殺人現場を実体化するーーーその裏に潜む恐ろしい悪意!
ピエール・ルメートル 橘明美 訳
異様な手口で惨殺された二人の女。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は部下たちと捜査を開始するが、やがて第二の事件が発生。カミーユは事件の恐るべき共通点を発見する…。掟破りの大逆転が待つ鬼才のデビュー作。
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低身長のヴェルーヴェン警部は異様な殺人現場に遭遇した。何しろ遺体はバラバラ、凶器も多種、天井には謎のメッセージ、しかもサインのような指紋まで残されていたのだ。
愛妻イレーヌは妊娠中。夫婦円満の幸せを噛みしめる時間もなく、ヴェルーヴェン警部は猟奇殺人にかかりっきりになる。そして気がついてしまう。ーーー殺人現場がエルロイの小説『ブラック・ダリア』のそれと酷似していることに!
第2の事件はエリスの『アメリカン・サイコ』の模写だった。殺人犯は小説中の犯罪現場を実体化しているのだ! ーーーヴェルーヴェン警部は推理小説と推理小説と未解決事件を照らし合わせ、案内広告で犯人をあぶり出そうとするがーーー
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「悲しみのイレーヌ」です(・∀・)
ルメートルによる低身長警部ヴェルーヴェンシリーズ第2巻です。実際はこれが第1作目にしてルメートル自身のデビュー作になります。
故にわたしたちーーー特に「その女アレックス」を読んだ人たちーーーは覚悟を決めて本書とその感想を読まないといけません。
逆に本書を読んでから「その女アレックス」に行った方が気持ちが楽になるかと思います。
本書は推理小説の殺人現場を実体化するという目立ちたがり屋、サイコパス的な殺人者が登場します。それにも嫌悪だし、遺体もグロい。の一言で気持ち悪くなるのに、なるのにーーーここまで読者とカミーユを打ちのめすのか。
本書は史上最悪のバッドエンドです。「その女アレックス」で疑問だった謎が1番望んでいなかった形で解かれます。
そりゃタイトルロールだし、疑わなかったといえば大嘘になる。でも! こんなのってないよ!
もう途中の幸せな夫婦シーンで涙は出るしーーー今、泣きそうになりながら書いてるよ!ーーー、終盤は苦しくて息もできないまま読みました。カミーユ……!!
「その女アレックス」は終盤でドケチなアルマンの意外な一面を見てちょっと心が軽くなったのに本書は徐々に空気が重くなり、最後は読者を(精神的に)死亡させて終わります。
デビュー作がこれなら、最終巻「傷だらけのカミーユ」はどうなるんだ……怖いけど気になって仕方がない……
人間の底知らない悪意。それがもたらす残酷にして最悪の結末……脳が胸が心臓が殺人犯の手の中にあるような、365日24時間見られているような、気を抜けば最後、殺人犯の手中に嵌り、永遠に逃れられない。ある意味死んでからも逃れられない。気分は今、このブログ書いている最中も鬱蒼です。
モーリス・ルブランを読んでいた時も今と似た気持ちを感じて、夜、かなり魘されましたが、わたし、フランス・ミステリと反りが合わないのでしょうか……← 作風全然違うのにorz
よって、ルメートル作品は一気読み無理!
「死のドレスを花婿に」は気長に待ってください!←
「悲しみのイレーヌ」でした!
ジュナとチャンプに慰めてもらいます!←