cruciamentum1st

1. The Conquered Sun (The Dying Light Beyond Morpheus Realms)
2. Necrophagous Communion
3. Tongues of Nightshade
4. Rites to the Abduction of Essence
5. Piety Carved from Flesh
6. Dissolution of Mortal Perception
7. Collapse ★

UKのドゥームデス/ブラッケンドデスメタルバンドによる初フルレングス。
付属のスリーブと禍々しい装丁のブックレットはしっかりした作りで、マットな質感のブックレットは触ってて心地よい。
こういうコレクター心をくすぐるブックレットは大好きです。

彼らの音を端的に示すなら、「黒い」。
おどろおどろしさ、格調高き漆黒の荘厳さ、そして核にある荒々しい突進力。
それらを混ぜ合わせたものがこのCruciamentumという存在。
オールドスクールなデスメタルの魅力が満載された、いわばデスメタルの酸いも甘いも知り尽くしたかのようにも思えるこの音像で初フルとはどういうこと?と思われるかもしれません。
だが、彼らは厳密に言えばまっさらな新人ではなく、Grave MiasmaやDestroyer666、Atavistなどといったバンドのメンバーで構成されています。
特に、Grave Miasmaからの影響は濃く、獰猛に爆走するドラムの上で執拗にリヴァーヴがかかったようなシンセエフェクトやトレモロギターで演出された、ほとんど瘴気のような暗黒性が全体を覆い尽くす音楽性。
紛れもなくドゥームデスの範疇で語られる作品であるが、今作の凄いところはドゥームデスの枠を保持したまま、デスドゥームの荘厳さを獲得しているところにあると思います。
どういうことかと言うと、音はドゥームデスと断言して相違ない。が、プロダクションも良さも手伝ってか、デスドゥームの持つ神秘的で荘厳な陰鬱さを発散していると言えます。
ある意味両ジャンルを繋ぐ作品かもしれません。
荒々しくもガッチリしたブラストを主軸にした暴虐的なドラムはブラッケンドという枕詞を置くにも相応しく、Funebrarumとも似た音楽性で、非常に気に入りました。
ギターはデスメタリックなリフからブラッキンで冷たいトレモロリフ、スラッシーな高速クランチまでも織り交ぜ、さらに禍々しく暗い輝きに満ちたギターソロまで披露している。
低く押し潰したしゃがれた威圧的なグロウルは、Bolt Throwerっぽいなあなんて英国情緒を感じたりもします。

冷え切ったアンビエントを雷鳴のようなリフと怒号で禍々しく降臨する中盤では重苦しいアンビエントも差しこまれるブラッケンドデスM-1、スラッシーな幕開けからどんどん加速して暴虐的なデスパートに突っ込んでいき荘厳なメロディーで威圧的に魅せてくるM-2、リヴァーヴがかけられたビョンビョンフレーズから汚らしく気持ち悪いパターンを織り交ぜた爆走に雪崩れるM-3、陰鬱で邪悪なリフが耳に残るな前半から一気に速度をぶち上げて悪魔召喚のような重圧感で〆るM-4、ノリやすいベースラインとドラムに馴染みやすいリフを織り交ぜて雷鳴が如きドラムと地を這い回るVoに酔うM-5、正しくドゥームデスな序幕を抜けて爆走したかと思えば中盤で奈落の底へ引きずり込むM-6と、色々体力を持って行かれる約44分。
物悲しく陰鬱なフレーズでおっぱじまる最終曲M-7がお気に入り。
ひたすら気が滅入るようなメロディーを爆走パートにも織り交ぜる、デプレッシヴデスとも言えそうな曲で、なのに冷たい質感が異様にかっこいいという。
この曲も闇の底から足を掴まれてグッと引きずり込まれるようなドゥームパートもあって、なおかつその箇所では讃美歌のような荘厳なシンセエフェクトが鳴るという気持ち悪さ。癖になる!

何ともマニア受けしかしなさそうな音かと思えば、意外に明瞭な音質であるのでブラッケンドデスやドゥームデスを聴き慣れてない人でも聴きやすいような気がしなくもない。
でも聴いていると間違いなく瘴気に当てられるので、ちょっと佇まいを正すのは大事ですね。
GraveやGrave Miasma、IncantationやAsphyx、FunebrarumやOnirophagusなどを好きな人はきっと気に入る作品だと思います。

(2015年発表)

満:★★★★★★★★★ (9/10)
薦:★★★★★★★★★ (9/10)