enabler3rd

1. Close My Eyes
2. New Life
3. Neglect
4. I've Got a Bad Feeling About This ★
5. Information Overload
6. Balance of Terror
7. World Sterilization
8. The Exiles
9. Prey
10. Sickened by the Wake
11. Rain Darkness
12. Felony
13. Linear Existence
14. Consequence

US出身のハードコア/ネオクラストバンドのおそらく3枚目。
歌詞カードはありません。デジブックで、メンバーのピースフルな写真があります。

ネオクラストというのはハードコア/クラストパンクを軸にデスメタルやブラックメタル、スラッジやスラッシュを合わせた暗く陰鬱な音楽性であると私は解釈しています。
このEnablerは、そんなネオクラスト勢の中でも私が最もと言ってもいいくらい好きなバンドで、メンバーが安定しないバンドです。
Jeff Lohrberがいればどうとでもなる!というように、完全に固定されているのは彼のみで、メンバーの人数も初期は5人いたり今は3人だったり流動的ではあります。
そんなEnablerですが、音楽性の最も強調される特色は、ネオクラストの中でも極端に速いBPMであるということ。
基本的にはDビートやシンプルなパンクっぽいリズムアプローチを取るバンドが多いジャンルではあるようですが、彼らの主体はスラッシュメタルに通じるようなビート、もしくはブラストビートです。
また、トレモロをかけたギターで陰鬱かつ冷たいリフを超高速で切り刻んだりとブラックメタルやスラッシュメタルからの影響も色濃く、プロダクションもメタリックです。
そういった演奏を、ハードコアの怒号で叩き伏せるような、そういうスタイルを特徴としています。
Convergeに通じ、また、Cursedもルーツにあると言っていいかと思います。
さて今作ですが、前作で聴けたメタリックな音ではなく、1st寄りのハードコアで生々しい音に若干戻しています。
前作よりもスラッジ/ドゥームっぽい重苦しいパートも多く、拍をずらしたような不協和音なリズムも取り入れたりと、問答無用にストレートでキャッチーな傑作であった前作と差別化を図っているようでもあります。
この辺り、現在ツアーを回っているEye Hate Godからのフィードバックかもしれません。
かといってキャッチーではないかというとそういうわけでもなく、相変わらずハードコア由来のわかりやすいリフ&メロディーも飛び出してくるので、ファンは安心して大丈夫です。
ただ、ドラムは前任者の方が個人的には好きです。今のドラムも悪くない、結構いいドラムを叩くのですが、前作のやりすぎなくらいメタリックでブルータルなドラムが凄い好きだったので。

乱打されるドラムからノリ良くかっこいいギターメロディーからモッシュパートに雪崩れ込むM-1、一転ゆったりしたブラッキンなリフをドコドコ太鼓で合わせるM-2、ひび割れたようなリフから一気に高速の爆走にもつれ込み怒号をまき散らすM-3、グラインディングで生々しいライヴ感に溢れたM-5、キャッチーなリフで幕を上げたかと思えば重厚でスラッシーな展開を見せ紅一点アマンダのコーラスも不気味に響く重戦車のようなM-6、超高速とも言えるギターの刻みがやたら気持ちいいM-7、再びグラインディングなパートにもつれ込む野生に満ちたM-8、作中最高速のBPMで一気に1分駆け抜けるハードコアM-9、重厚なリズムと絞り上げるようなVoで病的で鬱なメロディーに乗るM-10、ブラッキンなリフから一瞬でそれを投げ捨ててハードコア由来のリフに切り替えてスラッシーに走り倒すM-11、ゆっくりとのた打ち回るような陰鬱なリフでドゥーミーに沈み込む空気をそのままに速度を上げるM-12、一糸乱れぬ高速の爆走が心地よいM-13、最後までぶれない爆走で楽しませてくれる幕引きに相応しい終局的なメロディーが若干の切なさを揺り動かすM-14と安定の高品質。
儚げなギターメロディーから「Go」の掛け声でぶっ飛ばしてくれるM-4がお気に入り。
吐き捨てスクリームもかっこいいですね。
1分過ぎた辺りからの不穏さを煽るようなギターもシンプルで凄くいい。
ここらから曲のテンポを変えてずんずん迫ってアウトロにもつれ込んでいく構成も心憎い。

いいアルバムだと思います。
ですが、個人的には2枚目の方が好みかな。
方向性はぶれていないですし、この生々しい迫力もなかなか乙なもの。
前作の「Speechless」のような絶対的なアンセムがないので、そういうキャッチーさが少し恋しくはあります。
ブラックメタル要素を前面に出したクラストよりもよりハードコアに回帰した作品だと言えるでしょう。

(2014年発表)

満:★★★★★★★★★ (9/10)
薦:★★★★★★★★ (8/10)