1. Baikal
2. Discordia
3. Feverish
4. Aegar
5. Nocebo
6. Nyarlathotep ★
7. Ceremonial Swamp
スペインのドゥームデスメタルバンドによる初フルレングス。
見覚えあるアートワークだと思ったら、昨年のGraveなどのジャケット手がけたCostin Chioreanuさんなんですね。
ドロドロ感がいい感じ。しかし最近この人のデザインよく見る。
地獄の底から駆け上がってくるこの感じ。
すごいアルバムだな、と。
聴いた印象としては、IncantationやGraveらに共通する、90's前半のデスメタルにドゥームメタルを掛け合わせたものと思えば早いです。
凄まじい音圧と重圧を引きずったまま、突如ブラスト交じりに暴走する感覚。
彼らには、ハードコア的な部分よりも、そういったメタリックな要素が色濃く、オカルティックで宗教的なメロディーラインから、耽美要素を剥ぎ取ったMy Dying Brideといった趣きもあります。
要は、暴虐的に突き進む部分の中に、ギラリとしたメロディーがあるわけですね。
かといってメロディックに感じさせないのは、彼らの確固たる美学に基づいたものだと思います。
何より、ギターが物凄く、基本的にダウンチューニングの極悪なリフなわけですが、時にスパニッシュ音楽を由来とするフレーズをさりげなく織り交ぜて、一種異様な空気を作り上げたり、残虐にのた打ち回ってみたりとやりたい放題。
しかしそれが異常にかっこよいわけですよ。
さらに、ブラスティング!な部分では、パワーメタルのような勇壮さを曲に与える役割を担っています。
彼らのようなドゥームデスでも、そういった側面を隠さないのは結構珍しいかもしれません。
いやまあ、勇壮とは言っても地獄の底で亡者が蠢いているような感じなわけですけども。
ドラムも多彩で、ズドーンズドーンと重くゆっくり叩きつけるものとブラストビートを急速に切り替えたり、その中にスタスタと軽快なパターンを織り交ぜたり、なかなか楽しませてくれます。
Voは重低音のグロウルのわめきをミックスさせており、なかなかの迫力。時にシャーマニックで不気味なクリーンのコーラスを入れたりするのが異様に怖いです。
毛穴が開くようなドラムとリフの重圧感を引きずり倒す濃密なドゥームデスを切り裂くようにメロウなソロが飛び出すM-1、カラスの鳴き声に導かれて沼地に引きずり込むリフに被さる悪魔のようなグロウルがかっこいいM-2、重たくゆったりと弾かれるギターとは裏腹にかなり頻繁にテンポを変えるドラムが癖になるというかVoパートに入るとブラストに切り替わる構造が面白いM-3、耳休め的なフラメンコギターが不気味な哀愁を作り出すインストM-4、極悪に重たくも耳に残るフレーズを弾くギターに突如暴走しだすドラムからの怒号のように轟くVoの一体感が何故かパワーメタルに通じる高揚感を持つM-5、絶望感を与えるような音圧の中を潜り抜けるようなブラストビートとそれを制御するVoの絡み合いが壮絶なM-7と、曲数は少ないながらも約50分とボリューム満点の一枚。
何よりエピック!なM-6に悶絶。
この曲、すごいんですよ。出だしこそドゥームデスの王道をいくIncantation愛に満ちたものだけど、それがどんどん崩壊していって、挙句の果てに不気味極まりない宗教的なコーラスが出てくる始末。
ここが異様にかっこよすぎる上、そこから怒涛のブラスティング!
メロディアスな幕切れも余韻を残してくれて、いやすごいもん聞かせてもらいましたわ。
1枚目にしてこの完成度ってすごいと思います。
ベテランバンドにも全く引けを取らない音圧や展開など、金太郎飴にならない絶妙なフックの入れ方など、かなり絶妙な展開。
聴けば聴くほどじわじわ脳髄に浸透してくる感覚も素敵。
曲名からもわかるようにクトゥルフ的な世界観を持つバンドであることは確かで、バンド名もそれにちなんだものかもしれません。
凄まじいまでの音圧にひれ伏したいなら是非お薦めしたい!
(2013年発表)
満:★★★★★★★★★☆ (9.5)
薦:★★★★★★★★★☆ (9.5)