エイジ781

 

ベジータは自分の耳を疑った。

 

ベジータ「!!」

 

ブルマの代わりにブラの相手をしている時だった。

 

ベジータ【・・・ブラ、今、なんて言ったんだ?】

 

ブラ「パパぁ・・・マンマア・・・」

 

ベジータ「・・・聞き違い・・・か」

 

 

 

 

 

エイジ783

 

ブルマ「ブラ・・・ようやく寝てくれたわ。最近は絵本の読み聞かせが大好きだからキリがないくらい一生懸命聞いてるのよね。言葉もトランクスに比べても覚えるの早いわ」

 

ベジータ「・・・そうか」

 

ブルマ「ベジータも最近はブラに付き合って絵本読んでるみたいだけど」

 

ベジータ「・・・お前がいない時に限って絵本、片手に持ってせがまれるんだ」

 

 ブルマ「ブラには甘いのね・・・」

 

ベジータ「あいつの癇癪には付き合いきれん。拒否れば、泣き叫ぶのは目に見えてる。読むまで泣き叫ぶから致し方なくだ。まったく誰かに似て・・・」

 

ブルマ「そういうわがままで強引なところが好きなんでしょ」

 

ブルマはそういうとベジータにキスをして手を首に回した。

 

ベジータ「・・・さあな」

 

ベジータは読みかけの本をサイドテーブルに置くと明かりを消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラはパンとは違って、赤ん坊の頃から空を飛ぶとか異常にパワーがあるとかのサイヤ人の氣質が出なかった。

 

地球人のブルマの気質が色濃く遺伝して、とてもサイヤ人とは思えないほど地球人に近かったのだ。

 

トランクス「・・・パンちゃんと比べるとうちのブラはすげー普通だよね」

 

ブルマ「・・・女の子なんだからあんたみたく異常にパワー持ってたら、お嫁に行けなくなるからちょうどいいわよ」

 

トランクス「まあ、普通の女の子に比べたら確かに丈夫だけどさ。さすがにパパもブラ相手にトレーニングとかしなさそうだし・・・パパはどう思ってるんだろ」

 

ブルマ「・・・何、言ってるのよ。ブラは私にそっくりじゃない。それにサイヤ人ぽくなくても間違えなく、半分はベジータのサイヤ人の血をあんたと同じで引き継いでるんだからね」

 

トランクス「でもさ・・・悟飯さんとこは、悟飯さんはハーフだからパンちゃんはクオーターになるのに、血が薄いほうがサイヤ人の氣質が強いって変な感じだな」

 

ブルマ「確か、ハーフの方が潜在能力が強く出るとかいってなかった?現にあんたらは怠けててもすぐに超サイヤ人になれてたんだからね。ごたごた言ってるとベジータに怒られるわよ」

 

トランクス「・・・今の話はパパには内緒で・・・パパみたいにあんなトレーニングは俺には無理・・・」

 

ベジータ「何が内緒なんだ?トランクス」

 

ベジータはちょうどブラを風呂に入れていて出てきたところだった。

 

トランクス「あ、パパ。な、何でもないよ」

 

ブラ「お兄たん!!」

 

トランクス「あ、ブラ!!お兄ちゃんが着替え手伝ってやるから。ほら、あっちでお着替えしような」

 

ブラ「うん!!」

 

 

トランクスはベジータを怒らす前にそそくさとブラを連れて退室した。

 

ベジータ「・・・おい!!・・・ったく、あいつは!!」

 

ブルマ「トランクスもしっかりお兄ちゃんとしてブラとよく遊んでくれてるから私は助かってるわよ。あんたもブラの相手もしてくれるし・・・」

 

ベジータ「・・・ブラが勝手についてくるからだ。好きでやってるわけじゃない・・・今だって人が風呂に入ってるとこに入ってきやがって・・・」

 

ブルマ「じゃあ、そう言えばいいんじゃない?」

 

ベジータ「言えるわけないだろ・・・」

 

ブルマ「まあ、一緒に入れるのも今のうちだけだからね。パパ」

 

ベジータ「・・・ふん」

 

ブルマ「じゃあ、今日は私は一人でゆっくりお風呂入らせてもらおうかな」

 

ベジータ「・・・勝手にすればいいだろ」





ブラ「ブラね、ピンクのパジャマがいい!!」

 

トランクス「これかな?」

 

ブラ「♪~♪~っ」

 

トランクス「・・・?!ブラ、それ、歌?・・・なんの歌?」

 

ブラ「******@、****」

 

トランクス「??」

 

ブラ「******?*****~###$$!!」

 

トランクス「え?!え?それ・・・言葉なの?・・・ブラ?何、言ってるのさ」

 

ブラ「お兄たん、ブラと同じ言葉、言うの!!」

 

