『駐在刑事』  笹本稜平 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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駐在刑事 (講談社文庫)/笹本 稜平
¥680
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***この本は2009年12月に読了しました***

警視庁捜査一課から青梅警察署水根駐在所所長へ。取り調べ中に容疑者が服毒自殺したことで左遷された警部補、江波淳史。自責の念を背負う元刑事は、奥多摩の捜査において生身の人間としての自分を取り戻せるか。冒険小説の第一人者が挑む警察小説。組織とぶつかりながらも、自ら信じる捜査を貫く様を描く。
(Bookデータベースより)


警視庁捜査一課殺人犯捜査係に在籍していた江波は、とある事件の取調べ中、眼前で容疑者に服毒自殺されてしまった過去を持つ。当時、江波の容疑者に対する心象はシロだったが、キャリア管理官の勇み足気味の捜査の勢いを止めようと自ら買ってでた取調べでの出来事だった。
見込み捜査を煽った管理官は、トカゲの尻尾きりのごとく、責任を現場の江波になすりけた。
事実上の左遷勧告をうけ、江波が赴任した先は、青梅警察署水根駐在所の所長であった。




過去の自責の呪縛から離れられない江波が赴任した先は、奥多摩の山里近い駐在所。
奥多摩と言う田舎(失礼)の大自然と、そこに住む住民達との都会と違った温かさのある人間関係によって、江波の心は徐々に洗われていく。


扱う事件のほとんどが殺人事件だった警視庁時代では体感できなかった人との触れ合い。
巡回訪問などをこなし、地域密着である駐在所での仕事をしながら江波は、警察官と言うのは地域の住民達の心に寄り添い、人々に安心感を与える量りがたい価値を持つものである、と再認識するようになる。


ひょんなことから登山を始めるようになるが、山里における数々の事件には登山経験が役立つ。
登山ならでは冒険小説の趣きもあるし、四季折々の奥多摩の自然や、登山先の山々の描写は秀逸だ。
だが、これでもかと言うほどの語彙での描写は、少々自慢されているかのようで若干参ったかな。



全体的には、山登りのような激しい起伏がある訳でもなく、まぁ、可もなく不可もなく、と言った感じでした。
連作短編集なので、ご都合主義的な部分はご愛嬌としても、すぐに事件は解決しますし、アクロバティックな話も得になし。
でもそれが逆に地元民との触れ合いで取り戻していく人間性をうまく表していたのかも。
過去の事件による自責の呪縛から解き放たれ、前に進もうとする江波。
駐在さん、と呼ばれる仕事に心地よさを感じる心優しき所長さんと、一匹の賢い番犬がこれからも地域の安全を守ってくれることでしょう。
作品の中では「秋のトリコロール」がクライマーズハイのような描写もあって個人的には良かったかな。



★★



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