エイジ780
悟空が修行相手を探してベジータの元へ瞬間移動してきた。

悟空 「よう、ベジータ・・・」

ベジータと目があった途端にいつも以上に不機嫌この上なく、悟空は睨まれた。

この前のトランクスが来たときにベジータが重力室に籠った時の氣迫並みで誰も近づけない感じの氣を纏っていたのだった。

悟空は内心、ヤバそうだと察し、それ以上何も言わず、その場から離れた。

多分、ブルマと何かしらあったのだろうが、あの分だと当分修行相手処じゃないと悟空でも分かるくらいだった。




ベジータ 「・・・カカロットの奴、一体、何の用だったんだ?」

目の前に現れた悟空に声をかけられたと思ったら、すぐに帰って行ったのだった。

ベジータは自分が発している氣に氣が付いていなかったのだ。

ベジータ 「まあ、どのみち、今はカカロットを相手にしている余裕はないから、調度良かったが・・・」

ベジータはブルマの体調がここ数日優れなく、しかもその都度、情緒不安定で手を焼いていたのだった。

いつものブルマならベジータも怒鳴り返すところだが、どうやらつわりという妊娠時に出る症状の様で、トランクスの時もあったらしいが当時のベジータは家を出てブルマが妊娠していたことすら知らなかったということもあり、しかも、ブルマの年齢的にちょっとしたことで流産するかもしれないリスクも背負って余計にどうしていいのかわからなかった。

ただ、今回はブルマが安定するまではせめてブルマの側に居ようと努めていたのだった。

そして、ようやく氣が落ち着いて寝付いたブルマから離れた時に、たまたま、悟空がやって来たのだった。
 
ブルマは前回と同様、お腹が目立ち始めた頃から外出を控えていた。トランクスの時は、周りも生まれるまでブルマが妊娠していたことすら知らなかったくらい家に籠もっていたのは、ああ見えて繊細で不安な様子を人に見せたくなかったのもあったし、何よりも自慢のプロポーションがこの時期だけは維持出来るわけがなく、マスコミにも見つかって記事にされた日には当時、結婚すらしていなかったブルマにとっても好ましくなかったのだった。
 
そして、今回も結婚こそはしているものの公でも夫はベジータと周知されていたが、ブルマの年齢的なものと7年前の流産の事もあって万が一を考え、ちゃんと生まれるまでは余り公で知られたくなかったのだった。
 
だからお腹が目立たない頃はむしろブルマも嬉しくてしかたなかったのだが、実際にお腹が目立ち始めるとちゃんと育って生まれるのだろうかとか、今回駄目にしてしまったら次はもうないだろうとか不安になる考えが浮かび、一般的なつわりの時期から大きく外れた時期になって余計にブルマが情緒不安定になっていたのだった。
 
そして、そんなブルマを初めてみるベジータも冷静を装ってはいるものの、なんせトランクスの時にはまったく放置していた自分だったため、どうしていいものなのか全くわからないでいた。
 
 
 
そして・・・ブルマが寝ている間に、ベジータは神の神殿へ訪れていた。
 
 
 
デンデ「ベジータさん、どうかしましたか?」
 
ベジータ「・・・ピッコロはいるか?」
 
ちょうど、ピッコロが二人の前に現れた。

 
ピッコロ「珍しいな・・・貴様がここに来るなんて」
 
ベジータ「・・・話しがある」
 
ピッコロ「何だ?」
 
ベジータはデンデに目を向けた。
 
デンデ「あ、私はあちらにいますので何かありましたら呼んで下さい」
 
 
 
 
 
ベジータ「貴様はよくパンをあやしに行っているが・・・その・・・パンが生まれる前はどうしてた?」
 
ピッコロ「いや、俺は生まれてからしか関わってないが・・・」
 
ベジータ「・・・そうか。ならいい」
 
 
ここにこれ以上用がないと判断したベジータにピッコロは声をかけた。
 
ピッコロ「・・・おい、待て!ベジータ」
 
ベジータ「・・・」
 
ピッコロ「ブルマか?」
 
ベジータ「・・・ああ」
 
ピッコロ「それなら貴様のところは二人目だろ?・・・何を今更・・・」
 
ベジータ「・・・」
 
ピッコロ「ああ、そうか。貴様はトランクスの時には何もせずに氣付いたら生まれていたんだったな。今回は夫らしい事をしようとしてるのか」
 
ベジータ「べ、別にそういう訳じゃない!!」
 
ピッコロ「パンをあやすのを悟飯から任された時、俺は地球のあらゆる文献の妊婦から出産・子育てまで網羅して知識として頭には入っている。その知識で良ければアドバイスは出来るぞ」
 