トランクス「え?新しい遊びかな?ブラの言うことを真似ればいいんだね?」

 

ブラ「うん!!」

 

トランクス「わかった」

 

ブラ「####%$」

 

トランクス「は??え?ちょっと待って・・・つ?つった??」

 

ブラ「#!!」

 

トランクス「ブラ?・・・どっからその発音になるんだ??息の音??舌と口の使い方、めちゃ難しくないか?え??どこの言語だ??・・・ってどこからそんな声というか・・・音が出るんだ?」

 

ブラ「****XY$%!!」

 

トランクス「ブラ・・・その言葉、意味わかんないし・・・お兄ちゃん、発音出来ないよ」

 

ブラ「####%$%&!!!XI))&& !!!」

 

トランクス「ブラ、だから・・・」

 

ブラ「びえ~~!!!!」

ブラの甲高い泣き声が響き渡った。その声を聞いて直ぐ様、ベジータが部屋にやって来た。

ベジータ「トランクス!!何、ブラを泣かせてるんだ!!」

 

ブラ「パパ!!」


ブラはベジータの側に駆け寄って抱き付いた。

 

トランクス「え!?え?だ、だって!!」

 

ブラ【パパ!!お兄ちゃんがブラの言葉、真似するって言ったのに!!してくれないの!!】

 

ベジータ「・・・ったく」

舌打ちしたベジータを見て、トランクスは自分が怒られるものばかりと思っていた。

トランクス「俺!・・・」

思わず言い訳しようとしたトランクスは、次の瞬間、ベジータが発した言葉を聞いて固まった。

ベジータ【ブラ!!この言葉はパパと二人だけの時にしか使っちゃだめだと言っただろ】

ブラ【だって!!こっちの言葉の方が話しやすいんだもん!!】

ベジータ【・・・お前以外、誰もこの発音は・・・特に地球人には発音出来ないんだ】

ブラ【だって、お兄ちゃんだってサイヤ人でしょ!】

ベジータ【・・・トランクスには教えた事がないから無理だ】


トランクスの目の前でブラがさっき話した理解出来ない同じ言葉で、会話している二人がいたのだった。

トランクス「パパ!!ブラと何、話してるんだよ!!。この言葉、ブラに教えたの、パパなの?!」

ベジータは一瞬躊躇ったのち、トランクスにポツリと答えた。


ベジータ「・・・サイヤ語だ・・・」


トランクス「・・・え?ええっ!!・・・サイヤ・・・語?!」

面食らったトランクスは、今まで聴いたことがない言語が、サイヤ人の言葉で有ることを初めて知った。ベジータの口から今日までその独特の発音の言葉は一度も聴いたことがなかったのだった。

ブラ【お兄ちゃんだって今から覚えればいいと思って・・・教えようとしたのに】

 

トランクス「ブラの言ってる言葉も発音もわかんないんだけど!!」

 

ベジータ「だから・・・サイヤ語は言語の発声の仕方がまるで違うから言語を覚える時期の生後~3歳までに教えないと例えサイヤ人であっても言葉も発音さえも真似する事は不可能だ。だから・・・トランクスには悪いが今から覚えようと思っても無理なんだ。ブラ」

 

ブラ【・・・じゃあ、サイヤ語が出来るのって・・・パパとブラだけなの?】

 

ベジータ【厳密に言えば・・・俺の弟のターブルも入れると3人だけだな。サイヤ人のカカロットのガキ共は勿論、言葉さえも知らんからな】

 

ブラ【そうなんだ・・・サイヤ語ってそんなに難しいの?】

 

ベジータ【ああ・・・だからお前がサイヤ語を発した時には驚いた・・・言語も覚えも抜群に早いし、発音も正確だ。さすが俺の娘だ】

トランクスは何故、ベジータが今更ブラにサイヤ語を教えたのかと疑問になりながら二人の話している会話が全く理解出来なかった。

トランクス「・・・だから!!パパもサイヤ語、話すと俺、わかんないし!!」
 

 

ベジータ「・・・ブラ、トランクスにもわかるように地球語で話をするんだ」

 

ブラ「お兄たん、話す!!ブラと話す!!」

 

ベジータ「・・・まあ、地球語は地球の3歳児と同じだな・・・。トランクス、つまり・・・ブラはサイヤ人の血の言語能力を引き継いだんだ」

 

トランクス「え?・・・で、そのサイヤ語が話せるのって・・・」

 

ベジータ「基本、サイヤ語は発音が難しくて話せないからサイヤ人以外は無理なはずだ。俺もフリーザ軍にいた頃は宇宙共通語を使用していたし、自分の惑星の言語しか使えない奴らにはスカウターの翻訳機能で言語を翻訳させていたから・・・俺レベルだと・・・地球語の発音だけなら一日くらいで言葉はマスターできる」

