私が寝坊し息子の登校がぎりぎりになってしまい、息子はご飯も食べずに怒って行ってしまいました。
朝、すでに点滴は終了していたので、簡単な針で非ステロイド性消炎鎮痛剤・ステロイド剤の投与。視線・会話ともに問題なし。祖母は民謡教室に行き家には私と母だけになりました。
「○○(私の名前)、株券はそこ。家の登記簿はあっちだからね。」
そう言う母に、私は涙をこらえて背を向けながら「うん、分かった。」と言いました。
「○○、風邪ひいたんじゃない。大丈夫。」
と、言うので,
私は母が遺言のように書類の場所を言うことに悲しんでいるのに背中を向けていたため母は風邪と思ったようでした。
昨日の『死にたい』という言葉を思い出して一番辛いのは母なのに書類の場所やましてや娘をまだ気遣うしぐさに母親の偉大さを痛感せずにはいられませんでした。
久しぶりの入浴はあまり嬉しそうでなくしんどそうでした。
階段を這って上がる時も片足づつを上げてあげないと独力しては自分の足を持ち上げれなくなっていました。
昼間から点滴を開始しましたが全量は苦痛のようでした。夕方往診に来たS医師と今後の方針を話し合いました。
今の時点では、
・ 痛み止めの麻薬のパッチ〔体に貼るシール状の物〕は継続
・ 高カロリーの点滴も逆にしんどくさせるので量を減らす
・ 点滴の開始と終了時に非ステロイド性消炎鎮痛剤の使用
・ 抗精神病薬の使用の継続
・ ステロイドは増量する。
・ 疼痛コントロールが出来ない場合の他の指示も色々ともらう
・ 入浴OK
・ 会いたい人に会わせる
というものがおおまかな内容でした。
閉眼している母に向かってS医師は
「○○さん、血圧・脈はいいですからね。しっかりした娘さん二人がついているから言いたいことがあったら言うんですよ。もししんどかったら少し眠くする薬がありますから言って下さい。勝手にはしませんからね。」
一番大切なこと・・・・勝手にはしませんから・・・本人のことだから私達ではなく母の意向で薬を使用するということです。
本当に大切なことなのになかなか医療者達は患者には言えないのではないでしょうか。
主体は母だから当たり前のことですが私にはS医師がたくましく思えました。
帰り母のいないところで、『死の前後の患者さんの状態とその対処法』という用紙を手渡されました。
《死が切迫した時の兆候》、《実際に死が訪れた時の兆候》、《亡くなられたと考えられる時の対処》
そして『大切なのはほとんどの変化が死に至る自然の経過であり、ご本人にとっても苦痛な事ではないとおいうことです。』と書かれていました。
とうとうもらったか・・・私の持っていた本にも書かれていた内容でした。確かに医療従事者でなければ死を迎える兆候や亡くなった時の対処などは慣れていません。こういう用紙が必要でしょう。
しかしそういうことよりも私はもらったことが悲しく記録ファイルの一番後ろにしまいました。
この日も22時に息子が寝ぼけて怒り牛乳を飲ませて落ち着かせました。もう息子も3ヶ月近くなるる在宅ホスピスに強いストレスを感じているのだと思いました。
でもお母さん、死んでほしくない・・・
※母の主治医だったS医師のホームページでこのブログが紹介されました。
有難うございます
http://www.homehospice-sekimoto.com/