私自身に起きた、死産までの記録になります。

似たような症状だからといって、同じ結果になるとは限りません。

妊娠中の方は不安になるかもしれまん。

また、辛い内容が含まれています。

天使ママさんは辛い記憶を呼び起こしてしまうかもしれません。

 

ご注意願います。

 

クローバー

 

絨毛膜下血腫と子宮内感染による切迫流産で入院。

感染症は少しずつ良くなってきていましたが、突然呼ばれた診察に異変を感じ取りました。

 

振り返り記録、前回の記事

右矢印⑯ただの妊婦検診じゃない

 

死産までの振り返りまとめはこちら

右矢印◆◇死産までの振り返り◇◆

 

 

ヒマワリ ヒマワリ ヒマワリ ヒマワリ ヒマワリ

 

【7月6日(木)】

【17週3日】

 

不安な表情を浮かべる私に対して、I先生が言った。

 

 I「ごめんなさいね、こっちでごちゃごちゃ話していて。後でちゃんとお話しするんで。」

 

何かが起きている…。

5~6枚エコー写真を撮り、先生が説明を始めた。

 

I「今診ていたのは、羊水の量が入院時より少なくなってきているんですね。今、赤ちゃんは子宮の中で少し窮屈になっているのかもしれません。」

 

 

羊水の量?

入院する時の診察では「正常」って言ってたのに…

 

 

I「このままだと陣痛が起きて、赤ちゃんは外に出てきてしまうかもしれません。」

 

 

胸の奥をぎゅっと掴まれた。

 

 

I「羊水は赤ちゃんのおしっこから出来ているんですね。

羊水の量が減る原因としては、破水があるのですが、破水をしている様子はないので、赤ちゃんがおしっこをできなくなっているのかもしれません。」

 

「炎症は…関係しているんですか…?」

 

I「もしかしたら関係しているかもしれません。」

 

「炎症が治まれば、羊水は増えるんですか…?」

 

I「炎症が治まったからといって、今の状態が改善されるといったものでもありません。」

 

 

頭の思考がゆっくりになっていく。

うまく状況を処理できない。

でも先生は話を続ける。

 

 

I「これは何をしたら良くなる、といったものはないんです。」

 

 

何もできることはないの・・・?

 

待って待って。

なんでそんなことになってるの?

 

 

頭が追い付かない。

 

 

でも、きっと助けられる方法はあるはずだ…

 

 

「22週を超えれば、助けられるんですか…?」

 

I「22週を超えると、医療処置が行えるようになるというだけであって、助けられるわけではないんです。

22週未満で赤ちゃんが出てきてしまったら、それは死産になります。」

 

 

それは、ピヨちゃんはもう助からないって言っているの?

 

 

I「こんな風に私たちが心配していても、元気な赤ちゃんを産んでいる人はいるんですけどね。なので今の段階ではまだ何とも言えないんですが。」

 

 

そうだ、まだ諦めちゃいけない。

 

 

「今の時点で、赤ちゃんに問題はあるんですか?」

 

震えそうになる声を絞り出した。

 

 

ピヨちゃんは、今までどんなに出血してもどんなにお腹が痛くても、しっかり成長してきた。

今回もきっと「赤ちゃんは大丈夫です。元気です。」そう言ってもらえるはずだ!

 

 

しかし、先生の答えは私の頭に更に打撃を加えた。

 

 

I「頭の大きさが少し小さいです。」

 

「・・・・・。」

 

言葉が何も出てこない。

 

16週を超えると、赤ちゃんの大きさは頭、腰回り、大腿部で計る。

この時のエコーでは頭の大きさしか計れなかったのだが、相当週数が2週間程遅れているのだという。

 

つまり、成長が止まっている、と。

 

 

足が震えてきた。

目の奥が熱い。

 

 

泣くな、お母さんなんだから!

しっかりしろ!