ベジータ「・・・そうなのか?」
 
ビッコロ「今、何週目だ?」
 
ベジータ「は?」

ピッコロ「出来てから何週目にブルマは入っているかと聞いている」
 
ベジータ「・・・さあ。俺のもう一人の息子のトランクスが来る少し前に出来たはずだが・・・今、ブルマの腹が目立ち始めてる」
 
ピッコロ「・・・ん?・・・個人差はあるらしいがそれならそろそろ安定期のはずだが・・・?」
 
ベジータ「つわりじゃないのか?・・・ブルマは最近、もの凄く情緒不安定だ・・・」
 
ピッコロ「・・・平均的なつわりの時期は8〜11週目だ。腹が目立ち始めているなら3ヶ月は過ぎててもおかしくはない」
 
ベジータ「じゃあ、何故、ああも泣いたり怒ったりして激しいんだ?!」
 
ピッコロ「・・・それはいつものことじゃないのか?」
 
ベジータ「・・・いつももそうだが・・・今はそれ以上だ・・・」
 
ピッコロ「・・・そうなのか。なら、精神的なものが強く働いているな。何か心当たりはあるか?」
 
ベジータ「心当たりと言われても・・・あ!・・・」

ベジータはブルマが一度流産した経験があるのを思い出したのだった。
 
ピッコロ「・・・あるんだな?」
 
ベジータ「・・・」
 
ピッコロ「・・・まあ、言いたくないのなら言わんでもいいが・・・」

ベジータ「・・・ブルマは・・・」
 
ピッコロ「ベジータ、別に言わんでもいいぞ。貴様が思っている事が原因だと思うのならその時、貴様は何をしていた?」
 
ベジータ「・・・外で・・・トレーニングを・・・」
 
ピッコロ「ふっ!貴様らしいな。それならその不安を取り除くのは簡単だ」
 
ベジータ「簡単だと?」
 
ピッコロ「ああ、側にいてブルマが不安になったとき、やさしく抱き締めてあげることだな」
 
ベジータ「・・・抱きしめてだと・・・」

ピッコロ「前の時は貴様がいなくて不安だったんだろう・・・ああ見えても」
 
ベジータ「・・・」
 
ピッコロ「更に【俺がずっと側にいてやるから安心しろ。お前が不安になったらいつでも抱き締めてやる】と言えば効果てきめんだ」
 
ベジータ「い、言えるか!!」
 
ピッコロ「・・・安心して出産して欲しくないのか・・・今の貴様ならそれくらい容易いことだろ?・・・二人目が出来た現在ならな」
 
ベジータ「・・・他人事だと思いやがって」
 
ピッコロ「俺もだが・・・貴様もあれから随分変わったよな」
 
ベジータ「・・・悪いか!」
 
ピッコロ「正直、俺の子でないパンでさえ、面倒をみればあんなに可愛いんだ。・・・貴様はましてや愛するブルマとの間の子が生まれてくるんだからさぞかし俺の比ではないだろう。自覚がある現在だとより一層に・・・」
 
ベジータ「・・・確かに・・・悪くない氣分だ」
 
ピッコロ「ぜいぜい妻孝行でもするんだな。後悔せんようにな」
 
ベジータ「貴様に言われる筋合いはない」
 
ピッコロ「ああ、そうだ、ベジータ!」
 
ベジータ「なんだ?」
 
ピッコロ「二人目、おめでとう。大事にしろよ」
 
ベジータ「・・・ああ」
 
 
ベジータはうっすらと顔を赤らめながら神の神殿を後にした。
 
 
 
 
 
ブルマはしばらく睡眠を取ったお陰で体調が少しはよくなっていた。
 
ブルマ「ベジータ!!一体、何処行ってたのよ!!」
 
ベジータ「・・・野暮用だ」
 
そしてブルマをやさしくハグした。
 
ベジータ「ただいま、ブルマ」
 
ブルマ「・・・え?」
 
いきなりベジータにハグされたブルマは顔を赤らめた。
 
ブルマ「ど、どうしたのよ・・・急に」
 
そして同時に不安になってた氣持ちがベジータの暖かい温もりを感じて安心感に変わっていったのだった。氣付いた時にはブルマは涙で溢れていた。
 
ベジータ「・・・また、泣きやがって・・・」
 
ブルマ「・・・だって」
 
ベジータ「お、俺が側にいてやるから・・・泣くな・・・不安になったらいつでもこうしてやるから・・・いい加減、泣き止めろ・・・ブルマ」
 
その言葉を聞いた途端、ブルマは更に大泣きしていた。
 
【ピッコロの奴、嘘、教えやがって・・・これじゃ逆効果じゃないのか!ちくしょう!!】
 
ベジータは内心、舌打ちしながら、ブルマが泣き止むまでしばらくそのままブルマを抱き締めていたのだった。