名もなき毒/宮部 みゆき
¥1,890
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財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、私立探偵・北見のもとを訪れる。そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。


なるほど!こういうタイプの小説だったのね!

現代の犯罪をリアルに描いた作品。

ミステリーだけど、「謎」を主としたミステリーではありません。

あらゆる毒をテーマに、現代社会の闇をひも解いていくような、そんな作品。


いくつかのエピソードで成り立つ本書ですが、一つの軸として語られる「トラブルメーカーのアルバイト女性」のエピソードがとても怖かった。

世の中には常人に理解し得ない人が存在することは確かです。

自分の不幸や苛立ちを、すべて他人のせいに出来る人。(そう出来れば自分は楽だとわかっていても、普通は出来ないことですよね)

自分を守るため、自分を正当化するために、嘘をぬり重ね、他人を攻撃して生きていく人。

作中のこの女性は心に「毒」を持っています。関わった人を侵していく毒。


もう一つの軸として語られる、連続無差別毒殺事件。こちらが本書で一番大きな流れでしょうか。

よくあるサスペンスのように、「毒殺事件の真相を追う!」という展開とは少し違います。

そこは大きな流れとして存在しますが、その流れは現実の事件との距離感に近い気がします。

犯人像しかり。動機しかり。解決に向かうスピードしかり。

とても現実に近いのに何故かリアリティがありません。最近は現実の事件にリアリティが欠如しているからかも知れません。理屈で説明がつかない、常識で考えても理解できない、そんな不気味さ。

ここにも「毒」が存在します。社会の持つ毒。


経済格差、生まれ持った気質。

様々な人間が存在し、ともに社会を形成している。そして、社会のあらゆるところに「毒」は潜んでいる。

淡々とした展開の中に著者からの熱いメッセージが込められた作品だな、と感じました。

最近の宮部さんらしい作品かな。謎ありきでないという意味で。



ではまた♪




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