 

トランクス「え!!たった1日で?」

 

ベジータ「それがエリートのサイヤ人だ。音で覚える言語能力は高いが・・・流石に文字を読んだり書いたりするのはそれなりに時間はかかったがな」

 

トランクス「へー・・・そうなんだ・・・俺は・・・半分サイヤ人だけど・・・サイヤ語話せないんだ・・・」

 

ベジータ「・・・話せる相手がいなかったら意味はないだろ?俺だって地球に来てからは使った事はなかった」

 

ブラ【お兄ちゃん、模写は得意だから、サイヤ語の発音は無理でも文字なら書けるかもしれないよ】

 

ベジータ「・・・そうだな」

 

トランクス「ブラはなんて言ってるの?パパ」

 

ベジータ「お前なら、サイヤ語の文字なら書けるだろうと」

 

トランクス「パパが教えてくれるの?」

 

ベジータ「・・・他に誰が教えるんだ?」

 

 

 

そこへ風呂上がりのブルマがやってきた。

 

ブルマ「あらあら、妻を差し置いて・・・父子でそんなとこで密会してるの?」

 

ベジータ「・・・ブルマ」

 

ブルマ「そんな嫌そうな顔するもんじゃないわよ」

 

ベジータ「・・・お前が関わるとロクなことにならんからな」

 

ブルマ「ブラが時々不思議な言葉話したり・・・歌ったりしてたのってやっぱり貴方だったのね」

 

ベジータ「・・・ブラ!!お前!」

 

ブラ 【だって、ママにサイヤ語で話すとママ、凄く嬉しそうな顔するんだよ。特にお唄は凄くほめてくれるの】

 

ベジータ「・・・」

 

ベジータは次にブルマが何を言い出すか、予想がついたのだった。

 

ベジータ「・・・これからトレーニングでもしてくるから・・・あとはお前らの好きにしろ」

 

ブルマ「ねえ、私もブラに教えた歌がちゃんと聴きたいなあ」

 

ブルマはしっかりとベジータの腕に手をまわしていた。

 

ベジータ「・・・ブルマ。離せ」

 

ブルマ「ふふっ・・・ベジータがちゃんと歌ってくれたらね。ブラも一緒に歌いたいわよね」

 

ブラ「うん!!」

 

トランクス「・・・ははは」

 

その光景をみたトランクスも将来、ブラに振り回されそうな予感を 垣間見るはめとなっていたのだった。

 

 

 

そして・・ベジータのブラとハミングしたサイヤ語の歌は・・・澄み渡るように包まれた倍音で心に響く歌声だった。

 

トランクス「・・・サイヤ語の歌声って・・・宇宙空間にいるような拡がりがあるだね。パパがこんなに歌が上手いなんて思わなかったよ」

 

ブルマ「・・・ねえ、どんな歌詞なの?」

 

ベジータ「・・・ブラにでも聞くんだな」

 

ベジータは気恥ずかしさがたって、歌い終わるとその場を出て行った。

 

ブルマ「・・・ねえ、ブラ、どんな事を歌ったの?」

 

ブラ「・・・よく、わかんない」

 

その言葉は古代サイヤ語で、3歳のブラにとっては意味を理解するにはまだ早かったのだった。

 

 

 

 

 

ベジータは荒野に一人立っていた。

 

サイヤ語は話すことも伝えることもベジータ自身ないと思っていたのだった。

 

忘れ去られる言語・・・

 

惑星ベジータが消滅したと同時に俺の世代で消えていく運命だと思っていた。

 

それが・・・俺の娘が確実に伝承してくれたのだった。

 

あの独特の発音をブラの言葉から聞いた途端、俺はサイヤ語で話しかけていた。

 

もうすっかり忘れていた言葉だと思っていたのに・・・

 

そして、絵本をサイヤ語で読み聞かせて・・・みるみるうちにブラは言語を覚えて言ったのだった。

 

そして・・・あの歌は・・・

 

王家のみに伝わる古代サイヤ人の王家紋章に纏わる伝説の詩だった・・・

 

 

 

赤き星滅び、サイヤが死すとも 蒼き星で新たな月を生み出すサイヤの血を引く王の紋章を持つもの、復活し、その血、引き継ぐ。

 

諦めず立ち剣を振る者、黄金に変わる者、精神と心身の統一。

 

闇に落ち、戦う全てに一筋の光を導かん。

 

その光、決して手放すことなかれ。

 

蒼き神の信念揺らぎることなかれ。

 

赤き星の者の伝承、真実を失わず、己に勝ち、愛を貫けば叶わん。

 

対の己の分身が全て伝承し約束す。

 

新たな扉が開かれん。真実は一つのみと悟れ。

 

戦いのサイヤの魂は永遠に宿すことなれ。