リトル下北 | カシラ日記

リトル下北

■子供の頃実家があった経堂から下北沢までは、今だったらジョギングでも軽く走ってけるくらいの距離だけど、半径300mで暮らす子供にしてみたらちょっとした冒険の距離だったし、ちょっとした都会に出る感じだった。確か、友達とケンカして何かムシャクシャして、チャリンコでふらふらたどり着いたのが初めてだったと思う。模型専門店のサニーも、レンタルビデオ屋のドラマも、下北に行かないと無かった。特にレンタルビデオ屋はその頃出来はじめで、ビデオによって値段が変わって、最新作800円とかで、今の感覚だと1500円くらいかな、ムチャクチャ高いからなかなか借りられなかったけど、特撮SF雑誌の宇宙船を愛読してるようなオタクの子供にしたら、本の中でしか見たことなかった映画の現物が観れる!!って、とてもコーフンする場所だった。ある時、特撮コーナーの前で、いいなー、いいなーっていつものようにコーフンしてたら、おじさんに肩叩かれて、入り口の方に手招きされた。??ってなった後、特撮コーナーの横がAVコーナーだったから、ああ。。怒られんのかな。。。ってビクビク出てったら、おじさんはチョコを差し出して、俺の耳元で「ねえ、オシリ見せてくれない?」とささやいた。なっ、なっ、ナンデスカァーッって、パニクって大声出したらおじさんはオドオドにやけながら去ってった。その頃俺、クリクリ天パーの美少年だったから。色んな人がコーフンしてた場所。今はサニーも小さくなって、当時のドラマはUFOキャッチャー屋になってる。







あと、子供はあちこちでコーフンしてた。小田急の踏み切りのあたりに古紙回収所があって、エロ本が山積みになってるのを発見した。なかなか手が出せなかったけど、周りに人通りが全くないチャンスがあって、今だ!!ってバーッて、瞬間で吟味したエロ本をズボンの中突っ込んで、踏み切り待ちながらウハウハしてたら、横に来たおばさんに「ちょっと僕、今ナニ持ってったの!?おばさん見てたわよ。返して来なさい!!」って怒られてビックゥーッってなって、その後どうしたかは記憶に無い。竜ちゃんみたいにエロ本叩きつけて逆ギレしたのかな。多分半ベソかきながら返して来たと思う。ここも、跡形も無いなー。









学生の頃に酒飲むのもたいてい下北だった。大学は八王子にあったのに、わざわざみんなで下北まで出てたな。繁華街から外れた踏み切り沿いのひとりっこは、当時にしてはちょっとシャレた感じで、マイヤーズとか安く飲ましてくれたから良く行ってた。ある時、隣で当時有名なバンドのドラマーの人が飲んでて、そしてその頃、キンタマ握って伸ばしてマイク代わりにして歌う、ってのが俺の中で流行ってたんだな。スンゴい伸びたんだよ。伸びた上に、顔が映るくらいにピッカピカに光って。さすがにお店でそんなことしたら怒られる、程度の常識はあったけども、タマタマそのキンタマイクシーンの写真を持ってて、件のドラマーの方に、「あの、見ていただきたいものがあるんですが。。。」って写真を差し出した。ドラマーの方は怒りを押し殺しつつも、「キミね、失礼やから」って紳士的にたしなめたんだけれども、連れの女性が激怒して、「オメーラバカヤロー!!とっとと出てけー!!!!!」って叩きだされた。タイムマシンがあれば本当に、写真出した瞬間にアタマ叩きつけて土下座させたい気持ちです。申し訳ありませんでした!!!








そして時が進んで下北に店出して、細っーい階段の上の店。ここにいたのは都合三年くらいなんだけど、世紀末の世間がデタラメだった時代とリンクして、ちょっともうホントどーかしてるくらいデタラメに濃密で、三十年くらいいた気分。






若い友達が田舎に帰るかどーするかって、相談に来てたとき、ジョーさんって、ガリガリにシャープだったシャブ中のおやじが、「店長久しぶり!!ワシ、精神病院入れられてましたんや!!けど、こんなキチガイばっかんとこ入ってられるかー!!って今出てきましたんやー!!」って、上下真っ赤のジャージでブックブクに太ってて、シャブ中サンタみたいになってんのが入ってきたとこに、何でか別件できちんとした身なりの怖い人たちが「マトリの者ですがお話しが」って手帳見せながら入ってきて、あーもーっ!!なんなんだよ!!!ってなったりとか。ああ、これは一番街のお店んときかも。一番街のお店は、ウチが出たあと何代か入れ替わって、今は何かのタタリみたく木が生えてる。








そうそう、一番街店の前は広い駐車場で、店は狭くて気が詰まるから、よくそこでぼんやりしてたんだけど、一度ここでハメ撮りの撮影してて、えーっ、ここでー!!どんだけー!!って、イッコーさんになったことがあった。あーゆーとき、どんな態度取ればいいんだろね。声援送ればいいのかな。でもその場合、紅組白組どっちを応援するかという問題もあるしね。っと、えーとなんでしたっけ、センチメンタル旅をしてみると、たいていの物は無くなってるけど、新陳代謝して、どんどん栄えてるって話?久々に週末昼の下北行ってみたけど、ビックリするくらい人がうなってた。







■しまおまほさんの「マイ・リトル・世田谷」すぐ読んじゃうのもったいないから、ボロいPCの立ち上がりに10分くらいかかるので、朝出勤してPC動くまでに一話ずつって感じでゆっくり読んでたの、ついに読み終わっちゃってさびしい。世代は若干俺のが上だけど、地元の駅は一駅違いだし、高校一緒だし、ああー、この感じ、って重なる部分が多々あり、甘酸な話もすごくイイんだけど、えっ、これで終わり?ってバツッて終わる話も味わい深くてとても良く、いい本でした。新刊はいつになるか、楽しみであります。



マイ・リトル・世田谷 (SPACE SHOWER BOOKs)/スペースシャワーネットワーク