プラナリア (文春文庫)/山本 文緒
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どうして私はこんなにひねくれているんだろう―。乳がんの手術以来、何もかも面倒くさく「社会復帰」に興味が持てない25歳の春香。恋人の神経を逆撫でし、親に八つ当たりをし、バイトを無断欠勤する自分に疲れ果てるが、出口は見えない。現代の"無職"をめぐる心模様を描いて共感を呼んだベストセラー短編集。直木賞受賞作品。


第124回直木賞受賞作です 本


ん~、すごい。うまい。

何がすごいかと言うと、こんなに嫌な女性を主人公にしたことがすごい。

そして、最後までそれを描ききったことがすごい。

救いようのない読後感・・・。


若くしてがんに侵され、手術により命は助かったものの、その後の治療による後遺症やメンタル面でのダメージを受けた女性。

周囲は心配し、気遣い、社会復帰ができるよう取り計らうのですが-。


もし自分が病気になったら・・・。きっと自暴自棄になることだってあるでしょう。

周囲の気遣いが、病気でない者の驕りだと思うこともあるのかも知れない。


でもなぁ・・・。読みながら怒りが湧き出るほど。共感はできないし、感情移入もできない。

逆に言えば、これだけ嫌悪感を抱かせる理由は、誰もが心の中に隠し持っている黒い部分を見せ付けられたからなのかも知れません。

読むときの心理状態でも受ける印象は違ってきそう。


憎たらしくとも、女性特有の心の闇を巧妙に描いているのです。

表題作以下、全5編。

何らかの形で社会から取り残されてしまった女性たちのお話です。



これだけ言いましたが、山本作品やっぱり好きです。

容赦なく書ききった小説にはとてもリアリティーがあります。

現実では前向きな心なくして、幸せがいつでも転がっているわけではないですもんね。



ではまた♪