森の奥まで月の神様と王女様は歩いてきました。動物たちも少しですが起きていました。ライオンが話しかけてきます。月の神様が王女様の耳にも分かるように魔法の力を使いました。

「聞こえるかい、若い王女さま」
「まぁ!本当にライオンの声が聞こえるわ。初めまして。ライオンさん」
「初めまして、王女様。月の神様も久々だね」
「そうですね、ご無沙汰しています」
このライオンは長生きで森の長老ともいうべき存在です。ライオンが一声うなると、森中がざわざわ。色々な動物たちが森の奥までやってきました。
「まぁ、こんなに沢山の動物さんがいるのですね」
「ここは住民が多いんだよ、王女様。儂らからも祝福を送るよ、月の神様、王女様。おめでとう」
ライオンがちらりと目をやると梟が飛んできました。嘴には青い石のネックレスを二つ、持っていました。妖精が囁きます。
「お二人にとおもって私たちが作ったんだよ」
「妖精と動物の加護があるモノだよ」
「素敵。そんな大切なものを頂いていいのかしら?」
月の神様に視線をやり、王女様は尋ねました。回答はすぐきました。
「有難く頂いておきましょう、王女様」
お揃いになっているのが二人には非常に嬉しく、森の全ての生き物や妖精たちにお礼をいいました。それを聞いて皆も嬉しそうにしています。
素直な性格のせいか、王女様はどなたにも慕われるようですし、好感をもたれるようです。動物たちの中で王女様の肩に乗っているのは栗鼠でした。小鳥もそばにいます。

皆にお礼をさせてね、と王女様は話し、歌を歌い始めました。非常に澄んだ歌声で、月の神様は目を閉じて聞きました。最初に王女様に関心を持つようになったのは澄んだ歌声だったのです。神へ捧げる祈りの歌が非常に素晴らしく、そのあとずっと成長を見守ってきました。

やはり私が愛するのは、この人しかいない。そう月の神様は確信しました。星の神様にもいずれ会わせようと考えていました。その時は太陽の神様も呼ばなくてはなりません。ついでにもう縁談はいりませんと言っておかないといけませんね、と月の神様は心の中で呟きました。

王女様の歌が終り、妖精も動物も喜んでいます。この歌は皆に最高最善の事が起こりますようにと言う祈りの歌でした。月の神様は微笑しました。皆に最高最善の素敵な事をおくらなければなりませんね、と心の中で思いました。

「歌を歌うのは好きですか?」
「ええ、私は歌が大好き。ダンスより歌の方が好きですわ」
「今度色々な歌を聞かせて下さいね」
「ええ、勿論です」
王女様の微笑みに月の神様の心が揺れます。余りにも純粋であたたかいものだったからです。どんどん王女さまに惹かれていく自分を感じました。
「私はあなたの歌を全部聞きたいですね。いつか色々な歌を歌って下さい」
「はい。勿論ですわ」

<次回へ続く>
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この所忙しかったので更新がなかなかできませんでした。では本編をどうぞ。


森の妖精が二人に近づいてきました。姿は、小さな羽のある小人さんでした。
「こんばんは」
月の神様が声をかけました。
「こんばんは、月の神様」
妖精たちはお行儀よく挨拶し、興味津々といったまなざしで王女様を見つめました。
「初めまして」
「王女様お久しぶりです、昔王宮にいたんですよ」
年かさの妖精が話しかけました。この妖精はあちこち出歩き、見聞豊かな者でした。
「王女様だー」
幼い年齢からティーンエイジャーまで色々な妖精が揃っています。

「月の神様に恋人ができたと噂がここまで流れていますよ」
「ええ、そうなんです。王女さまとお付き合いしています」
「宜しくお願いいたしますね」
妖精たちは羽を広げてダンスでお祝いしてくれました。その様子の愛らしいことといったら!本当に可愛いのです。

月の神様は森の奥へと王女様を誘いました。
昼間とは全然違う森の様子に王女様は戸惑いました。
でも……なにかが楽しそう!新鮮ですしワクワクします。
森のどこかで梟が鳴いています。すっかり夜だということを忘れてしまいそうです。
「意外と賑やかなんですね」
「夜のみ起きる生物もいますからね」
森のおくには腰掛けられる場所があるので、二人はどんどん歩いて行きます。
普通だったら来れないでしょうけれど、月の神様が一緒というだけで王女様は心が躍るような感じを受けました。涼やかな瞳が神秘的な月の神様、また一つ好きなポイントが増えていくようでした。

