谷崎潤一郎の「陰影礼賛」が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより、大文字版で出版されました。
この人はすごいな・・・と感じる作家は、人によってまちまちだと思いますが、個人的には、微妙すぎる感覚や感情の揺れを、コレゾという言葉で言い当てて、その感覚にちゃんとした形を与えられる人・・・はすごい作家だなーって思います。
その中でも、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」は、秀逸です。
例えば古い日本家屋なんかに行くと、妙に落ち着くし、なんかいいなーって思う。でもそれをどういいのか、どう落ち着くのか、それを言葉にするのって本当に難しい・・、ただなんとなくいいな、としか言えなくて、もやもやしたままにしてるうちに、忘れてしまう。
でもすごい作家は、まさにそれ!という言葉で言い当ててくれて、心の中にあったこちらのもやもやした感覚や感情がバシッと射抜かれて、スッキリとおちていく感じがします。
そして、その感覚が記憶に深く落ちていく。
そしてまた、こちらの1万倍ぐらいの細かさで色々感じているので、あぁそうか、そんな感じ方もあるんだ・・・とこちらの感受性まで広げたり、深めたりしてくれる。
この文章を始めて読んだのは、高校生の時・・・国語の読解テストに出ていた時。
頭ではよくわからないんですが、なんか妙にしっくりくるところがあり、書名をメモって、その後何年かしてから文庫を買って読みました。
やっぱりよくわからないんだけど、やっぱり妙にしっくりくる・・感覚に訴えてくる。
日本文化の奥行きがちょっとだけわかったような気になりました。
この随筆を、単行本で、しかも大文字で出版してくれた、ディスカヴァーの目の付け所は素晴らしいです。
美味しい文章は、文庫の小さな文字じゃなくて、これぐらい大きな文字でじっくり味わいたい。
繊細で、微妙で、奥深い日本語を是非、ゆっくり味わってみて下さい
(吉)