地下街の雨 (集英社文庫)/宮部 みゆき
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花 収録作 花

≪地下街の雨≫ ≪決して見えない≫ ≪不文律≫ ≪混線≫ ≪勝ち逃げ≫ ≪ムクロバラ≫ ≪さよなら、キリハラさん≫ 全7編


≪地下街の雨≫

結婚式2週間前に婚約を破棄され、仕事も失い絶望の底にいた麻子。仕方なく始めたウエイトレスのバイト先に客として現れた女性と、徐々に言葉をかわすようになる。しかしその女性は次第に変貌していき・・・・・・!?


≪決して見えない≫

最終バスに乗り遅れ、駅前でタクシーを待つ新婚の三宅悦郎。タクシー乗り場には自分と背後の男性の2人きり。やがて2人の会話が始まるのだが・・・・・・。昔死んだ犬のことを語りだす男性だが、何か様子がおかしい。そして・・・・・。


≪不文律≫

埠頭から一家を乗せた車がダイビング-。事故なのか?無理心中なのか?インタビュー形式で語られる真相とは?


≪混線≫

毎晩妹にいたずら電話をかけてくるヤツがいる。僕は妹に代わり電話に出て陰湿な電話魔と対峙する-。そう、これが僕の仕事なのだ。


≪勝ち逃げ≫

伯母の勝子が亡くなった。4人兄弟の長女として、結婚もせずに教師として仕事に生きた女性。聡明な伯母だったが、姪である浩美とも他の身内ともあまり交流はなく、堅物というレッテルを貼られたまま死んでいった女性。ところが一通の手紙をマンションのポストで見つけたことから、隠された勝子の人生を知ることとなり・・・・・?


≪ムクロバラ≫

デカ長のもとへ新聞記事の切り抜きを片手に訪問する橋場。

「ムクロバラがまたやったじゃないですか」

毎回まったく関連性のない事件を指して、ムクロバラによる連続殺人だと言うのだ。

過去悲惨な事件に巻き込まれた橋場。なんとかそこから救い出そうとするデカ長であったが-。


≪さよなら、キリハラさん≫

電話、洗濯機、電子レンジ、そして話し声-。大杉家はたくさんの音に包まれるごく普通の家庭だった。ある日家族全員の耳が聞こえなくなるまでは。音がなくなった家族の前にキリハラと名乗る男が現れる。そして、壮大な計画を語り始めるのだが!?



表題作『地下街の雨』がとてもよかった。

「捨てる神あれば拾う神あり」-よくある言葉ですが、地下街の雨に例えた比喩はとても美しい。

ミステリー仕立てに(中盤はホラーにも似た怖さですが)なっていますが、恋愛小説としてもおもしろい。

人間悪いことばかりではないよなっ、としみじみさせられる作品。


『混線』はぞっとしました。とても怖い ウキャー!

いたずら電話撲滅になるのでは・・・・・と思うくらい、あの罰はキツイですねー。


『決して見えない』、『不文律』、『ムクロバラ』は、続きが気になる作品。


『勝ち逃げ』は、恋も知らずに生きてきたと思われた女性の、情熱的な一面にぐっときました。

人間、一つの顔だけで生きているわけではないんですよねー。


『さよなら、キリハラさん』、読後がとてもよかったです。

途中までの不思議さは、キリハラさんの説明の方が納得いくかも!?

意外な人物が物語の中心に絡んできて、心にぽっと感動が灯るような作品 ポッ