enslaved13th

1. Thurisaz Dreaming
2. Building With Fire
3. One Thousand Years Of Rain
4. Nauthir Bleeding ★
5. In Times
6. Daylight

ノルウェーのプログレッシヴブラック/ヴァイキングメタルバンドによる13作目フルレングス。
いい感じに触り心地の良いデジパック仕様で、アルバムのモチーフがテカテカした凝った仕様で印刷されています。
ブックレットも同じ紋様でシンプルに歌詞だけかと思いきやパラパラ漫画のようにメンバーが何か笑顔だったりします。

さてもう彼らも今さら説明不要なほどベテランなバンドですが、今作は前作からの流れとは一旦距離を置いています。
無論、ここ最近の彼らの音楽性であるサイケデリックロックやプログレッシヴロックへの憧憬を巧くヴァイキング/ブラックと折衷した要素は健在です。
ですが、前作で聴けたような妖しいプログレ感は、デス/ブラック由来の攻撃性への後押しになっている感じ。
今作、かなり攻撃的なEnslavedが舞い戻っており、個人的には大歓迎の出来。
その上、叙情的で哀愁溢れる悲嘆のメロディーは、前作よりもわかりやすい形で提示されていると思います。
要するに、ストレートなのですね。前作が何度も噛み締めて聴くような作品であるならば、今作は初聴での求心力がずば抜けて高い気がします。
凶暴な攻撃性を殺がない形で、うっすらと被さるようなサイケな味付けが非常に心憎い。情緒を感じます。
何処までも凍てついた雪原を割り春の芽が息吹くような温かみすらも、今作に封じ込まれています。
重たいギターが時にサイケで美しいフレーズを、荒々しいブラストに絡ませる妙技は、Enslavedならではのもの。
というより、彼ら以上にこういった音作りをうまくやれるバンドってあまりいないと思います。
今作の肝は、個人的にはベースであると思います。ここぞというところでかなり気持ちの良いフレーズを弾くので非常に心地よいドライヴ感を生み出しています。
どの曲も8分超えの大作なのですが、プログレッシヴな作風よりもこのベースラインの流れ方が心地よすぎて聴き疲れを感じさせません。
Voはブラッキンながなりと色気のあるクリーンの二重構造なのは引き続き同じ。今作はがなり声が多めなのは、個人的に嬉しいところ。
クリーンのコーラスと巧みに切り替わるところは、ツボを押さえてるなあという感じですね。

風の音を切り裂く怒濤のブラック絨毯爆撃からいきなり綺麗なクリーンに雪崩れ込む彼ららしいM-1、光り射すような神々しいメロディーを朗々と歌い上げてから一気に重心を下げて攻撃的なブラックパートへの流れ方が自然すぎるメロウなソロも拝めるキャッチーなM-2、奇妙に乱反射するイントロを経てどこまでも高く昇るようなリフメロディーと叫びまくるVoの心地よさから少し呪術的な終盤のコーラスが癖になるM-3、ジャジーでぐねりまくるベースにリフと神聖な合唱が被さり邪悪なデスパートに繋がる作中最もキャッチーなコーラスを持ち最長のM-5、荒波に揉まれるリフが雄大な大自然を感じさせてグルーヴィーなベースと共にドライヴするM-6と聴き応えたっぷりなアルバムです。
爽やかなインディーロック風の幕開けではじまるM-4がお気に入り。
夏の日差しを思わせる陽性な空気から一気に秋冬の凍てつきへと変貌するのが凄くいいですね。
凄まじい速度のブラストが吹雪のようで、シンフォニックブラックのようなシンセの被さり方も神秘的。
色っぽいクリーンから繋がる官能的なギターソロの美しさは白眉物。

素敵なアルバムだと思います。
ここまで荒々しい音楽性にしてくるとは思っていませんでしたが、聴いていてニヤニヤしてしまいました。
北欧プログレデス/ブラックの中では、一貫した世界観を持ち、なおかつ新しいことも貪欲に挑戦し続ける姿勢には平伏します。
起伏ありなおかるエクストリームな作品が聴きたいなら聴いてみてはいかがでしょうか。

(2015年発表)

満:★★★★★★★★★ (9/10)
薦:★★★★★★★★★ (9/10)