ライヴ限定サンドイッチ、試作中。
料理長 ロバート・デニ郎は、今日も朝から中指サイズのサンドイッチ試作で味見を繰り返す。
アヤマチは繰り返される。
人は、悪い癖を繰り返す。
おれは恋愛を、繰り返す。
不正選挙は繰り返される。
政治家は悪事を繰り返す。
警察もインチキ繰り返す。
ふと思う。
世の中デタラメだらけなんだから、おれもそろそろ多数派に寝返って金儲けに励む方が楽なんじゃないのかと。
もうひとりの自分がそれを制して言う、なんのために今までブルレコ作って来たんだ?楽とか金じゃないだろう?それにどうせ、生き方変えられないだろう、と。
ハートブレイクホテルにようこそ。
今日も3階の11号室で待っている。
キミから届いた、ごめんなさい、ライヴには行けませんの文字を思い出しながら、待っている。
楽になった時、おれは大人らしい安定を得て、もっと大事なものは全て失うと自分に言い聞かせながら待っている。
ディープ・ソウル
本日、初めてのチャレンジは、菜の花のわさび和え、豚ステーキとそのソース作り。
白菜ロールはイタリアン・シェフの田川さんが、後は煮込むだけ、というところまで作ってくれ、夢君のお弁当作りのカウントダウンにぼくのソウルも入れてください、と、熱いソウルごと持って来てくれたものだ。
遠い昔、ソウルミュージックには骨の芯まで焦がされた。ゴスペルとブルーズから発展した音楽だ。
ミシシッピで生まれたサム・クックにゃ、イカされた。
彼が'64年にリリースした「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」は去年のぼくのソウルソングだった。
転機は来る!、と信じ、厨房に立ったり、街から街へとブルレコを配りに行った。
'64年の12月、彼はサウスセントラルのモーテルで射殺された。
事件には加害者を保護するもっともらしい理由や証言が付けられたが、あまりにも金持ちになりすぎた彼は嵌められたに違いない、ってぼくは思ってる。
みなさんにはもうそろそろ感じてもらいたい、ロバート・デニ郎ってもしかして、音楽記事が書けるのかな?!、もしかして、ブルーズとかロックとか色々書いて来た人なんじゃないのかな?!、って。
そんときおれはこう答える。
書けん。って。
ハートブレイクホテルにようこそ。
今夜も3階の11号室で待っている。
ディープ・ソウル(Deep Soul)っていうジャンルの音楽を知ってるか?
オーティス・レイ・レディング・ジュニアっていうシンガーを知っているか?
彼が死ぬ三日前に録音した「ドック・オブ・ベイ」【(Sittin' on)The Dock of the Bay】って曲を知っているか?
昔、レコードで買いに行った。
今はスーパーで、野菜を買ってる。
初めてのナムル
胡麻油を手に入れた料理長 ロバート・デニ郎は、今朝もチャレンジしてみた、人生初のナムル作りに。
作りながら食べてみた。
ピントの合ってない味だった。
バジルとパプリカをかけてみた。
美味しくなった。しかし、それはもうナムルじゃなく、別のなにかになっていた。
人生には、そういうことがよくある。
ミュージシャンになるつもりで家を出たのに、原宿の歩行者天国で孤独を痛感し、家具のないアパートでふるさとの風景を思い出しながら、便箋にサヨウナラと書いて、好きな子のアパートのポストに入れにゆき、それからもう三十年も経ったのに、その子の着ていたスタジャンの袖の汚れを思い出しながら、夜中に原稿を書いている。
気がつくと、ぼくは別の者になっていた。
そして歌の歌詞を書く。
吹く風が
頬を切る
狭い街で
キミと出会った
キミは白い
clapのパーカー
安いスタジャンがいつの間にかパーカーになっていた。
いつしか、その子の顔すら他の子の顔にすり変わっていたりもする。
人間の脳って、いったい、どうなってんだ。。。
おれはほんとに、ヒロミGOなのか?!
ハートブレイクホテルにようこそ。
今日も3階の11号室で待っている。
本日、詩人は、詩人に会いに行く。
彼に、ブルレコに詩を連載してほしい、って頼みに行く。
彼の詩は、一度耳にしただけではよく意味がわからない。
こんな明確な時代に、意味のわからないことに、持てる情熱の全てを注ぎ込んでいる人は凄い。
そういう人の生き方には、意味がある。