むじかほ~音楽雑記彼是-chthonic7th


1. Arising Armament (Intro)
2. Supreme Pain For The Tyrant
3. Sail Into The Sunset's Fire
4. Next Republic
5. Rage Of My Sword
6. Between Silence And Death
7. Resurrection Pyre
8. Set Fire To The Island
9. Defenders Of Bú-Tik Palace ★
10. Undying Rearmament (Outro)
11. Supreme Pain For The Tyrant (Taiwanese Version) [Bonus]
12. Sail Into The Sunset's Fire (Taiwanese Version) [Bonus]

13. Defenders Of Bú-Tik Palace (All English Version) [Bonus]


台湾のシンフォニックブラックメタルバンドによる7作目フルレングス。

銃夢みたいなジャケットの姉ちゃんがかっこいいと思います。


ここ日本でも認知度を上げていて、彼らChthonic自体のことを知らなくてもももいろクローバーZのメタルカバーアルバムでVoを努めたり、フジロックに出演したと言えば「ああ」となる人もいることでしょう。

前作はCradle of Filth的ブラックメタルと東洋のオリエンタルな世界観を合わせこみ融合させることに成功した傑作でした。

今作はと言えば、より直線的で攻撃的なデスメタルっぽさを突き詰めたような作品に仕上がっています。

その部分に関して言えば、前作と比較することもおこがましいほど別物であり、格段にブルータルな作品ではあります。

が、個人的には前作を浴びるほど聴いていたせいか、少々物足りなくはありました。

全体的な感触は非常にタイトな音作りを意識しているのだな、と。

加えて、獰猛にギターが容赦なくザクザクしているのも特徴かも。デスラッシュっぽいですよね。

それに加えて雄大なオリエンタルメロディーを合わせると、もうChthonic以外の何物にもならなくなるわけで。

ただし、前作よりもストレートにメタリックな部分を押し出している影響か、そういったメロディックでエキゾチックな部分は一歩引いている印象を受けました。

無論、台湾民謡を組み込んだ歌メロや展開はそれだけで魅力的なのですけれども。

また、各誌インタビューなどから解釈すると、今作は前作というよりは前々作「Mirror of Retribution」の続編となるようで、主役となる登場人物もチン・グンです。

Voは表現力を増して、さらに高みに上っている感じがしますね。


艶やかな笛の音と銅鑼などを合わせて中華なインストM-1、オリエントのメロディーから雪崩れ込む彼ららしいシンフォニックエクストリームメタルM-2、実在した海賊をテーマにしたからヴァイキングメタルにしたというもうAmon Amarthみたいな勇猛なリフが聴けるM-3、台湾民謡からドラマティックなリフへと繋ぎ絶叫のデスラッシュへもつれ込むM-4、こちらも台湾の民謡をイントロに据えた後は暴虐を振り撒くシンフォニックメタルM-5、歯切れ良いVoとメロデスのようなメロディアスなリフなのにせわしなく攻め立ててきて徐々に壮大に炸裂するM-6、前曲の壮大さに引きずられようにその空気を残したままハイピッチにわめき立てるM-7、ニ胡の音色に導かれて前へ前へ突き進んでいくブルータルなシンフォニックブラックM-8、一転静寂に〆ていくアンビエント→民謡なインストM-10で本編を終え、M-11~13は収録曲のバージョン違い。

ど派手なリフで勇猛かつ壮大に展開していくM-9がお気に入り。

この曲が実質的最後の曲で、アルバム全体を総括する素晴らしい曲です。

彼ららしい勇壮な歌メロでシンガロングさえ呼び込みそうな作中最大のアンセム。

中盤の女性コーラス付近は盛り上がりそうだなあ。


前作よりも攻撃性を増しているため、よりファン層を拡大できそうだな、と思います。

個人的にはやっぱり前作の方が好きなんだけども。

これは作品の優劣ではなくて、好悪の問題かな、と。

少なくとも彼らの音楽性にブレは一切ないし聴きどころもたくさんあるので、今作も素晴らしい作品でありました。


(2013年発表)


満:★★★★★★★★☆ (8.5/10)

薦:★★★★★★★★★ (9/10)