エイジ780

 

ベジータ「・・・今日はここまでにしておくか。もう遅いしな。それに・・・」

 

ベジータは氣がかりな事があったのだ。

 

ベジータは重力室を出てシャワールームで汗を流したあと、なぜあの時、カカロットでなく、さっさと俺がブラックを倒しておかなかったんだろうと後悔してた。

 

ベジータは早く未来トランクスのいた世界へ行かないことにはこの憤りを抑えることは出来なかった。

 

ベジータ「・・・ブラックがいなくなってから、氣付いてももう遅い・・・俺としたことが・・・お陰で今はこんな氣分のままだ」

 

未来トランクスが来て、一度に色んな事がありすぎてベジータ自身もこの感情に振り回されている自分がいた事に自覚していた。

 

ベジータ「・・・昔の俺なら考えられん事だな。まったく・・・」

 

 

 

 

自分たちの寝室へ戻る途中、チビトランクスの部屋に立ち寄った。

 

もうすでに爆睡しているトランクスの寝顔をベジータは黙ってみていた。

 

ベジータ「お前は苦労知らずだな・・・良かったな、この世界で・・・」

 

ベジータはトランクスの頭をくしゃっとなでて部屋を後にした。

 

扉がしまったとき

 

トランクス「・・・パパ」

 

トランクスは部屋から出て行ったベジータの後ろ姿を確認して頭に手を置いた。

 

 

 

 


未来トランクスは来客用の部屋に泊まっていた。

 

そこにベジータが入ってきた。

 

ベジータ「・・・やっぱり、起きていたのか」

 

トランクス「父さん・・・」

 

ベジータ「・・・どうだ?少しは落ち着いたか?」

 

トランクス「はい、俺はもう大丈夫です」

 

ベジータ「そうか。それならいい・・・」

 

トランクス「父さんこそ・・・。あれから色々あったんですね。こっちの世界も」

 

ベジータ「・・・そうだな。しかし、お前が一番辛いはずだ。トランクス」

 

トランクス「今日、悟飯さんの家族にも会ってきたんです。未来では死んでしまった悟飯さんも、こっちの世界の悟飯さんは娘さんまでいて幸せそうでした。そして、俺の父さんも・・・」

 

ベジータ「・・・ああ。俺は未来のお前があの時来てくれたお陰で、家族っていうものを知ることが出来た」

 

トランクス「父さんがそんな事、言ってくれるなんて、俺、夢にも思わなかった・・・」

 

トランクスの瞳から涙が溢れた。

 

ベジータ「男のくせに泣くな!」

 

トランクス「父さん、俺、やっぱりこっちの世界へ来れて良かったです」

 

ベジータ「図体でかいくせに・・・俺に抱きつくな!!!」

 

トランクス「すみません、つい・・・嬉しくて」

 

ベジータ「・・・ったく!見た目だけでかいだけでお前も子どもだな!!!」

 

トランクス「そうですよ。父さんの子どもですから」

 

ベジータ「・・・とにかく、向こうへいけたら、すぐにでもブラックの奴、倒すからな。お前には過去に貸しがあるから、貸しは返すからな!」

 

トランクス「貸し?」

 

ベジータ「そうだろ?今、俺がこうして家族と居られるのはお前があの時、未来からきてくれたからだろう!・・・悟飯だってそうだ!!」

 

トランクス「・・・父さん」

 

 

トランクスはまた、泣きそうになっていた。

 

ベジータ「おい!また、泣くんじゃないぞ!!俺の息子のくせして人前で泣くもんじゃない!!!」

 

トランクス「俺、役に立てたんですね・・・」

 

ベジータ「だから、お前は・・・もっと自信持っていいんだぞ」

 

トランクス「父さん、今、幸せなんですね」

 

ベジータは一瞬、躊躇して、否定しようとした言葉を飲み込み、目線を床に下ろした。

 

ベジータ「・・・ああ。・・・だ、誰にも言うんじゃないぞ。トランクス」

 

ベジータは顔を赤らめてそうつぶやいた。

 

トランクス「はい、父さん」

 

ベジータはトランクスを慰める為に隠してた本音を伝えていた。

 

ベジータ「それに明日には燃料が溜まるらしいじゃないか?未来へいけるようになったら、カカロットなんか置いてさっさとブラックを倒しにいけばいい。あの程度のブラックならたぶん、俺一人でも今の俺の実力ならなんとかなる」

 

どうやら、先ほどの夕飯の時にブルマに進行具合を確認していたらしい。

 

トランクス「だから悟空さんと第10宇宙へ一緒に行かなかったんですか?」

 

ベジータ「・・・それもあるかもしれんが、それ以上に・・・」

 

 

ベジータは次の言葉を飲み込んだが、トランクスがそれを言葉にした。

 

トランクス「・・・家族の側に居たかった?」

 

ベジータ「・・・お前はなんでも口にする癖はやめろ!!それくらい察しろ!!!」

 

トランクス「無理ですよ、父さん、それは。」

 

ベジータ「・・・そういう強情なところは誰かにそっくりだ!」

 

トランクス「そりゃ、お二人の血を受け継いているんですから。それに俺は今、伝えないともう二度と伝えられないかもしれない世界で生きてきたんですから」

 

ベジータ「・・・」

 

トランクス「それでも想いを伝えられずに逝ってしまった人もいるんですから・・・」

 

ベジータ「・・・そうか・・・」

 

ベジータは出した手を、躊躇した。

 

ベジータ「おい、トランクス。頭を下げろ!」

 

トランクス「え?」

 

ベジータ「早くしろ!」

 

トランクスはベジータに言われるがまま、頭を下げた。

 

ベジータは下げたトランクスの頭をくしゃと撫でた。

 

トランクス「・・・父さん」

 

トランクスはそのまま頭を上げる事が出来なかった。トランクスの瞳は今にも涙で溢れそうになっていた。

 

ベジータ「もう、今日は寝ろ。ゆっくり休め。トランクス」

 

そういうとゆっくりと手を離し、ベジータは部屋から出て行った。

 

ベジータが部屋から出て行ったあと、トランクスは嗚咽を漏らして、床に崩れ落ちた。

 

トランクスにとって初めての事だった。

 

父の手がこんなに温かいなんて思っても見なかった。

 

トランクス「ありがとうございます・・・父さん。俺も幸せです」


トランクスが今まで流した涙は辛いことばかりの中で、これほどまでに暖かく嬉しい涙は初めてだった。