『シャトゥーン ヒグマの森』  増田俊也 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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シャトゥーン ヒグマの森 (宝島SUGOI文庫) (宝島社文庫)/増田 俊也
¥590
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***この本は2009年7月に読了しました***

マイナス40度も珍しくない極寒の北海道・天塩研究林。そんな土地に立つ小屋に集まった、学者や仲間たち。そこへ雪の中を徘徊する体重350キロ、飢えて凶暴化した手負いの巨大ヒグマ、“シャトゥーン”ギンコが襲いかかる!次第に破壊される小屋。電話も通じない孤立無援の状況下から抜け出すことは出来るのか!?第5回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作の文庫化。
(Bookデータベースより)



『シャトゥーン』
 秋のうちに食いだめができずに、冬眠に入らないまま食料を求めて雪の中を徘徊しているヒグマ
 飢えていて気が荒く凶暴で、狙った獲物を執拗に追い続ける、きわめて危険な存在
 「穴持たず」とも呼ばれる



こういうジャンル、アニマルパニックというんですかね、は初めてだったかも知れない。
怖かった。率直な感想です。
幽霊とかじゃなく、現実に存在しているヒグマという獣に対する恐怖。そして大自然への恐怖。
今もどこかで息を殺して獲物を狙っているであろうライオンや虎より大きな陸上最大の肉食獣、ヒグマ。
一度欲しいと思った物は必ず手に入れる。それを邪魔されれば今度は邪魔した相手を執拗に追い、殺すまで諦めない。
身体能力はすべて人間より上。「止め足」を駆使し、ベテラン猟師でさえも手玉にとる知性の高さも、雪上では人間より何枚も上手なのだ。
人を喰うことを覚えたヒグマにとっては、人間などそこらにいる小さな動物と同じ、ただの獲物なのだ。


人を襲い、人間を喰うヒグマ。
最初にヒグマに襲われ、爪で小屋から引き出されるほんの一瞬。
その描写は非常に淡々としている。それが刹那の描写にふさわしく、さらに恐怖を与えられる。
そこから何度も何度も執拗に襲い来るシーンに心と手が震えました。


北海道開拓の歴史は、そのままアイヌ文化と動物たちの滅亡の歴史。
生態系の破壊や、ヒグマの住むべき場所がなくなってきているのは、人間のせいというアイロニーもありますし、ミステリー的要素もきちんとあるんですが、そんなことよりもヒグマの圧倒的なまでの存在感、そしてこれでもかと言うほど執拗なまでの獲物へ対する粘着性に恐怖させられました。


よく人間は小さくて弱い生き物だ、という表現をよく見聞きしまったくその通りだと思いますが、内面でなく身体的な弱さというものをまざまざと見せ付けられた気がします。


クーラーを高めにつけて涼しい部屋で読んでたのに、いつの間にか身体が寒くなって冷えていた自分がいました。


とりあえずエグイ表現が苦手な方は読まないほうがいいでしょう。





ヒグマは地上のどんな生きものも恐れはしなかった。ヒグマは北国の王者だった。
オオカミやホッキョクグマもヒグマに敬意を払い、腐肉をあさる権利をゆずってもいた。
強大な力ゆえに、傲慢な心が芽生えたのも当然だった。
(アーネスト・シートン)


★★★★



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