<次に続く>
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湖畔はとても静かでした。二人は水面を見つめていました。
「本当に水が綺麗なこの湖、昔から変わらないのですよ」
「透き通るような感じが素敵ですよね」
王女様が湖を覗きます。隣には月の神様が立ちました。
魚も住んでいるようで時折ぽちゃんという音がします。それ以外は特に音もせず、静かな森の中でした。梟の鳴く声がします。
「梟も可愛い声ですね。私、鳥が好きなんですよ」
「梟はとても賢いですよ。今度梟の置物かなにかをみつくろってきます」
「まぁ、指輪だけで十分ですのに」
「私が贈りたいのです」
微笑する月の神様をみて、王女様も微笑みました。
「私から何かお贈りしても構いませんか?」
「勿論です」
人間から貰う事を禁止する決まりは神様にはありませんでしたから、月の神様はワクワクとしながら尋ねました。
「どんなものなんですか?」
「沢山贈りたい物はあるのですが、指輪のお返しに小さな剣をと思います。ペーパーナイフとして使えそうな物を探しています」
「それは素敵ですね。その時がきたら有難く頂戴致します」
この国では指輪のお返しは剣と決まっていました。小刀や戦士が使うような剣までなんでもいいのです。ペーパーナイフを贈る女性も多いです。王女様は自分の持っているペーパーナイフと対になるような品を探していました。握る部分に木の葉の化石が組み込まれたものです。王女様のお気に入りの品でした。
「私のペーパーナイフと対になりそうな物を探していますの」
「そうでしたか、それは嬉しいですね。楽しみにしています」
しばらく湖を眺めていた二人でしたが、どちらからともなく座りませんかとなり、景色の良い場所に移動して周囲の風景を楽しみました。王女様は来た事がない場所だったので、本当にここに来るのを楽しみにしていたのです。
ちらっと森の方に光る何かが見えました。
「月の神様、向こうにきらきら光るなにかが見えていますわ、あれはなんでしょう?」
王女様の視線の先を月の神様はみました。小さな光がいくつか見えます。
「小さな森の妖精ですよ。好奇心旺盛なので近づいてきたみたいですね。普段は森の奥にしかいないのです」
続けて月の神様は言いました。
「やはりあなたの瞳は普通の人には見えないものをうつすようになってきたようですね。クレアボヤンスが成長しているのでしょう」
「そうなんですか?この力が上がるとどうなるのですか?」
「この世ならざる存在を見る事ができるようになります。慣れれば意志の力でオン・オフできますから四六時中みえると言うことになりませんよ、安心して下さい」
王女様はほっとしました。死者の霊魂などを見る事になるのが怖かったからです。よくよく話を聞いていると、自分で視える者を決められるとのことでした。ポジティブな光の存在だけ見る事に当面はしておき、神官として修行を始めたら死者の霊魂を見るようにと勧められました。
神官で死者の霊魂がみれないと確かに困るので、それには頷けます。
「少しホッとしましたわ。やはり死者の霊魂はなんとなく怖いですもの」
「救いを求めている場合もあれば、怨念を残している場合もあるので、みやみやたらに視ないことも大事ですね。見えても素知らぬふりをするのもアリですよ」
「視えていないフリをするんですの?」
「そうです」
しばらく月の神様の教えを聞き、頭の中で王女様は整頓しました。すんなりと頭に入るのは月の神様の説明が上手だからでしょう。勿論王女様の理解力も必要ですが。
「良く理解することができましたわ、有難うございます」
「どういたしまして」
月の神様が手を差し出しました。
「折角だから森を見ていきませんか」
「そうですね。妖精さんまだ起きているかしら……?」
「多分起きていると思いますよ、では行きましょう」
二人は湖畔から森へと移動していきました。この先に森の妖精がいるのかと思うと、それだけで王女様は楽しみになりました。

<次回へ続く>
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夜空の星々は美しく、時折流星が流れます。月の神様の端整な横顔をみて王女様は少しどきどきしました。今までは神様という視点で見ていたので気にならなかったのですが、よくよく見るとすごく格好いいことに気がついたのです。
「月の神様はとても格好いいのですね。ちょっと見とれてしまいました」
「そんなことないですよ。あなたの方が素敵ですよ。みていると幸せに思いますし、こうして一緒にいるだけでとても幸せなのです」
月の神様の恋人の噂は神様の世界でも広まっていました。星の神様にはすぐ話しました。何事も大げさに喜びたがる太陽の神様には言い出しにくかったのですが、一応話しました。女神や妖精、精霊たちの女性からはため息がでました。どの女神達も月の神様を想っていたからです。しかも相手は人間です。限りある命の人を選ばれたことに皆はさらにため息をつくしかなかったのです。

