平成15年1月24日、いつも内服していたフェンタ二―ル(麻薬、実際は注射薬だが飲み薬としても効果があるため使用。外国ではキャンデーのような内服薬ができているが日本ではまだまだ発売されないようだ!)の1回量では効果が出なくなりました。先生に確認すると、今内服している量は手に付けているパッチからすると、かなり少ないから2倍から3倍量を試しても良いという事でした。その後時間をおいて、3倍量と2倍量を一回ずつ内服したのです。その日は私の幼なじみの友達のお母さんが、お見舞いに来てくれました。その間はそれほど変わりなく過ごしていました。夕方の5時頃に帰られたので、それから入浴になりました。いつもなら、用心して湯船につかる母が今日は10分以上つかるのです。「お母さん、もう上がる?」と聞いても「うん」と言うのにまたそのままつかるのです。ようやく上がりベッドに戻りましたがすぐ寝てしまいました。

 暫くして「お母さん、大丈夫?」と聞いても「あっ、お風呂に入ろか。」と言います。この時点で何か変だと感じました。早めに仮眠して起きておかないと何か起こるかも?と思ったのです10時からの点滴も声掛けしてから針刺しまで20分掛かりました。仰向けになってくれないと針が刺せないのですが、いくら声掛けしても頷くのですがそれからが進まないのです。

 12時のトイレまで寝ようと、私は3階で寝ていました。暫くすると、「○○~」、「○○~」と声が聞こえ私は慌てて2階に走りました。母がトイレの前でしゃがみこんでいました。「○○、苦しい。立てない。」というので、手伝って立たそうとするのですが、「待って、待って。」を繰り返し、顔を俯かせてしまうのです。こちらがきつい口調で言っても、母が混乱する可能性があると思いました。脈拍はいつもより少し速いぐらいだったので緊急性はないと判断し、立たせるタイミングを図りました。その内も排ガスと便が漏れます。母も分かっているのですが、また意識が遠のくのです。30分してやっと立ちトイレに座れました。でも、いつもウォシュレットをする母が用を足してもただ座っているだけです。紙を切り「お母さん、紙で拭こうか?」と、聞いても私が持っている紙を見ながら、新しい紙をロールから切ろうとします。なんとか拭き部屋に戻りました。

 1時間ほどすると、急に「トイレ、便」と言ってベッドに起き上がりました。「トイレね」と、聞くと頷くのですが目が座り一点を見つめ続けるのです。言われたことが理解してなくただ頷くだけでした。暫くすると、横になってしまいました。二分ほどしたら「トイレ」と言いまた起きあがります。明け方まで、こんな事を繰り返しました。やっと、朝になって少し会話が出来るようになりましたが、口と足の痺れが出てきました。

 朝を待ってS先生に電話し、落ち着かせる薬を夜に内服したほうが良いということになりH看護師が届けてくれました。患者にとって適量でも実際使用しないと分からないと思いました。母は全然覚えてなく安心しました。覚えていると、私に申しわけない気持ちを持つからです。このまま、入院になったら、母がしんどいかもしれないと思いながら、入院はもう数日に迫っていました。



関本 雅子
在宅ホスピスハンドブック