成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ
Amazon(アマゾン)
芸術家に関連した小説をよく執筆される原田マハさんが
棟方志功とその妻チヤを主人公にした小説を書きました。
名前を知らなかったとしても
棟方志功の作品は、だれもが目にしていると思います。
特に、画面いっぱいに表現された仏像や
なまめかしい弁財天を描いた作品は
見る人の目を引き付け、一度見たら忘れない印象を
残すのではないでしょうか。
小学校の授業では必ず版画を習うと思いますが、
日本の芸術における版画の地位を高めたのも
棟方志功ではないかと思います。
原田マハさんの自由な発想には驚かされますが、
今回は青森の貧しい青年であった棟方志功が
ゴッホの絵に魅せられ、
いかにして世界のムナカタと称されるまでになったかを
事実に即して描いています。
そこには、妻のチヤを初め、様々な人との出会いや、
運命のめぐりあわせが欠かせませんでした。
あらためて棟方志功の芸術に触れる
きっかけになる本だと思います。
イエス・キリストを主人公にした映画はいくつもありますが、
孔子を主人公にした映画や小説は、少ないと思います。
そう考えると、孔子はイエス・キリスト以上に
神格化された人物かも知れません。
この小説は孔子を、
思うように出世できない悩みや嫉妬をかかえ、
妻や息子との関係に苦しむ
一人の人間として描いています。
孔子をあえて孔丘と呼び、タイトルにもすえていることから
著者の意図が伝わってきます。
あらためて思うのは中国の歴史の悠久さで、
我々から見たら孔子は何千年も前の人ですが、
その孔子から見ても、殷や周公旦の時代は
はるか昔のことだというので、私の想像力ではついていけません。
長い年月の中で忘れられようとしている、周の政治の
在り方を学ぼうと奮闘する様子や、
混乱する魯の政治に翻弄され、国を離れて諸国を放浪する
孔子の生涯が時系列的に把握できます。
ところどころに孔子の名言もちりばめれているところも
楽しめるポイントです。