王女様は月の神様をみつめ、嬉しそうな顔をしています。
「そういえば面白いことにこの指輪、月が出ると青みが増すんですのよ。素敵ですわ」
「そういえばムーンストーンにはそういうタイプの子がいますよ。月が姿を変える度に青みが増したりするので見ていて楽しいかもしれませんね。私の力を授けやすいのもありますが、言い伝えにそって初めての石を選んだのです」
「こんな子が来てくれるなんて、私は幸せですわ」
優しく指輪に触れて、王女様は微笑みました。湖につくまで石の話で盛り上がり、今度鉱山に連れて行ってもらえる事になりました。なんでも自ら光る不思議な石があったり、妖精が宿る石があるというのです。月の神様はお話の仕方も上手です。分りやすく簡単な言葉で相手に伝えます。勿論難しく話すこともできますが、自然な言葉遣いを選んでいました。
それにしてもどうして一緒にいるだけで、こんなに嬉しいのかと月の神様は思いました。月の神様は、神々の中でも古くから存在する神です。どんなときも落ち着いているというのが自分の評判ですが、今のこの状態といったら、周囲の神様が驚くでしょう。どきどきわくわくすると同時に心の底から愛しているという気持ちがわき上がります。これもいつか王女様に伝えようと月の神様は思いました。
「いつみてもこの湖は綺麗ですね」
「ええ、本当に。あなたとここを訪れられた事が何よりも嬉しいですわ」
「私もです。あなたが喜んで下さって嬉しいです」

湖についたので雲からおりて、二人は水面を見つめました。本日も月の光をうけて綺麗に輝いています。
「ここのお水で顔を洗うと美人になるって本当ですか?」
「お肌が引き締まっていいと女神達が言っていましたね」
「わぁ、女神様がいうならきっとそうですね。今度はボトルを持ってこよう。綺麗になりたいですもの」
月の神様は微笑み、王女様を抱きしめて耳元で囁きました。
「あなたは今のままで十分美しいですよ。湖の水を使えばもっと美人になるでしょうけれど周囲の男性からの視線が私は気になります……私だけに心を向けて下さいね」
「あなた以外の男性など目に入りませんわ」
少しためらいましたが勇気をだして王女様も月の神様を抱きしめました。
「大好きなんですの、あなたが」
「私もです」
二人は抱き合いながら相手の顔を見つめました。自分が愛した人の全てが愛しく思えます。月の神様は王女様の額にそっとキスをしました。
「愛しています、王女様」
「いつまでも一緒にいたいです。私も月の神様を愛しています」
その瞬間、王女様の指輪が光り輝きました。本当に愛し合う者同士の絆が深まっていくと光輝くという伝説は聞いたことがあります。王女様は驚きました。
「種族もこえて愛し合えるなんて素敵」
微笑む王女様の言葉に月の神様も応えました。
「本当に素敵ですね。あなたでなければならなかったんだと思います」
そして月の神様はある言葉を王女様の耳元で囁きました。
「私の真正の名前です。神様でも知っている人は少ないですが、あなたには打ち明けておこうと思います。困った時は呼んで下さい。いつでも側に行きます」
「私の名前もお教えします……何か出来るわけではないですが、覚えておいてくださいませ」

この世界の殆どのものは二つの名前をもっていました。普通の名前と、魔術的なもう一つの真正の名前。真正の名前は一生を共にする相手にしか打ち明けないものなのです。それを月の神様から教えて貰ったことに王女様は嬉しさを感じていました。本当に自分をえらんでくれたのだと喜びました。もう一度相手を抱きしめて、二人は体を離しました。
湖のほとりに座り、色々な夢や、やってみたいことなどを王女様は話します。いくつかは月の神様と一緒でかけてみたいというものでした。その場所を頭の中にメモしながら月の神様は愛情を伝えます。どれだけかけても伝えきれない想いですが、言葉を尽くしました。王女様は喜んでいます。それをみてさらに月の神様は幸せになりました。素直な心の王女様を更に愛しく想いましたし、国の守護神として誇りに思いました。小さな国ですが本当に心が清いものばかりなのです。中には罪を犯すものもいますが、大半がちゃんと反省できる人々でした。それだけ神様と人々の間の距離は離れていなかったからかもしれません。

<次に続く>
王女様は夕暮れのバルコニーで一人佇んでいました。右手の薬指の指輪は母に気付かれ、誰なのかと尋ねられました。とても素敵な方で、申し分ない方です。とても賢くて優しい方です、という王女様の答えに母である女王さまは満足しました。
どこの誰か分らないけれど、自分の信頼している娘の選んだ相手を信頼することに決めました。森の中の湖に行ったことを聞き、女王様は喜びました。誠実そうな相手です、いつか会わせてねと声をかけました。勿論内心は心配もありますが……きっと大丈夫でしょう。王様はどこの誰なのか知りたがりましたが、女王様が聞かないようにと言うので我慢しました。ただそういう相手ができたことを喜んではいたので、今日はちょっと豪華な食事にしようと言いました。今はその食事を待っている時間でした。

