1. De underjordiske
2. Feigdefugl ★
3. I mulm og moerke
4. Malum
5. Volverite
6. Naar solen blekner bort (Troll cover)
7. Gandferd
ノルウェーのブラックメタルバンドによる2作目フルレングス。
デジパックで歌詞ブックレットはありません。つけてほしかったな、この世界観をブックレットで眺めたかった。
これぞブラックメタル!
私はこういうブラックメタルをずっと聴きたかった。待ち焦がれていた。
そんなポエミーな感情を抱いてしまうほど、この作品は「ブラックメタルとは何ぞや?」という問いに的確な音を放り込んできてくれます。
曰く、Immortalのような吹雪吹き荒ぶ極寒のトレモロリフと荒ぶるブラストビート。
曰く、初期Satyricon、Shadowthrone辺りの彼らの持つ妖美でうっすらと立ち上るシンセワーク。
この辺りはLunar Auroraとも共振する妖艶さを湛えています。
曰く、EnslavedやThyfing辺りのヴァイキング風の勇壮な盛り上がり。
そもそもTrollのカバーをしているわけですが、このバンドのドラマーはTrollにもいたりするわけですし、G&VoはDodsfallにも参加していたり二人ともAstarothのメンバーでもあるので、要するにノルウェイジャンブラックに骨の髄まで浸かっている真性の方々なわけですよ。
その為か、ノルウェーの気高いブラックメタルの血にほんのりとRawな凶暴性を滲ませているので、物凄くかっこいいです。
アルバム全編、これでもかというくらい(ブラックメタルとして)キャッチーで冷たい美メロを掻き鳴らしてくれるので、私感無量。
雪が降り積もる鬱蒼とした森の中を走り抜けるかのような世界観が広がるこの感じ。
彼らの音はそういう意味で色彩豊かで、非常にイマジネーションを刺激されます。
Voは中音域主体のがなり声に朗々としたクリーンもヴァイキング風に入れたり呪詛っぽく呟いたりもするタイプ。
気が遠くなるようなアンビエンスにフォーキーなフレーズを織り交ぜて幻想的な空間を演出しながらトレモロをまとわりつかせるブラックメタルM-1、最初期Satyriconか初期Emperorのようなシンフォな空気を凶悪なブリザードで切り裂くM-3、じっくりとリフを紡いでヴァイキング風に勇壮に盛り上げながらも幻惑的なシンセを配置する個性的なM-4、凶悪なブラストビートとブリザードリフでImmortalのような音像を持ちながらもトールキンの世界か!と突っ込みたくなるフォーキーなシンセが不思議と溶け合う作品のハイライトM-5、原曲にかなり忠実な冷たいシンセワークが堪能できるノイジーなM-6、Lunar Auroraみたいにはじまったかと思えば急にMoonsorrowのような大作ヴァイキングブラックに変貌してトレモロが天空へ舞い上がるような錯覚を覚える約10分の大曲M-7と、どこをどう切り取ってもノルウェイジャンブラック。
王道の冷たいトレモロギターがこれでもかと味わえるM-2がお気に入り。
突っ走り気味のリヴァーヴがかかったドラムの感じも、非常に◎。
ツタツタするドラムとクリーントーンのギターのパートの美しさから急にノイジーなトレモロが唸りを上げる展開までまさしく垂涎。
ツボを押されすぎて昇天してしまいます。
ここ何年かで、「あ、ブラックメタルだ」って一番感動したアルバムかもしれません。
奇を衒ってないんですよ。はっきり言えば、今作よりエクストリームな作品・バンドはいくらでもあるし、山ほどいます。
ですが、「あ、ブラックメタルだ」ってブラックメタラーの多くが頷けるアルバムって早々ないんです。
退廃的ではなく、雪山のように冷たい。機械的に殺伐としたブルータリティではなく、人の体温が伝わってくるような凶暴性。革新的ではないにしろ、懐古的でもない。
要は、この作品は多くのブラックメタラーがまさに聴いてみたかった「あ、ブラックメタルだ」な非の打ちどころのないアルバムだと私は思います。
(2016年発表)
満:★★★★★★★★★★ (10/10)
薦:★★★★★★★★★★ (10/10)