「幸せになれる階段があるんだよ」と おばあちゃんは言った。

「幸せになれる階段があるんだよ」と
おばあちゃんは言った。
誰よりも早く見つけたくて
必死に探して、歩いた。
世界中のあちこちを。
色んな階段をのぼった。
走ってのぼったけど
幸せはどこにもなかったよ。
探しても
探しても
見つからなくて、
途方にくれて、探すのをやめた。
疲れちゃったから
大きな木の下で、休むことにした。
さらさらと、優しい風がやってきて
気持ちよくなって、静かに目を閉じた。
何時間たったのかな。
ボクの心の中に
降りていく階段を見つけた。
トコトコ降りていくと
色んなことを想いだした。
5歳の時、寝る前に読んでもらった物語
つまらないことでケンカした友達のこと
初恋のあの子のこと
お父さんとお母さんの結婚式のこと
(ボクは生まれていなかったけどね
上の方から見てたんだ)
色んなことを想いだしていくうちに
ボクは「帰ろう!」と思い
目を開いて、すぐに立ち上がり走った。
そうだな、帰ったらまず
押入れから物語を引っ張り出そう!
ああ、それから友達にはボクから謝ろう。
ちょっと悔しいけど、大好きだからね。
それと初恋の子に、電話だ!
後悔はしたくない。ボクは男の子だ。
それから、それから、
お父さんとお母さんに何かプレゼントを!
結婚記念日には、まだ早いけど。
走って帰る中、ポンポンと
やりたいことが思い浮かんできた。
幸せの階段探しに夢中で、周りのこと
すっかり忘れてたや。
家の玄関につくと、おばあちゃんが
出迎えてくれた。
「そろそろ、帰ってくると思ってたわ」
「もう、クタクタだよ。おばあちゃん」
家の中に入ると、暖かいスープが机の上にあった。
「それで、幸せの階段は見つかったのかい?」
「階段はあったけど、幸せは分かんなかったよ。
あ、それよりボク忙しいんだ!
やることが一杯なんだ」
スープを一口飲んで、急いで2階に駆け上がった。
おばあちゃんは、嬉しそうに微笑んでいた。
お父さんとお母さんへのプレゼントは
手紙にすることにした。
2人の喜ぶ顔を想像すると、胸が暖かくなった。
その時、おばあちゃんの声が
「お~い、友達が遊びに来たよ~」
え!?まさか・・・
階段を下りて玄関に行くと、ケンカした友達がいた。
「あ、あの・・・」
「ねぇ、外に遊びにいこう!」
「え、う、うん!」
ボクは友達の手を引っ張って、外に出た。
ボクらが見た空は、
どこまで、続いているよう晴れ晴れとしていた。
おばあちゃん
幸せって何か、分からなかったけどさ
友達の、家族の笑顔が見れて
ボクは嬉しくてたまらないよ。
これを幸せっていうのかな?
end...