 

 

I「他に、何かありますか?」

 

もうひとつ気になっていたこと。

先生が脳のエコーを見て「確かに」と言ったこと。

 

 

怖い。

でも訊かないと。

 

 

「脳…とかは問題ないですか…?」

 

I「脳室が少し大きいように見えるんです。」

 

脳室。脳内にある髄液の流れる空間。

 

「大きくなると…どうなるんですか…?」

 

I「大きくなると、水頭症になる可能性があります。」

 

 

スイトウショウ…

聞いた事がある。

命にかかわる、もしくは重度な障害のある症状だったはず・・・

 

 

次から次へと出てくる話に、頭がくらくらしてくる。

 

 

I「でも今の週数ではまだはっきりとは言えなくて…そう見えるだけかもしれません。」

 

「あの…明日、母親学級があって…。」

 

I「それは行っても大丈夫ですよ。何をしたら良くなるとか、何をしたらダメというものでもないので。

気晴らしにもなると思うので。」

 

 

気晴らし・・・?

何もトラブルのない順調な妊婦達に混ざって・・・?

その中で私は笑っていられるの?

楽しみなことがたくさんの人達と一緒に、この先の妊娠生活を見据えられる?

 

 

I「旦那さんにも一度お話した方が良いと思うんですが、来れそうですか?」

 

「ちょっと相談してみます…。」

 

 

I「ごめんなさいね。突然こんな話をしてしまって。

良い話が何もできないんですけど…。

でもEMiさんには話しておかなければならないことなので。」

 

再び先生は柔らかく笑う。

 

涙が溢れそうになる。

でも泣いてはいけないと思った。

 

 

私はピヨちゃんのお母さんなんだから。

私がしっかりしないでどうするんだ。

 

 

「いえ、お話して頂きありがとうございます。」

 

笑顔で診察室を後にした。

 

 

 

病室に戻ると姉が待っていた。

 

「診察どうだった?新しいエコー写真もらった?」

 

わくわくしながら身を乗り出してきた。

もらったエコー写真は私たちが見てもよく分からないものだった。

 

「これどこが頭?」

 

「よくわかんない…」

 

どこまで話していいんだろう…

 

「羊水が少なくなってるみたいで…あんまりよくないみたい…。」

 

それだけ伝えるのが精いっぱいだった。

 

「えー。羊水足せないの?」

 

「無理だと思う…。」

 

 

その後はどんな会話をしていたか覚えていない。

泣いちゃだめ。

笑わなきゃ。

それだけを思い、時間が過ぎるのを待った。

 

 

「じゃぁ、帰るね。」

 

姉に笑顔で手を振った。

姉がカーテンの向こうに消えた瞬間、涙がどっと溢れた。

 

 

どうして?

なんで?

どうしてこんなことになっちゃったの?!

なんで一気にこんなことが・・・!

 

元気に動いていたのに・・・

何度も心音聞いたのに・・・

炎症が治まれば退院できると思っていたのに・・・!

 

 

すると、帰ったはずの姉が戻ってきた。

 

「やっぱり泣いてる…。

びっくりしちゃったんだよね。大丈夫だから。泣いたら落ち着こうね。」

 

我慢してたのに…

見られちゃった…

 

「う…うぅ…」

 

姉に頭を撫でられて、漏れる声を抑えられなかった。

 

 

隣の個室では、さっき産まれたばかりの赤ちゃんとお父さんが対面していた。

看護師さんの明るく晴れやかな声。

 

 

「おめでとうございます~!元気な女の子ですよ~!

はじめまして~!お父さんですよ~!!」

 

 

母子同室の部屋から響く、赤ちゃん達のか細く愛らしい泣き声。

 

 

 

とてもとても遠くに聞こえた。

 

 

ヒマワリ ヒマワリ ヒマワリ ヒマワリ ヒマワリ 

 

 

ピヨちゃん

 

お母さんのお腹の中、少し狭くなっちゃったね。

 

でも、それでも

 

お母さんのお腹の中にずっといてくれたのは

 

ピヨちゃんも離れたくなかったのかな?

 

離れたくなかったよ。

 

ずっと一緒にいたかったよ。

 

 

ヒマワリ ヒマワリ ヒマワリ ヒマワリ ヒマワリ

 

右矢印⑱宣告、流産・死産になりますへ続く。