シェフが腕をふるいとびきり美味しい食事ができあがりました。花園からは薔薇をつみテーブルを飾ります。白いテーブルクロスが料理を引き立てます。

「王女様、お食事の時間でございます」
女官が呼びに来ました。頷いて王女様は食事に向かいました。先の王様と女王様が座っていました。
「お待たせしました」
そういう右手には輝く指輪。これを贈れるのはかなりの資産家だなと王様は思いました。なにしろ月の神様が鉱山で一番いい石を選んだのですから高い価値があるのは当然なのですが、細工も非常によいのです。
「王女や、どうやら良い石を贈って貰えたようだな」
「はい。いつかご紹介します。素敵な良い方です」
「もう湖にも行ったそうよ」
「そうか、湖に行ったのか」

若い頃王様は女王様をエスコートして湖に行きました。その頃の思い出が蘇ります。若い女王様の顔をちらりとおもいうかべ、今の女王様を見つめました。昔と同じく美しい顔に少しつり目の瞳。当時の若い頃の王様が気品があると思ったものです。
「私の顔になにかついていますの?」
「いやいや、昔に二人で湖に行ったことを思いだしたのだよ」
「まぁ、懐かしい」
女王様はその頃の指輪をまだ大事に持っていました。結婚するときには別の指輪が用意され、日常ではそれを身につけていました。
「今度私もあの子を出してこようかしら。宝石箱に眠らせておくのは勿体ないわ」
女王様に贈られたのはサファイアでした。いつまでもあなたに誠実でありますという王様の言葉を女王様は思い出していました。
「そうか、それもよいかもしれん。懐かしい」
若い王様は宝石屋に何度も王宮に来て貰い、その石を選んだのです。当時はまだお腹もでていない格好良い王子様だったのですが、今は少しお腹がでていました。
「若い頃は懐かしい。なんど宝石を扱う者に来て貰ったことか……王女の相手もそうかもしれないのう」
「そうかもですね。本当にお気に入りの指輪になりましたわ」
「その相手をいつ紹介して貰えるか楽しみにしておるぞ」
「はい」
王宮は割と自由な雰囲気で、恋愛も自由でした。以前に結婚した王女様の叔母は、商人と結婚して今はお店でも夫を助けているという話しです。ただ王女様は第一王位継承者。どういう相手か素性は知りたい王様でしたが、王女を信頼しましょうという女王の声に従っていました。
「ごちそうさまでした」
今日は仔牛のステーキ。王女様の大好物です。猟師が今日持ってきたものでとても美味しいものでした。デザートにと出されたのはクイニ-アマン。王女様の好きなお菓子の一つでした。
「そろそろ部屋に戻りますわ、また明日。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「また明日ね、おやすみなさい」

王女様が部屋に戻った後、二人はふうとため息をつきました。恋愛は自由でいいですが、結婚となると……その相手が相応しいかどうかは気になります。先日の医者が王様は気になりました。旅の医師のわりには上品でいい身なりをしていました。女王様にそれをいうと、人は身なりでは決められませんという言葉が返ってきました。見守るしかないという結論を二人は出し、部屋にと戻っていきました。

王宮の中でも王女様の指輪は話題になっていました。どんな方なのだろうという話は皆思っています。王女様はよく街にも行きますから誰と恋愛しているか分りません。身分ある人ではないかとも噂になりました。そうでなければあの指輪は贈れません。

その頃王女様は月の神様をまってバルコニーに佇んでいました。少しずつ満月に向かう月です。指輪に目をやると、青いシラーが強まっています。そろそろ時間です。今日も小鳥で来るのかもしれないなと思っていたら、いつのまにか青い小鳥が肩に乗っていました。
「まぁ……可愛らしい。月の神様ですか?」
「見抜かれましたね」
すぐ変身をといて月の神様は現れました。
「何か指輪の事は話題になりましたか?」
「母が気がついたのですが、そんなに聞かれませんでした。秘密っていいたかったのにチャンスがありませんでしたわ」
「いつかはご挨拶しなければなりませんね」
月の神様は少し考えていました。神の花嫁になった場合、王位を継ぐことはできないのでどうすべきなのかを考えていました。王女様は一人娘なので王位を継がなければできません。あるいは神官として働いている王女様の従兄弟を王宮に呼び戻すことになるかもしれません。なに、まだまだ時間はあるのです、ゆっくり考える事にしましょう。今は可愛い恋人と一緒にいることが大事です。
「今夜は何処へ行きましょうか?」
「また湖がいいですわ」
王女様の手をとり、雲にのって二人は夜の逢瀬を楽しむことにしました。

<次に続く>