼の弟が持っていると言ってすぐ近くの弟の牧場に案内してくれた。

彼の弟の牧場も整然として豊かな印象であったが、弟自身はこの牧場には住んでいないようであった。たまたまその日は、牧場を訪れていて商談することができた。

種豚を探す一連のやり取りで分かったのは、この一帯の広々とした放牧地は、現在ではいくつもの境界線で仕切られているが、一世代前は一つの巨大牧場だったこと。大牧場主が亡くなった後に子供達に分け与えられて、その中の一部を両親が亡くなったわたし達の賃貸主のデボラという女性が受け継いだのだ。

牧場を賃貸する時に聞いた、親族との揉め事は、訪問した牧場夫婦のやり取りで察することができたし、お互いあまりよく思っていないのが手に取るように感じられた。

それにしても、親類縁者の牧場の豊かな印象に比べて、わたし達の賃貸牧場からは牧場自体の豊かさに対して、人間生活の部分で荒んだ印象を受けるのがやはり不思議でならなかった。

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