エイジ766
澄み渡る空の爽やかな朝。
食事を終えて庭に出たブルマの後ろから突然の来訪者がやってきた。
ヤムチャ「ブルマ、久しぶりだな」
ブルマ「あら、ヤムチャ、珍しいわね、ここに来るなんて」
ヤムチャ「いや、近くの街まで来たからどうしているかなと思ってさ」
ブルマ「昔、別れた女のところに来るなんて相変わらずね」
ヤムチャ「・・・それより、ブルマ、俺はさっきからその抱えている物体の方が氣になってるんが・・・」
ブルマ「あーあ、ベジータの子よ、ねぇトランクス」
ヤムチャ「えーえ!!嘘だろ!!!あのベジータが!!父親??しかも、お前と⁉」
ブルマ「まあね」
ヤムチャ「まあねって、よりにもよってあのベジータの性格でよくブルマと一緒になる氣になったな。まあ、お前もだけど。・・・ところでベジータは今は出かけているのか」
ブルマ「あー、一年前からね」
ヤムチャ「一年前?! はぁ?・・・え、え~!!」
さすがに察しがいいヤムチャ。その一言で理解したようだった。
ブルマ「そ、あいつは知らないのよ、子ども出来た事も私が産んだって事も」
ヤムチャ「ブルマ、別れた俺からいうのもなんだけど、それって選んだ男、間違ったんじゃないのか・・・」
ブルマ「本当そうね、あんたがいうことじゃないわね」
ヤムチャ「いや、俺と別れたあと、あいつとつきあっていた感じはあったのはなんとなく知ってるけどさ、一緒に暮らしてるならまだしも、一年も戻ってこない男選んで・・・」
ブルマ「まさか、出て行って一年も戻ってこないとは思ってもいなかったけどね」
ヤムチャ「大変だろ、何か困ったことがあれば、力になるよ」
また、ここでヤムチャの悪いくせが出る。
ブルマ「あんた、本当に昔からそういうとこ変わってないわね、誰にでもやさしいとこ」
ヤムチャ「それで他の女にもやさしくして振られたんだったよな、お前に。困ってる人みるとほっけないんだよ」
ブルマ「本当、ベジータとは正反対!!あいつはあいつで全く関心なしなんだから」
ヤムチャ「ははっ、でも忠告しておくけど、そいつとは別れた方がいいんじゃないか。そんなんじゃ、お前が苦労するのは目に見えてる」
ブルマ 「別れるも何も本人がいないんじゃどうしようもないわよ、居たら居たらで、すぐ設備、物壊すし、いつだって命令口調だし、すぐ切れるし、優しい言葉の一言もいってくれないし、しまいにはこんな生温い環境じゃダメだって出ていっちゃうし、本当、最低~!!」
ヤムチャ 「はは、ひどい言われようだな。仮にもあいつの子どもまでいる仲で、そんなボロクソにいうとはな。よくそれで付き合ったものだ」
こんな事を別れたあとでも言えるのは、ヤムチャが恋愛に対して寛容だからだ、女の扱いに慣れているのだ、この浮氣ぐせがなかったら一緒になってたかもしれない。
ヤムチャ「だったら俺の方がまだ、良かったんじゃないか。俺だったら、付き合っている女を一年もほっといたりしない」
こんな事を平気でさらっと言ってのける。
ブルマ「馬鹿いってるんじゃないわよ、あんたはあんたで浮氣ばっかりするじゃない」
ヤムチャもさすがブルマと付き合っていたことだけはある。ブルマの事をよく理解していた。
ヤムチャ「そうか、なんだ、答え出てるんじやないか。浮氣しないやつがいいんだよな、ブルマは・・・お前の事、守ってくれて強くて、お前の事だけ愛してくれる白馬の王子様がいいんだろ」
ブルマ「な、なに言ってるのよ」
ヤムチャ「ベジータは確かに強いし、堅物で浮氣なんてしなさそうだしな。それ以前に恋愛感情あるのかと思えるレベルだけど、意外とブルマに一途だったりするのか」
ブルマ 「知らないわよ、そんな事。いつも無茶ばっかりして自分が強くなることしか考えてない戦闘馬鹿なんだから」
ヤムチャ「え!! 」
・・・なんだ、このデカイ氣は・・・こっちにまっすぐむかってきてる。
ブルマ「どうしたの、ヤムチャ」
ヤムチャ 「・・・いや、なんでもない」
ブルマ 「でね・・・ベジータなんか・・・」
ブルマの話を聞きながら、氣を探っているヤムチャ。
・・・悟空ほどの氣のでかさか、それ以上か?
・・・しかも、ものすごい勢いでこっちに向かってる
・・・まさか、ベジータ・・・か?
ブルマのとこにいた頃の氣と比べると全然比べものにならない氣だ・・・
それだけ修業したと言うわけか、一年も一人で・・・
ヤムチャはブルマがベジータを選んだ理由を、ベジータがブルマに惹かれた理由をなんとなくわかった氣がした。
ヤムチャ「・・・ふっ、そういう事か」
ブルマ 「・・・ちょっと、ヤムチャ、人の話聞いてる」
ヤムチャ 「あ、ああ。ブルマ、さっき、言った事、撤回するわ」
・・・この速さだと、あと、15分ちょっとってとこか・・・
ブルマ 「何よ、急に」
ヤムチャ「お前ら案外お似合いなのかもな。なんだかんだいいながら、ブルマ、お前、ベジータの話してるとき、凄く嬉しそうだ。それにベジータもお前の話聞いてる限りはお前だけは特別みたいだな、俺と違って。一年もほっとけるってことはそれだけ信頼してるって事だ、俺なら不安で到底真似出来ないよ」
ブルマ「何、言い出すの、ヤムチャ」
ヤムチャ「俺、そろそろ行くわ、ベジータがいつ戻って来るかわかんないけどさ、あいつの性格だ、お前とこんな風に話しててしかも赤ん坊がいるとこ見られたら、理由いう前に確実に殺される。そんなわりに合わない誤解は避けたいしな。なんとなくだけどさ、ブルマ、お前が思っている以上にベジータはお前の事、大事に思ってるよ、きっと。早くベジータ、帰ってくるといいな。じゃあな、ブルマ。」
ブルマ 「ちょっと、ヤムチャ」
空へ飛び立つヤムチャ。あっけにとらわれるブルマ。
ヤムチャ「ふう、もう、到着するな」
やや離れた場所で、通りすぎるベジータを見つけるヤムチャ。
ヤムチャ 「相当、速いな、やっぱりベジータだったか。見つかってはいないよな、氣を消したつもりだったんだが。でも、俺とは段違いの強さだ。流石だ、ブルマにとっての王子様が迎えにきたって訳か・・・さてと、これで復縁という選択はなくなったな。
まあ、最初から望みはなかったって訳だけどな・・・」
その場を立ち去る。
ブルマ「あのヤムチャがあんなこというなんて・・・」
まだ、庭で心地よい風に当たりながらトランクスを見つめる。
ブルマ「本当、いつ戻ってくるんだか・・・」
そこへ聞き覚えのある懐かしい声が聞こえる。
ベジータ「ブルマ、重力室はまだ使えるのか!」
空を見上げると、戦闘服がぼろぼろになった泥だらけのベジータがいた。
ブルマ 「ベジータ・・・」
ブルマにとって、懐かしい逢いたい人が。
(「未来のかけら」へ続く)