2009-10-02 01:36:24

SYUN-001 『OOPARTS』旬:ライナーノーツ。

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技法の化石・オーパーツ『旬』



旬を過ぎてしまった音楽達がここに在る。


私が1983年あたりから、ぼちぼち動かし始めたグループ?『旬』の生み出す音楽は文字通り、時期を過ぎてしまえば何でもないものになってしまうものだった。
というのも、『旬』とは、単なる技法のための音楽を試作し、そこから生まれる目新しさや、ショックを追求するだけのもので、いずれテクノロジーの進歩によって、誰もがその手法を使い始めるまでの命だったのだ。
『旬』が、目新しさやショックを生み出すにあたって中心となった技法とは、勿論サンプリングのことだ。

しかし、活動を始めた当初、私はサンプリング・マシンを所有していたわけではない。
当時サンプリング・マシンは、郊外に一戸建てが買えるくらいの高価なものだった。
『旬』を聴いた某音楽誌の編集者達は、『平沢は宝クジを当てたらしい』と噂したものだった。
勿論、私にそんな財力があったわけでもなく、宝クジに当たったわけでもない。
まして、借金して買う程のオタクでもない。
『旬』のサンプリング・サウンドの正体は、自作の“ヘブナイザー”という、ループ・テープをシンセサイザーの鍵盤で発音させる機械と、安価なデジタル・ディレイ・マシンの誤用だった。
これらの機械は、とても不便で幼稚な代用品として、高価なサンプリング・マシンの仕事を良く真似てくれた。

私は、当時の売り文句であった、『とてもリアルなシンセサイザー』というサンプリング・マシンの概念よりも、『もしかしたら、音楽編集機かもしれない』という性格を誇張するために、その代用品を働かせた。
あらゆる雑音を音楽へと編集する事に好奇心をそそいだ。
結果、聞けたもんじゃないグチャグチャな騒音から、聴いたこともないような音楽、単なる普通の音楽等ができあがった。
こうして生まれたのが『旬』だった。

『旬』の中にある技法のほとんどが、現在ではサンプリングの様式化されたスタイルとして、いろいろな音楽の中に聴くことができる。
だからと言って、別に皆が『旬』のマネをしたわけではない。
本物のサンプリング・マシンを手にすれば、いずれは誰でも思いつくようなことだからだ。
こんなふうに『旬』は、はかないものとして作られたのだった。

そして今、私は赤面している。
サンプリング・マシンが普及し、耳慣れた現在、こうして『旬』を聴きかえしてみると、あまりに安易なやり口に腰を抜かしてしまう。
新しくもなければ、ショックでもない。
ただ粗雑な編集と、劣悪な録音状態が聴けるのみだ。
それでもこのCDに何らかの価値をこじつけるなら、せめてオーパーツとでも呼んでみるしかないだろう。
オーパーツというのは、数万年前の地層から発掘された、当時あるはずのない歯車や、乾電池などの化石のことをいう。
10年以上昔の遺跡から発掘された、当時あるはずのないサンプリング音楽・・・。  へぇー。



尚、旬のメンバーとしてクレジットされている人達の中には、10年もたって再び迷惑だと思っている人がいるかもしれない。
なぜなら、たまたまスタジオにいただけで、メンバーとしてクレジットされてしまった人達がいるからだ。
再びどうもすいません。
でも、雰囲気は重要だったんだ。



平沢進
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コメント

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1 ■無題

平沢さんは本当に先駆者というか科学者というかオタクというか・・・(笑)
いろんな意味でスゴイ人ですね。

2 ■無題

「へぇーそうなのですか・・・」としか言えません。
技法の化石とかオーパーツとかワクワクするような言葉です。
音楽はどうなのでしょう?
余裕ができたら買って聴いてみたいです。

3 ■>めいめいさん

コメントありがとうございます。

発想がノンミュージシャンなんですよね。
この辺がYMOの面々との大きな違いかな?とも思ってます。

4 ■>えふさん

コメントありがとうございます。

サンプリング・ミュージックですから、初期art of noiseに近い音といえばいいんでしょうか。
art~より変な曲ばかりですけど。

平沢さんは謙遜されてますが、やはり質は高いですよ。

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